<トヨタ>省ネオジム耐熱磁石を開発、磁石用素材の調達を安定化・低コスト化

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トヨタは2018年2月、将来的な電動車普及を見据えて、レアアースのネオジム(Nd)の使用量を削減したモーター用磁石である省ネオジム耐熱磁石を開発した。

トヨタは2030年までにHEVやPHEVをはじめとした電動車の世界販売台数を550万台以上とし、さらに普及拡大を図る方針であるが、駆動モーターの生産拡大を進める上で、モーターに使用する磁石のコスト削減や安定調達が課題となっている。トヨタは、これに対応するため、安定調達が難しく高価な素材の使用量を削減するモーター磁石の開発を進めている。

トヨタはPriusを4代目に更新した際に、モーター磁石内のレアアースで高価なテルビウム(Tb)やディスプロシウム(Dy)の使用量削減を実施した。さらに将来モデルで使用するモーター向けの磁石開発として、TbやDyの使用量をこれまで以上に減らし、これと並行してネオジム(Nd)の使用量も減らす開発を進めている。

トヨタはNdの使用量削減を目指し、代替素材としてレアアース中で比較的安価であるランタン(La)・セリウム(Ce)の使用を想定している。素材代替による磁力の低下などを抑制するため、磁石の粒(粒子)から見直しを図った。具体的には、磁石の粒子を従来比1/10以下に微細化して磁石の保磁力を高めることで、代替素材でも十分な磁力を確保した。そのほか、粒子の構造を二層構造に変更した。

従来型の磁石粒子では、均等にNdが存在し必要以上にNdを使用していたが、二層構造のうち保磁力の確保に関わる表面部分のNd濃度を高くする一方で、保磁力への影響が少ない内部の濃度を薄くすることで保磁力を確保しながら効率的にNdの使用量を減らした。またトヨタは、Nd濃度が薄い内部に配合するLaとCeの配合比を研究・評価。La:Ceの比率を1:3とすることで高温下でも従来のNd磁石と同等の耐熱性と磁力を確保した。

トヨタはモーター向け省ネオジム耐熱磁石を2020年以降に実用化することを目指し開発を推進。EPS(電動パワーステアリング)用アシストモーターでの採用から開始し、2028年までに駆動モーターでの実用化を目指している。トヨタは、省ネオジム耐熱磁石の開発を通じてモーター磁石のコスト減や安定調達を実現することで、電動車の価格低減につなげることで電動車普及を後押しする。

電動車モーターの主な開発動向

電動車開発背景

新興国を含むグローバルでの自動車の燃費規制や排ガス規制の強化に対応し、HEVやPHEV、EV、FCEVなどの電動車の市場投入台数の増加やラインアップ拡充が必要となることに対応。

ー 電動車専用モデルの拡販とともに、電動車のラインアップの拡充が求められる。コストが厳しい小型車へのHEVシステムの搭載が進む見通しであるほか、台数増加によるモーターやバッテリーの安定調達が必要となる。

モーターの開発動向

モーター効率の向上

ー 航続距離の延長や出力確保に向け、モーターの巻線による占積率の向上や、電磁鋼板等での鉄損の低減などが進んでいる。

新興国を含むグローバルでの自動車の燃費規制や排ガス規制の強化に対応し、HEVやPHEV、EV、FCEVなどの電動車の市場投入台数の増加やラインアップ拡充が必要となることに対応。

ー 電動車専用モデルの拡販とともに、電動車のラインアップの拡充が求められる。コストが厳しい小型車へのHEVシステムの搭載が進む見通しであるほか、台数増加によるモーターやバッテリーの安定調達が必要となる。

モーターコストの削減

ー 電動車の普及拡大に向け、モーターやバッテリーの搭載によるコスト増加を抑制することが求められる。

ー モーターのコア技術である磁石に使用する

トヨタ、ネオジム使用を削減した新モーター用磁石を開発

開発概要と背景

トヨタは2018年2月、モーター磁石のネオジム(Nd)使用量を最大50%削減する省ネオジム耐熱磁石を開発したと発表。

ー 使用用途として、電動車の駆動モーターやEPS用のアシストモーター、ロボットのサーボモーターまで幅広く使用することを想定する。

ー トヨタの環境戦略の下、2025年までに全車種に電動グレードを設定し(2030年電動車販売550万台以上を目標とする)、中長期的にHEVなどの電動車の生産・販売拡大を見込む中、モーターの安定調達とコスト削減に向け、レアアースやレアメタルの使用量が少ないモーター用磁石の開発を推進。

ー レアメタルで高価なテルビウム(Tb)やディスプロシウム(Dy)の使用量削減だけでなく、比較的産出が多いNdについても、中長期的に電動車の普及が進行する上で不足する可能性が有ることを懸念し、トヨタはNdの使用量が少ないモーター用磁石を開発。

トヨタのモーター開発

トヨタは、HEVのモーター用磁石の開発において高価で調達が難しいTb(kg当り900ドル)とDy(同400ドル)の使用量削減に取り組んでおり、現行のPrius(4代目)Priusのモーターについても、両素材の使用量を削減し、コストを削減した。

トヨタは将来的な電動車の普及を見据えて、更なるモーターコスト削減と安定調達に向けて、TbとDyの使用量のさらなる削減を進めながら、レアアースの大部分であるNdの削減を図る。

ー Nd(同100ドル)の置き換えとして、レアアースの中で比較的安価なランタン(La)・セリウム(Ce)(同5~7ドル)の使用を想定。材料を代替した場合でも従来磁石の性能が発揮できるように、磁石における組織や素材配合の最適化を進めている。

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採用技術と課題

トヨタはモーター磁石内のネオジム(Nd)をランタン(La)・セリウム(Ce)に置き換えることを想定した上で、素材代替による磁石の耐熱性の悪化と磁力の低下を抑制する技術を開発。

▽磁石粒の微細化

磁石を構成する粒(粒子)の大きさを、従来比で約1/10以下に微細化し、保磁力を高める。

ー トヨタの発表資料では、粒子の径を従来の約5μmから約0.25μmに縮小。

ー 磁石粒子の微細化を通じて、粒子間での仕切り面積を10倍以上に拡大することで、各粒子を保護し、高温下でも磁力を確保できるようになった。

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▽粒子構造の改良

トヨタは、Ndの効率的な使用量削減を目指し、粒子の構造を変更した。

ー 粒子の構造を表面と内部の2層に分けた構造を採用。従来の磁石の粒子では、粒子上にほぼ均等にNdが存在しており、磁力保持で必要以上にNdを使用していたことから、粒子の内部と表面でNdの濃度を変更。

ー 保磁力を確保するために必要な粒子表面ではNd濃度を高くする一方で、内部の濃度を薄くすることで、効率的にNdの使用量を削減する。

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▽素材配合の改良

トヨタは、La・Ceへの代替による磁石特性の低下を抑制するため、二層構造の内部におけるLaとCeの配合比を研究。

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ー 様々な配合比を評価した結果、La:Ceを1:3の配合比にすることで、耐熱性や保磁力面での特性悪化を抑制することが可能となった。

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