新卒通年採用が自動車業界の第二新卒採用を減らす? 業界専門の採用アナリストが予測!
2018.10.10新卒の選考を春から夏にかけて集中的に行う「新卒一括採用」が物議を醸しているが、新卒通年採用が適用された場合、第二新卒の中途採用が減ることが懸念されている。
自動車業界の第二新卒の転職には、どんな影響があるのだろうか。業界専門の転職コンサルタントに話を聞いた。
※経団連が就活ルールの廃止を決定したことを受け、9月28日に公開した記事を更新した。
新卒通年採用が始まれば、いつでも内定が出るように
「新卒通年採用」とは、年間を通して学生の選考を行うこと。これまでは、経団連(日本経済団体連合会)が定める「就活ルール」を目安に、大学3年生の3月から大学4年生の夏にかけて集中的に採用を行う「新卒一括採用」が一般的だった。しかし、経団連は21年度の入社分からこのルールを廃止すると発表。今後も政府を中心に新たなルールを策定する予定ではあるが、新卒でも通年採用が広まっていく可能性が高まっている。
選考期間が決まっている新卒一括採用では、期間内に予定数の内定を出しきれなかったり、内定を辞退されたりすることがある。このため、第二新卒の中途採用を新卒の選考後に行い、採用予定数を満たしている企業も少なくない。しかし、いつでも内定を出せる新卒通年採用が取り入れられれば、大手企業を中心に第二新卒の中途採用が減ることが懸念されている。
現在の自動車業界は一括採用が基本
自動車業界は、これまで「就活ルール」にのっとって新卒一括採用を行ってきた。19卒が対象の採用スケジュールを確認してみると、トヨタ自動車・日産自動車・本田技研工業の大手3社は6月に選考を開始しており、内定を出すタイミングもほとんど同時だった。
一方で、既に新卒通年採用を取り入れている国内企業もある。ソフトバンクグループは、2015年から新卒の通年採用を開始。通常の一括採用と並行して、時期を問わず学生の選考を行っている。ユニクロは採用サイトで「どの学年からも参加可能。大学1、2年生も歓迎」と謳っており、実際に大学2年生が内定を取得した事例もあると言う。
今後、新卒通年採用を適用する企業が増えれば、自動車業界の新卒採用にも変化が現れ、第二新卒の転職に影響を与える可能性はないのだろうか。自動車業界担当の転職コンサルタントに話を聞いた。
コンサルタントが予測!自動車業界の第二新卒転職市場
―ズバリ、経団連が就活ルールを撤廃すれば、自動車業界の第二新卒の転職に影響を与えると思いますか?
関寺氏:就活ルールがなくなったからといって、第二新卒の方が自動車業界で転職しにくくなるということはないでしょう。就活ルールが撤廃されても、ある程度のガイドラインは示されると予想しています。自動車業界はこうしたガイドラインに沿って新卒採用を行っていくと考えているので、採用方法そのものに大きな変化が現れる可能性は高くありません。
―自動車業界だけが新卒通年採用の波に乗らないということでしょうか?
関寺氏:自動車業界に限らず、製造業全般に言えることです。製造業は素材を作る企業に、素材から部品を作る企業、部品を組み立てる企業というように上下構造で成り立っています。自動車業界に関して言うと、自動車部品メーカーは、親子関係にある自動車メーカーよりも後に内定を出すのが暗黙の了解なので、突然通年採用に切り替えるのは現実的に難しい。柔軟に採用を進められるのが通年採用のメリットですが、自動車業界の企業の多くはその自由度を求めていないのです。
―では、大手自動車メーカーが通年採用を始めた場合、どんな影響がありそうですか?
関寺氏:仮に大手自動車メーカーが新卒通年採用を始めた場合、中堅・中小企業は通年採用ができるパワーや資金がないため、すぐには適応できないはず。その場合、中堅・中小企業での第二新卒の採用はむしろ活発化する可能性があります。通年採用は一括採用と比べて有利に進められるので、通年採用に対応できなかった中堅・中小企業は新卒採用予定数を埋められなくなるリスクが高まります。
この場合、企業が注力するのは第二新卒を中心とした中途採用。日本の基幹産業である自動車業界は、中堅・中小といっても規模が大きい企業がたくさんあります。「憧れの自動車業界に転職したい!」と考えている方は、こうした企業に転職しやすくなることも考えられるでしょう。
(オートモーティブ・ジョブズ編集部 山岡結央)
関寺 庸平
前職では上場メーカーで技術営業をしていたため、エンジニアのキャリアに詳しい。
NHKや日本経済新聞に、自動車業界・製造業の転職市場についてコメントを提供している。