Honeywell ディーゼルエンジン向けで高いシェア、ガソリンエンジン向け可変容量ターボも先行
▽Honeywellのターボチャージャー事業
Honeywellは特にディーゼルエンジン向けのターボを得意とし、ディーゼルエンジン比率の高い欧州で大きなシェアを持つ。
・Honeywellは、2018年末にターボ事業をスピンオフする計画。
― ターボ事業だけで売上高約30億ドル、約6,500人の従業員となる見込み。
― パワートレインの電動化により、今後はエンジン関連部品の売上高が伸び悩むと予測し、収益性の低い事業を切り離す。
▽Honeywellのターボチャージャー市場予測
2021年までにターボ搭載車(商用車含む)の販売台数は年間5,200万台に増加する(2016年は3,800万台)。
― 2021年の搭載率は48%に増加(2016年は39%)。
― 世界の自動車販売が年率2%で増加するなかで、ターボ搭載車は年率6%で増加する。
・ターボの世界市場規模は2021年に120億ドルに達する。
・ハイブリッド車(HEV/PHEV/MHEV)は2016年の300万台から2016年に1,600万台に増加。
― そのうちの46%がMHEV、40%がHEV、14%がBEVかPHEV。MHEVのうち70%がターボを搭載。
・地域別のターボ搭載動向予測は次のとおり。
<北米>
2021年までにターボ搭載小型自動車(小型商用車含む)の販売台数は700万台以上になり、搭載率は2016年比11ポイント増の33%に拡大。エンジンのダウンサイズ化が進展すると予測。
現在の北米市場の平均的なエンジンサイズは3.0ℓ自然吸気6気筒であるが、ターボ搭載小型エンジンへのシフトがさらに進むとみる。4気筒エンジン向けに小型高効率なツインスクロール式の供給が増える見通し。
<欧州>
2016年の小型自動車のターボ搭載率は74%で、今後も高い搭載率が継続。欧州のターボ搭載率が高い理由はディーゼルエンジン車の販売台数が多いことにあるが、今後はガソリンエンジン車でのターボ装着が進み、2021年にはガソリンエンジン車のターボ搭載率は2016年比9ポイント増の52%に拡大する。
2021年に強化される95g/km CO₂排出規制に向け、各自動車メーカーは15~30g/kmのギャップを埋める必要があり、適正サイズのエンジンとターボの組み合わせが引き続き有効な解決策となる。
<中国>
2021年までにターボ搭載小型自動車(小型商用車含む)の販売台数は1,600万台に増加する(2016年は1,060万台)。規制強化を背景にガソリンターボと電動化ソリューションが増える。Honeywellは第三世代のガソリンエンジン向けターボを特に3気筒市場で積極的に販売する。
ガソリンエンジンにおいては、2020年までに、機械式ターボと電動過給器を組み合わせたソリューションが増えると予測。
▽可変容量ターボ
Honeywellは、乗用車向けの可変容量ターボ(VNT)を1989年にDodgeに供給。1995年にはVWグループの1.9ℓディーゼルエンジンに供給。2017年までに5,000万台以上に供給。
・現行のVNTは2004年に投入された第3世代の可変容量技術をベースとするものである。
― ベアリングハウジングにマウントしたガイドベーンの形状を変え、カートリッジやタービンホイールも変更。
― 第2世代と比較し約90%の負圧で130%の過給効率を得た。
・2つの可変容量ターボを組み合わせたVNT-VNTも開発し、2015年のBMW2.0ℓ直4エンジンから供給開始。
・ガソリンエンジン向けの可変流量ターボ開発でも先行。2017年量産開始のVWグループ1.5ℓ直3ガソリンエンジン(EA211 TSI evo)に、プレミアムスポーツカーなどに限定されない量産エンジンとしては初となる可変流量ターボを供給した。
―ディーゼルエンジンの排気温度は通常830~860℃であるが、ガソリンエンジンは880~1050℃になる。Honeywellはレースエンジン向け開発で最高1050℃の排気温度に対応した実績がある。EA211 evoはガソリンエンジンであるが、ミラーサイクルにより排気温度を880℃に抑えることで、VNTの量産化を実現した。今後は950℃への対応を目指し開発を継続する。
―EA221 TSI evoは、VNTの採用により、エンジンの低回転域で目標トルクへの到達を先代エンジンより35%高速化。ウェイストゲートバルブも不要となり、高負荷時でも望ましい燃焼質量割合50% (MFB50)を確保しやすくなった。
▽ラジアル軸流タービン
Honeywellは、軸流タービンとラジアルタービンを組み合わせたデュアルブーストと呼ぶ技術を2012年に発表。
―デュアルブーストの長所は二つある。一つは従来のターボと比較し、慣性モーメント(イナーシャ)を半分以下にでき初期加速時にターボラグを解消すること。もう一つはブレードの周速比(BRS)を向上させ走行全体における燃費を改善することである。
―同様の技術をContinentalが開発し、RAAXターボとしてAudiやFordに供給している(2ページ後に詳述)。
▽第3世代ガソリンエンジン向けターボ
Honeywellは2016年に、ガソリンエンジン向けの第3世代ターボを発表した。
―低回転域でのトルクを高め、過渡応答性を向上した。
―ウェイストゲートバルブのアームをモノブロック化。1ピース構造を採用することで従来の3ピース構造と比較し、ノイズを5~10db低減し、燃費を最大0.5%改善した。
―ウェイストゲートバルブは電動式。
▽電動化対応
E-Turboと称する電動コンプレッサーを開発している。
・燃料電池向けの2ステージ過給器を開発し提案している。
―ホンダのClarity Fuel Cellに採用されている。
<FOURIN世界自動車技術調査月報(FOURIN社 転載許諾済み)>