45%が「勝手にブレーキをかけてくれる」と認識 自動ブレーキにまつわる誤解とリスク

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障害物を検知してブレーキ制御を行い、事故を防いでくれる自動ブレーキ。

ですが、その機能を過信しすぎてはいないでしょうか。自動ブレーキはいつでもあなたを守ってくれるとは限りません。自動ブレーキが働くのはどのような条件のときなのか、自動ブレーキとどのように付き合うべきかを解説します。

自動ブレーキが貢献し、交通事故は5年で2割減少

交通事故の件数は年を追って減り続けています。2012年には60万件を超えていましたが、2017年には47万件と5年間で2割減少しました。

【交通事故件数と自動ブレーキ新車搭載率の推移】国土交通省と警察庁の発表をもとに作成 2012年:交通事故件数66.5万件・自動ブレーキ新車搭載率4.3%、2013年:交通事故件数62.9万件・自動ブレーキ新車搭載率15.4%、2014年:交通事故件数57.4万件・自動ブレーキ新車搭載率41.1%、2015年:交通事故件数53.7万件・自動ブレーキ新車搭載率45.4%、2016年:交通事故件数49.9万件・自動ブレーキ新車搭載率66.2%、2017年:交通事故件数47.2万件・自動ブレーキ新車搭載率未発表

一方で、自動ブレーキの新車搭載率は上昇を続けています。12年は新車のうち4.3%にしか自動ブレーキが搭載されていませんでしたが、16年には66.2%にまでアップしました。

自動ブレーキは、2つの段階で事故を防ぐ安全装置です。まず、先行車や歩行者など自動車の周囲の障害物を検知して、追突や衝突の恐れがある場合に、音や警告灯でドライバーにブレーキをかけるよう促します。それでも運転者がブレーキを操作せず、システムが追突や衝突を避けられないと判断した場合には、自動的にブレーキが作動します。 

事故の減少には自動ブレーキの普及も貢献しているとみられています。例えばトヨタ自動車の調べでは、自動ブレーキとペダル踏み間違い対応装置を搭載するプリウスは、非搭載車に対して追突事故の発生率が約9割低減したといいます。

45%が誤解 自動ブレーキ過信が事故を引き起こす

しかし、自動ブレーキが搭載されているからといって、事故を防ぎきれるわけではありません。自動ブレーキの機能的な面と、ドライバーの認識の面で問題があるからです。

機能的な面では、システムに不具合がなくても、障害物があるときにブレーキが働かないケースや、安全な場面で自動ブレーキが作動するケースが発生しています。

国土交通省には、2017年のうちに340件の自動ブレーキの不具合が寄せられました。そのうちの73%が勝手に作動した事例で、26%が作動しなかった事例。事故に及んだのは全体の24%(82件)でした。

認識の面では、自動ブレーキへの過信が問題となっています。自動ブレーキは「衝突被害軽減ブレーキ」ともいわれるように、あくまで「被害の軽減をサポートする」もの。ですが、JAFが実施したアンケートによると、約半数が自動ブレーキの機能を過信していることが明るみに出ました。

「ニュースやCMなどで話題の『自動ブレーキ』や『ぶつからない車』と聞いて、どのような装置を想像するか」とたずねたところ、「衝突の危険があるときに、音や警告灯でその危険を促し、車が自動的にブレーキをかけて衝突を回避したり被害を軽減したりする装置」という正しい選択肢を選んだのは55%でした。40%は「前方の車や障害物などに対し、車が自動的にブレーキをかけて停止してくれる装置」を選び、残りの5%も自動ブレーキの機能を過信している回答を選択。回答者の45%が間違って理解していることが分かりました。

2018年2月には、自動ブレーキなどの安全装置を搭載した車が対向車線を越えて歩道に侵入したにもかかわらず、自動ブレーキなどが作動せずに、歩行者が死亡するという痛ましい事件が起きています。こうした事故も、自動ブレーキの機能を正しく理解していれば防げたかもしれません。

働かないのはどんなとき?

万能とはいえない自動ブレーキ。では、自動ブレーキが働かないのはどんな条件のときでしょうか。

▼メーカーの定める速度を超えているとき

自動ブレーキが働く速度はメーカーや車種によって決まっています。その速度を超えてしまうと、障害物を検知できない場合があります。

▼暗い道路や激しい雨など、周りの環境が悪いとき

周囲の環境によっては正しく作動しない場合があります。暗い道路や激しい雨のように、著しく視界が悪くなる状況では、障害物を検知しにくくなってしまいます。早朝や夕方の太陽が逆光になる状況でも注意が必要です。はじめは障害物を検知していても、検知用のカメラに光が差し込むと障害物を見失ってしまい、ブレーキが解除されるといったこともありえます。

道路の状態が悪い時

路面状況も衝突被害低減の効果に大きな影響を与えます。雪道や急な坂道はブレーキが利いてから止まるまでの距離が延びてしまうため、衝突を回避できないことがあるのです。

突然人や車が飛び出してきたとき

自動ブレーキは、人や自動車の飛び出しに対応できません。急カーブや急ハンドルの場合も止まれない可能性があります。

子どもや動物などが対象のとき

子どもや動物、細いポールなどは検知ができない場合があります。先行車両の後ろの形や、車両・歩行者の服の色によっても作動しないことがあります。

自動ブレーキは「万が一」のサポート機能

なお注意したいのは、メーカーや車種によって、作動する速度や条件は異なるということです。

たとえばトヨタの自動ブレーキは、障害物を検知できる速度は時速10~80kmの間ですが、歩行者との衝突を回避できるのは時速40kmまで。日産のある車種では、時速30km以下で走っている場合しか歩行者との衝突を避けられません。自動ブレーキが作動する条件は取扱説明書で説明されているので、よく読んで自動ブレーキの作動条件を理解しておくことが必要でしょう。

自動ブレーキは、補助機能として利用することで、起きていたかもしれない追突事故などを防ぐことができます。あくまで人が主体となって車を運転するという気持ちを忘れずにいたいですね。

(技術ライター 加藤まどみ)

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