<車載音声アシスタント>GoogleやAmazon、Alibabaなどの米国・中国系IT企業が開発で先行

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コネクティビティや先進運転支援システム(ADAS)/自動運転の技術が進化し、これに合わせてドライバーの安全性・快適性を向上させるために、車載インフォテイメントシステムの一部に人工知能(AI)を搭載する音声アシスタントを組み込む自動車メーカーが増えてきた。

音声アシスタントの基本的な機能は、ハンズフリーでナビゲーションの設定や通話、メッセージの送受信、音楽再生などを可能にするものである。

テレマティクスとインフォテイメントをより快適・簡易に操作できるようにする。ドライバーがHotwordと呼ばれるシステムの起動キーワードを発声してコマンドを伝えることでこれらの動作を実行する。コネクテッド機能との組み合わせで、ニュースや天気、交通情報の取得、レストラン予約やスケジュール管理も可能になる。

さらに大手IT企業が手がけるスマートホーム技術と組み合わせることで、車内からスマート家電、家から車内設定の遠隔操作が行えるようにもなる。

こうした車載音声アシスタントの開発で先行しているのは、車載に限らない家電製品としてスマートフォンやスマートスピーカーを展開してきたGoogleやAmazonなどのIT企業である。そのため、車載AIとしての機能のみならず、家電と連携するスマートホーム機能の展開を当初から想定している。

音声認識技術を得意とするNuance(米国)は、Hotwordやコマンド無しで会話から指示を読み取る音声アシスタントを開発している。また、M-Benzや現代自など、独自に音声アシスタントを組み込んだシステムの開発を行っている自動車メーカーも登場している。

車載音声アシスタント開発動向

▽車載音声アシスタント

ハンズフリーの利便性に着目し、運転中の脇見の軽減やドライビングエクスペリエンス向上のため、音声アシスタントを採用した車載システムの開発・採用が進んでいる。最近では、こうした音声アシスタントシステムに人工知能(AI)を採用。車内外で行える機能を拡張し、操作性の向上を図っている。

ー スマートフォンやスマートデバイスの普及拡大で急速に注目を集めた音声アシスタントに代表されるGoogle AssistantやAmazon Alexaなどの採用が2016年頃から自動車業界でも広まっている。

音声アシスタントは基本、ナビゲーション、音楽再生、SMS送信、ハンズフリー通話などのインフォテイメント機能や、緊急連絡サービスeCallなどのテレマティクスの機能を備えている。これにIoTやV2Xを介したコネクテッド機能を追加することで、車内外からのリモート操作、モニタリング、レストランや施設などの事前予約・注文、リアルタイムの交通情報取得なども可能となる。

ー こうした設定をデバイス操作無し(ハンズフリー)で行うため、音声アシスタントにはHotword(またはウェイクワード)と呼ばれるシステムを起動させるキーワードが設定されている。

ー ドライバーまたは乗員がHotwordを発声した後、簡単な指示を発する。音声による指示がAIにより認識され、指示通りの操作を実行する。Hotword以外に、ステアリングホイールの多機能ボタン部などに音声認識ボタンが装備されている場合は、そのボタンを押して発話し操作指示を行うこともできる。

▽自動車メーカーの音声アシスタント開発

2018年1月、M-BenzはM-Benz専用の音声アシスタント付きインフォテイメントシステムMercedes-Benz User Experience(MBUX)をCES 2018に出展。Nuance(米国)の音声認識とNVIDIA(米国)のAI技術を搭載。コンパクトハッチバックのA Classから搭載開始予定。

ー 音楽自動再生、ルート案内、交通・駐車場状況やガソリン価格情報などの提示、駐車時に衝撃を受けた際のメッセージ送信機能などが利用できる。オフライン時はNuanceのソフトウェアで対応。

現代自は2017年12月、SoundHound(韓国)との提携を発表。SoundHoundが手がける対話型音声アシスタントHoundifyをベースに、独自の音声アシスタントシステムの開発に乗り出した。

ー 一度の発話で異なるコマンドを理解・実行するマルチコマンド機能搭載。音楽再生、ハンズフリー通話、住所検索、スケジュール管理、車内設定調節のほか、出発時間提案なども行う。

ー 2019年より、現代自/起亜モデルに搭載予定。

▽スマートフォンと車載器の連携

インフォテイメントには、所有するスマートフォンと車載機器を繋ぐ機能を備えたものがある。音声アシスタント機能を含む主なスマートフォン対応システムに、Googleが手がけるAndroid AutoとAppleが提供するApple CarPlayがある(2018年5月時点)。

ー 2018年1月、GoogleはAndroid Auto搭載の音声アシスタントにGoogle Assistantを標準設定したと発表。Android Auto搭載モデルでGoogle Assistantが利用できる。

<スマートフォン対応システム採用状況(2018年5月時点)>

OEM 

AA

ACP

OEM 

AA

ACP


VWグループ



*

トヨタ
Audi Lexus
M-Benz 日産
BMW/Mini ホンダ
Volvo Car マツダ


GM スバル
Ford 三菱自
FCA

現代自/起亜

注)AA=Android Auto、ACP=Apple CarPlay。*日系は北米発表。表は採用予定含む。

 

<主要ブランド、主な音声アシスタント採用状況(2018年5月時点)> 

OEM

Amazon

Google

Apple

独自音声

アシスタント

システム

Alexa

Assistant

Siri (CarPlay)

欧州

VW

Audi

Personal Intelligent Assistant

M-Benz

○/◎ MBUX

BMW

Mini

Volvo Car

○/◎

SEAT

Skoda

米系

GM

Ford

FCA

トヨタ(北米)

Lexus
(北米)

日系

日産

ホンダ

マツダ

スバル

三菱自(北米)

○(Echo) ○(Home)/◎

現代自
/起亜

○(Echo) ○(Home)/◎ Houndify (SoundHound製)

 

 

       

OEM

Microsoft

Nuance

Alibaba

独自音声

アシスタント

システム

Cortana

Dragon Drive

Tmall Genie

欧州

VW

Audi

○(中国) Personal Intelligent Assistant

M-Benz

○(中国) MBUX

BMW

Mini

Volvo Car

○(中国)

SEAT

Skoda

米系

GM

Ford

FCA

トヨタ(北米)

Concpet-愛-i

Lexus
(北米)

日系

日産

ホンダ

マツダ

スバル

三菱自(北米)

現代自
/起亜

Houndify (SoundHound製)

*日系は北米発表のため、主に北米モデルが対象。

主要サプライヤー、車載音声アシスタント開発

▽Amazon

オンライン通販(eコマース)会社大手Amazon(米国)は、2014年11月にAmazon AlexaとAlexa搭載のスマートホームに対応したスマートスピーカーAmazon Echoを発表。

ー 2017年1月、FordはAlexaを搭載したFocus Electric、Fusion Energi、C-Max Energiを発表した。2017年5月より、Amazon Echo(または小型スマートスピーカーDot)を利用し、家の中からリモートで車の施錠・解錠、エンジン始動、ステータス確認が行える。FordのSYNC 3システムにもAlexaが統合され、車内から天気・ニュースの確認、リアルタイムナビゲーション設定、Amazonでのショッピング、スマートホームに対応した家電の操作が可能。

ー 欧州初搭載モデルは、SEAT Ateca/Leon(2017年後半~)

ー その他、VWDaimlerBMW/MiniŠkoda、トヨタ/Lexus、日産、三菱自、現代/起亜などがAlexaの採用を決定した。

▽Google

Google(米国)は2016年5月、自社開発のGoogle Assistantを発表。当初はスマートホーム向け音声対応スピーカーGoogle Homeの一環として開発。2017年4月以降、車やスマート家電をサポートするよう拡張されている。

ー Google Assistantは、Android Auto(2014年6月発表)に搭載されているインフォテイメント機能のほかに、ナビ設定、スケジュール確認、リマインド設定などの管理から、店の検索や予約・注文、窓の開閉、バックモニターの起動などの車内設定に至るまで音声で操作ができる。また、空調、サンルーフ、窓などはAndroid端末での操作も可能。

ー 2017年5月、AudiとVolvo CarはGoogleとの提携を発表。Android Autoを標準搭載することで、スマートフォン無しでフルにAndroid AutoとGoogle Assistant機能を活用できる。

▽Microsoft

ソフトウェア開発会社大手Microsoft(米国)の音声アシスタントは2014年4月初版リリースのCortana。当初はWindows用に開発された。2017年8月には、オンライン通販やエンターテイメントを得意とするAlexaと提携し、機能を拡張することを発表。

ー Cortanaは、スケジュール管理・提案、リマインダー設定、天気や道路状況などの検索、音楽認識、ナビ設定などを対話形式で行える。ビジネス用に、音声通話Skype、プロダクティビティソフトウェアOffice 365、クラウドサービスAzureなどと紐付けられる。

ー 2017年1月、日産がMicrosoftと提携し、Cortanaを一部モデルの車載インフォテイメントシステムに組み込むことを発表した。

▽IBM

2018年3月、IBM(米国)は自社開発のWatson Assistantを発表。自動車・ホテル向け音声シアスタントソリューションとして構築した。

ー リスケジューリングも含むスケジュール管理、ナビゲーションの設定のほか、レストラン検索・予約、車両ステータスモニタリング・メンテナンス通知、サービスの予約なども対話を通して行う。

ー Watson Assistantは既存のチャットボットWatson Conversationを進化させ、機能を拡張させたもの。Hotwordはカスタマイズ可能。

ー Harmanが開発する車載アシスタントにも採用されている。

▽Alibaba

中国IT大手Alibabaは、2017年7月に自社開発の音声アシスタントAliGenieを搭載したスマートスピーカーTmall Genieを発表。

ー 音楽再生、スケジュール確認、ルート確認、ドアの施錠・解錠などの遠隔操作、オンライン通販Tmallでのショッピングが可能。

ー 2018年4月、AlibabaはTmall Genieが中国向けDaimler、Audi、Volvo Carに採用されることを発表。また、2018年7月末より中国向けBMWのアプリBMW Connectedと連携させる計画。

▽Nuance

音声アシスタントを手がけるNuanceは、AIを組み込んだ音声アシスタント搭載コネクテッドプラットフォームDragon Driveを自動車メーカーに提供している。

ー ナビゲーション設定、音楽再生やインフォテイメントコンテンツへのアクセスがハンズフリーで行える。その他、施設・駐車場・ガソリンスタンド情報やカレンダー、メモなどのコネクテッドサービス利用も可能。2017年6月の機能拡張により、Just Talk起動時はHotwordや音声ボタン無しで操作指示が可能。また、「寒い」や「明日は傘が必要か」などの発話を理解し、自動的に温度調節を行い、検索結果を知らせる。

ー 新システムは、2018 Audi A8から搭載が開始される。

▽Bosch

Bosch(ドイツ)は2018年1月、独自開発した音声アシスタントのCaseyを発表した。外部データ接続が不要なため、オフラインでも利用できる。また、オフラインでもすべての言葉に反応できるため、ドライバーがコマンドを覚えて読み上げる必要はない。

ー ナビ設定、空調調節、ハンズフリー通話などが可能。

<主要音声アシスタント、主な機能(2018年5月時点)>

音声アシスタント 
 Hotword 
 主な特徴 
Amazon Alexa “Alexa”   
車内から家の制御が行える(一部)。家などから車内状況の確認やエンジン始動などが可能 
            
Google Assistant “Hey/OK Google”
カスタマイズ可
 
音楽再生、Googleナビ利用、SNS送受信、駐車スペース予約、スターバックス注文などが可能
 
Microsoft Cortana “(Hey) Cortana”  
天気やニュース・交通情報のチェック、音楽再生、SNS送受信、スケジュール管理などが可能
 
Alibaba AliGenie “天猫精霊”
Tmall Genieの
中国語
 
天気・ニュース・音楽再生が可能。スマートホーム連動で家から車内、車内から家の設定も可能
 
Samsung Bixby “Hi Bixby”  
コマンドのカスタマイズが可能。アプリの起動、ナビ設定、インフォテイメントなどの利用が可能
 
IBM Watson Assistant(ベータ版) OEMが決定  
ナビ設定、通話、メッセージ送受信、音楽再生などが可能。対話型システム
 
Nuance Dragon Drive Hotword無し  
Just Talk起動中は、「寒い」などの言葉に反応して車内設定を調節する。対話型システム
 
Bosch Casey OEM/
消費者が決定
 
ハンズフリー通話、ナビ設定、室内環境設定などが可能。外部接続不要でオフラインでも作動
 
現代自 Houndify “Hi Hyundai”  
予定とリアルタイムの交通情報に合わせた出発時間を提案する
 
 
音声アシスタント 
 マルチコマンド 
 対応言語 
Amazon Alexa 対応(Follow-Upモード) 英・米語/ドイツ語/日本語   
Google Assistant Home/Routinesは対応 8言語→30言語
以上(2018年末)*
Microsoft Cortana 非対応 13言語*
Alibaba AliGenie 非対応 中国語
Samsung Bixby 2.0より対応を示唆(2018年後期) 韓国語/米語/スペイン語/中国語
IBM Watson Assistant(ベータ版) 13言語
(ベータ版含む)*
Nuance Dragon Drive 30言語以上*
Bosch Casey 30言語以上*
現代自 Houndify 対応 32言語*

  注) -は不明。 *は、地域別の同一言語を含む(米語、英語、カナダ英語など)。

FOURIN世界自動車技術調査月報(FOURIN社転載許諾済み)>

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