新型ジムニー激売れ中!影の立役者は「ジムニー女子」

2018.10.04
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今年7月にフルモデルチェンジしたスズキの「ジムニー」が人気を博している。1970年に初代を発売以来長い間売れ続けているが、近年存在感を強めてきたのが「ジムニー女子」と呼ばれる女性ユーザーだ。

「ジムニー女子」の出現 男性中心からの変化

今年7月、20年ぶりにフルモデルチェンジを受け4代目となった4輪駆動軽自動車スズキ「ジムニー」が爆発的な人気を得ている。小型車登録となる「ジムニーシエラ」を含めると、発売後わずか1か月で国内年間販売目標台数1.6万台を超える受注が入り、現在も多くのバックオーダーを抱えているという。

納車までは約1年掛かると言われており、スズキは先日、増産を決定した。生産を担当している静岡県の湖西工場の月産能力を、現在の1.5倍となる7,000台に引き上げることにしたとのことだ。

このジムニー人気の中で気になるフレーズに「ジムニー女子」がある。SNSで検索すると、かなりの件数がヒット。ジムニーのユーザーは男性のイメージがあるが、女性の間でも人気が広がっているのだ。

ブラックのボディカラーのジムニーと写る「ジムニー女子」の写真

ジムニーは本格プロ仕様 モデルチェンジを重ねてきた

ジムニーは通算4代目となる新型になっても、信頼性・耐久性に優れたラダーフレーム、悪路走破性に長けた前後リジッド式サスペンション、電子制御に頼らない手動切り替え式4輪駆動システムなどを継承しており、数あるSUVの中で最もヘビーデューティなキャラクターを持つ。

新型の発表会では、開発にあたって林業に携わる人々にリサーチしたというエピソードが公表された。開発の基準を道なき道を走らなければならない業界に置いたことからも、硬派なクルマであることが分かろう。

ジムニーは半世紀近い歴史の中で、快適性も高めてきたが、他の軽乗用車と比べれば乗り心地は固めで、ステアリングは中心部分の反応が鈍く、ハンドリングは腰高感が気になる。とはいえ、ボディサイズが軽自動車枠に収まることもあり、運転免許を取り立ての人でも扱いやすい自動車のひとつである。

こうした部分に女性ユーザーが気づき、しだいに数を増やしていって、「ジムニー女子」という言葉が生まれたのではないかと想像している。

ジムニー後部の外観を背に写真に写るジムニー女子。

スズキはジムニーを含め、発売後の受注状況を公表していない。購入者の男女比についても同じであるが、今年8月に開催された第一四半期の決算説明会では、新型ジムニーが新規の女性ユーザーなどから予想以上の受注があることを明らかにした。さらに広報部に聞いたところ、新型ジムニー購入者に占める女性比率は、これまでと比べて少し増えているということだった。 

ジムニー女子の購入のきっかけは「インスタ映え」

では、ジムニー女子たちはジムニーのどんな部分に魅力を感じているのだろうか。

SNSで数人に購入のきっかけを尋ねたところ、「もともと丸目のヘッドライトが好きで悩んだ結果、友達が乗っていたジムニーに決めた」など、デザインを挙げた人が目立っていた。

興味深いのは「インスタ映えする」という意見があったことだ。実際にインスタグラムで「#ジムニー女子」と検索すると、ジムニーをかわいらしくカスタムしている写真や、ジムニーとの2ショット写真が18,000件以上投稿されている。他の軽自動車とは一味違うジムニーのデザインが、インスタグラムで映える写真を求める女性の心を掴んだのだろう。

黄色のボディカラーのジムニーに乗っているジムニー女子の写真。オフロード走行を楽しむ女性ユーザーも増えている。

なかには、インスタグラムで軽自動車の写真をチェックして、ジムニーの購入を決めたという女性も。ジムニー女子の「インスタ映えする」投稿が、新たなジムニー女子の誕生にもつながっているようだ。

一方、ジムニーで本格的なオフロード走行を楽しんでいる女性ユーザーもいる。

ある方にジムニーの魅力についてたずねたところ、「はじめはおしゃれに街乗りを楽しむつもりだったが、オフロードを楽しむ人たちと出会って、オフロード走行にどっぷり浸かっている。他の車では味わえない険しい山道や急な坂道、ゴロゴロした岩の上でも、ジムニーなら進んで行ける」と、ジムニーでオフロードに開眼したと打ち明けていた。

アイボリーのボディカラーのジムニーの上に座るジムニー女子の写真。ジムニー女子の中では、ジムニーを「相棒」と呼ぶ人もいた。

ジムニーを「相棒」と呼んでいる方もいた。ミニバンではこのような表現を使う人はおそらくいないだろう。ジムニーは電子制御を多用せず、伝統的なメカニズムによって高度な悪路走破性を実現しているので、性能を引き出せるかどうかは乗り手の技量による部分が多い。だからこそ相棒という言葉が使われるのだろう。

個性的なデザインと卓越した走破性を持つジムニーは、日常生活の延長で非日常を体験できる貴重な存在だ。それがインスタグラムという新しいメディアで支持されている。男性ではなかなか思い浮かばないこの感性も、ジムニー女子を増やしている理由のひとつかもしれない。

(モビリティジャーナリスト 森口将之)

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