BorgWarner マルチステージターボに強み、ガソリンエンジン向け可変容量ターボの低価格化へ
▽BorgWarnerのターボ事業の概要
BorgWarnerのターボ事業の2016年の売上高はグループ全体の約28%にあたる25.4億ドルであった。
-主な顧客(乗用車メーカー)は、BMW、Daimler、FCA、Ford、GM、長城汽車(Great Wall)、現代自、Renault、VW、Volvo Car、JLRである。
・BorgWarnerは、内燃機関向けのターボ開発に注力しつつ、ハイブリッドなどの電動化ソリューションにも対応するために、2015年にREMY International (旧Delco Remy)を買収した。その上で、ハイブリッド車(HEV/PHEV)向けでもターボ販売が引き続き増加すると予測。
-2023年に2,100万台がHEV/PHEVとなり、そのうち45%がターボ搭載と予測。
-BorgWarnerのターボ市場でのシェアは30%と予測。
-ターボ価格は一台当たり平均250ドルと予測。
▼これらの予測に基づく推定では、2023年のBorgWarnerのHEV/PHEV向けターボ売上高は7億ドルになるとみている。
・電動ターボも開発・生産しており、これらも加えた過給システム全体の効率向上を目指している。
・従来のターボ分野では、ガソリンエンジン向け可変容量ターボの普及価格帯モデルへの量産供給を目指す。また、ボールベアリング採用ターボの量産開始も予定している。
▽マルチステージターボR2S/R3S
BorgWarnerは、2基のターボを組み合わせた2ステージターボR2S (=Regulated 2 Stage)を2004年に量産化し、多くの自動車メーカーに供給している。
-新しいところでは、Daimlerが2017年にマイナーチェンジしたS-Classの2.9ℓ直6ディーゼルエンジン(OM656)に供給。
-3基のターボを組み合わせたR3SをBMWの3.0ℓ直6ディーゼルエンジンなどに供給。
・2017年11月、BorgWarnerは4基(高圧2基と低圧2基)のターボを備えたR2Sを発表した。
-低圧側を2基のターボに置き換えたことにより、システム重量を増やすことなくイナーシャを低減して応答性を高めた。
-また2基の高圧ターボは、エンジン低回転域では片方のみが作動し、過給圧を迅速に高めてターボラグの少ない加速を実現する。高回転時には両方の高圧ターボが作動し高出力を得る仕組みとなっている。
-BMWの3.0ℓ直6ディーゼルエンジンに供給。4基のターボ搭載により出力を向上しつつ、燃費を最大4%改善した。
▽小型エンジン向けターボ
高出力エンジン向けターボを得意としてきたBorgWarnerであるが、近年は小型エンジン向けにも注力。
-ホンダが2017年に発表した新型1.0ℓ直3ガソリンエンジンやBYDの1.5ℓ/2.0ℓ直4ガソリンエンジン、VWの1.4ℓ直3ディーゼルエンジン(EA288)に供給。
▽可変容量ターボ
BorgWarnerは2002年にディーゼルエンジン向けの可変容量ターボの量産を開始し、これまでに多くの顧客を獲得している。
・一方でガソリンエンジン向けには、Porsche 911の2007年モデルの3.6ℓ水平対向6気筒ガソリンエンジン以降、高級スポーツモデルを中心に供給してきた実績があるが、コストの問題などから、普及価格帯モデルでの採用例はない。
▼2017年3月、BorgWarnerは環境規制の強化を背景に、ガソリンエンジン向けの可変容量ターボの需要が拡大するとの見通しを示し、ガソリンエンジンの高温に耐える素材の開発を進め、構造設計を見直し、需要に対応する方針を示した。
数年内に低コストのガソリンエンジン向け可変容量ターボの量産化を目指す。
-先行するHoneywell同様に、燃焼温度が比較的低いミラーサイクルとの組み合わせを想定している。
▽特許取得のS形ガイドベーン
BorgWarnerの可変容量(VTG)ターボの排気流量制御にはS形のガイドベーンが用いられている。
-BorgWarnerは、従来直線であったガイドベーンの形状をS字に変更し、特許を取得。2010年に発表した第4世代VTG以降、現在まで一貫してS形ガイドベーンを採用している。
-電動アクチュエーターによりS形ガイドベーンを調節することで、排気の流入角と速度を制御し、ターボの熱効率と応答性をさらに高める。
▽ボールベアリング採用ターボの開発
またBorgWarnerは、メタル(滑り軸受)の代わりにボールベアリングをタービンシャフトに採用し、量産化する方針である。
-過給効率を4%向上し、燃費を最大2%改善する。
-ボールは高機能素材にシリコン窒化膜(シリコンナイトライド)をコーティングしたもの。
-NVH(騒音・振動・ハーシュネス)に配慮し、ボールは角形カートリッジに収め、滑り軸受と同等のNVH性能を得た。
-同一サイズの滑り軸受と比較し、フリクションロスを低減し、特に低回転域での効率改善に寄与する。潤滑油が低温状態にあるときで50%、高温状態で40%、フリクションロスを改善。
<FOURIN世界自動車技術調査月報(FOURIN社 転載許諾済み)>