<トヨタ>新型Corolla スペック・機能まとめ
2020.02.06トヨタは2018年6月に日本でハッチバックモデルAurisの後継モデルとしてCorolla Sportを発売し、2019年9月にセダンとステーションワゴンの全面改良モデルである新型Corolla/Corolla Touringを追加した。
Corollaは1966年から続くトヨタのロングセラーモデルのひとつであり、今回で12代目のモデルとなる。トヨタは新型CorollaにTNGA導入。スタイリングや走りの良さを確保した上で、他の車種との部品搭載レイアウトの共通化や部品共通化率の拡大を通じて原価低減を進めた。加えて今回は、最新のシャシ制御技術の採用やコネクテッドサービスを提供し、商品競争力を高めている。
新型Corollaの外観
新型Corollaの主要諸元
新型Corollaの概要
▽車種
Cセグメント:セダン/ステーションワゴン/ハッチバック。
▽発売時期(日本発売)
2018年6月に、ハッチバックのCorolla Sportを発売。2019年9月に、セダンのCorollaとステーションワゴンのCorolla Touringを追加した。
▽販売目標(日本国内目標)
Corolla:月間1,700台。Corolla Touring:同5,400台。Corolla Sport:同2,300台。
▽本体価格(消費税10%込み)
Corolla:193.6万~294.8万円。
Corolla Touring:201.3万~299.8万円。
Corolla Sport:216.9万~282.5万円。
▽競合モデル*
ホンダCivic、マツダ Mazda 3、スバル Impreza、他。
*競合モデルは車体サイズや形状、価格等でFOURINが独自に想定。
▽生産拠点(日本仕様車)
トヨタ高岡工場(Corolla/Corolla Touring)、トヨタ堤工場(Corolla Sport)。
▽モデル概要
Corollaは1966年から生産を続けているトヨタを代表するロングセラーモデルである。2019年8月までの世界累計販売台数は4,765万台に達した。今回の全面改良で12代目となる。
- Corollaはセダンモデルに加えて、ステーションワゴン、ハッチバックも設定。12代目は、セダンのモデル名をCorolla AxioからCorollaに、ステーションワゴンをCorolla FielderからCorolla Touringに変更した。Corolla Sportは先代までAurisの名称で展開されてきたが、今回でCorollaシリーズの1車種となった。
- Corollaは、世界各国の顧客ニーズに細かく対応するため、地域ごとでサイズや仕様を変更。日本仕様も専用設計である。
- 新型Corollaは、スポーティなスタイルや走りの良さの追求、部品の共通化等による開発の高効率化を目的に、プラットフォームをTNGA-Cに切り替えたが、日本での使用を考慮して設計が変更されている。
- 最新のコネクテッドサービスや安全機能を設定し、競合モデルに対して差別化し、国内でのシェア獲得を狙う。
- トヨタは新型Corollaの発売後も、先代モデル(Axio、Fielder)も併売する。装備を見直してビジネスユーザー向けに提案する。
スタイリングとデザイン
トヨタはCorollaを世界戦略車として位置づけ、世界各地域の市場ニーズに細かく合わせて、車体サイズや仕様を変更して展開している。日本で発売した新型Corollaは、世界共通のTNGAプラットフォーム(TNGA-C)を採用しているが、日本市場専用の設計に変更されている。TNGA-Cにより車体サイズが大型化(3ナンバー化)したものの、日本での使い勝手を考慮してサイズアップを最小限に留め、海外仕様よりも小さくした。
さらに、3ナンバー化によるワイドトレッドを活かして、タイヤの舵角を大きく取り、最小回転半径を先代と同等レベルの5.0~5.3mとした。これにより、車体を大型化しても日本の市街地走行で優れた取り回しを実現した。
<スタイリング>
トヨタは商品競争力強化に向けた車両設計構想であるTNGAを12代目の新型Corollaに導入した。
- 4代目Priusなどと同じTNGA-Cプラットフォームを採用。車両の低重心・高剛性化を追求した上で、他車種と各種部品や部品搭載レイアウトの共通化などを進めて原価低減が図られた。
- ボディザイズが大型化して3ナンバーとなった。ただし、日本国内で使い勝手を重視し、サイズアップを最小限にしている。
- 先代に対し全長で95mm(Touringは85mm)、全幅で50mm拡大し、全高は50mm下げた。一方で海外仕様に対して全長で135mm(Touringは155mm)、全幅で35mm縮小した。
- 新型Corollaの最小回転半径は、ワイドトレッド化に伴うタイヤの舵角の拡大により、標準グレードで先代(4.9m)とほぼ同等である5.0m。上級グレード(17インチ装着車)の場合は、5.5mから5.3m短縮し、日本の市街地走行時の取り回しの良さを確保した。
<デザイン>
トヨタは12代目となる新型Corollaシリーズのスタイリングを、スポーティでワンランク上の存在感をテーマにエクステリアデザインを設定した。
- TNGAによる低重心なスタイルをベースに、車体前方から後方へ抜けるサイドウィンドウデザインとショルダーラインを組み合わせて、伸びやかでスポーティなイメージを強調。また、横に張り出したフェンダーとタイヤによりワイドで安心感を表現している。
コックピット・インテリア
新型Corollaは、ドライバーの運転のしやすさを重視するため、ピラーやインパネのレイアウトが変更された。前方の視認性を高めるため、インパネは水平基調のデザインを採用し、メータフードを含めて高さを下げた。Aピラーはハイテン材を採用して細径化した。またオプションとしてスマートフォンのワイヤレス充電機能やシートヒータなど上級セグメントモデル並みの装備が設定された。
<居住性>
新型Corollaは、前席で車体中央からのヒップポイント距離を従来比12.5mm延長して居住性を向上。また、ロングホイールベース化(+85mm)とリアオーバーハングの短縮(-20mm)も居住性向上に寄与しているものとみられる。
<コックピット>
▽デザイン・機能
新型Corollaは、水平基調のインストルメントパネル(インパネ)を採用した。
インパネ周辺の構成部品の形状や色に統一感を与えて、ドライバーに対する感性品質も追求した。
トヨタのコネクテッドサービスを利用するための『ディスプレイオーディオ』を全車標準装備した(下ページ「コックピット・インテリア」参照)。
オプションで、スマートフォンのワイヤレス充電機能やステアリングヒータ、シートヒータなど上級クラス向けの装備が設定されている。
▽視認性
新型Corollaは、運転のしやすさを重視するため、インパネやAピラーのレイアウトを工夫している。
- メータフードを含めたインパネの高さを先代モデルよりも下げて、前方正面の視認性を高めた。
- Aピラーにハイテン材(一部報道によるとホットスタンプ)を採用して細径化した。これと合わせてフロントサイドのクォーターガラスのピラーの排除、ドアミラーの配置を変更して、斜め前方の死角を低減した。
車体技術
新型Corollaは、PriusやC-HRと同じTNGA-Cプラットフォームを使用し、車両の低重心化と高剛性化により走行安定性を高めた。最低地上高を最大25mm下げて低重心化した。また剛性確保に向けて、車体の開口部に環状骨格構造を採用した。
さらに、車体鋼板の接合部は、スポット溶接等による点接合に加えて構造用接着剤を追加で塗布した。このほか軽量化技術として、Corolla Touring(ステーションワゴン)とCorolla Sport(ハッチバック)のテールゲートの外板を樹脂化した。
先代の日本専用モデルであるCorolla Axio/Fielderは、AquaやVitzと同じBセグメントプラットフォームを採用。先代のAurisは、先代RAV4やLexus CT等と同じMCプラットフォームを採用していた。新型Corollaは、走行性能の向上や他車種との部品共通化率拡大などを狙い、全車でTNGA-Cプラットフォームに変更した。
- TNGAにより重心位置を従来比31mm下げた。
- 新型Corollaの車体剛性は、従来比67%向上した。
- 剛性確保に向けて、車体骨格のレイアウトやハイテン材の配置を最適化、また構造用接着剤を使用した。
- サイドストラクチャなどの開口部に環状骨格構造を採用した。さらにフロアやサイドシルなどにホットスタンプを配置した。これにフロント部分のマルチロードパス構造と組み合わせて、車体剛性の向上だけでなく衝突時安全性(キャビンの保護性能)を高めた。
- スポット溶接などの点接合部分に、構造用接着剤を追加で塗布した。またフロントガラスと車体との接合部に、高剛性のウレタン接着剤を使用している。
車体軽量化の手段として、Corolla TouringとCorolla Sportのテールゲート外板を樹脂化した。
- 先代のCorolla Fielderでもテールゲート外板にPP系熱可塑性樹脂であるTSOP(Toyota Super Olefin Polymer)を使用。新型も引き続き同様に樹脂テールゲートを採用した。
- 樹脂の採用より軽量化だけでなく、曲率を持たせた立体的な造形が可能となり、デザイン性も向上した。
シャシ・パワートレイン技術
新型Corollaは、走行性能の向上を目指し、全車種に最新のシャシ制御技術ACA(Active Cornering Assist)が搭載された。コーナリング中に内輪のブレーキを制御して、車両の旋回性を高めた。これにより、走行ラインのトレース性を高め(ドライバーの意のままに運転できるようにする)、ドライバーに運転のしやすさと運転の楽しさを提供する。
新型Corollaのパワートレインは、ガソリンエンジン(GE)仕様とハイブリッド(HEV)仕様が設定されている。
HEVは、4代目Priusにも採用された1.8ℓ直4アトキンソンサイクル(ミラーサイクル)GEと平行軸配置の2モータトランスアクスル(THS-II)を組み合わせたシステムを搭載。Priusで実証された高い燃費性能がCorollaに受け継がれた。コンベ車は、HEVと同型である1.8ℓ直4GEとダウンサイズターボGEである1.2ℓ直4直噴ターボが設定された。
このうち1.2ℓ仕様のみに、新開発の6速MT(iMT)が設定された。iMTにより変速時にエンジン回転数と協調制御してシフト操作を簡略化することで、自動車好きの若者の囲い込みを狙っているとみられる。
<シャシ>
新型Corollaは、ドライバーの運転のしやすさを重視し、「目線の安定化(目線の動かされにくさ)」、「旋回姿勢の決まりやすさ」、「ライントレース性(ドライバーの意図に対し正確に車両が応答する)」をテーマにシャシ開発が行われた。新開発のサスペンションやブレーキ制御システムが採用された。
- 新型Corollaシリーズのサスペンションは4代目Priusと同様にフロントがマクファーソンストラット、リアがマルチリンク(ダブルウィッシュボーン)に全車統一されている。
- Corolla Sportはオプションでサスペンションに可変減衰システムAVS(Adaptive Variable Suspension system)が設定された。
- トヨタとKYBが共同でAVSを開発。ボディの上下運動の速さに応じて可変減衰の制御電流供給を調整。連続的に減衰力の増減を調整して、スムーズな乗り心地とステア操作に対するライントレース性を両立した。
- Corolla全車種に新開発のブレーキ制御システムであるACA(Active Cornering Assist)を標準装備した。車輪速やステアリングの舵角、車両のGセンサー等の情報を元に、車両旋回状況を判断し、内輪にブレーキをかけることで、コーナリング性能を高めライントレース性が向上した。
<パワートレイン>
▽HEV
新型CorollaシリーズのHEVモデルは、4代目Priusと同じアトキンソンサイクル(ミラーサイクル) 1.8ℓ直4自然吸気GE(2ZR-FXE)に平行軸配置の2モータトランスアクスル(THS-II)を組み合わせた。WLTCの複合燃費は最高で29.0km/ℓ。
- 欧州市場向けは、2.0ℓ直4GEと高出力タイプ(80kW仕様)の駆動モータに変更して、走りを重視した仕様もある。
▽コンベ車
新型Corollaシリーズの国内仕様については、1.8ℓ自然吸気GE(HEVモデルと同型)と1.2ℓ直4直噴ターボGEを設定。CVT又は6速MTと組み合わせる。
- 1.2ℓ仕様のみに新開発の6MT(iMT*)が設定された。iMTは、従来比約7kg軽量化。エンジン回転数の協調制御機能を搭載することでスムーズな変速を可能とした。
- CVTは7速(Corolla Sportは10速)変速モード機能付きでCVT車でも走る愉しさを提供する。また米国向けCorollaは、ギア駆動と組み合わせて低速からの発進加速性能と高速巡航時の燃費性能を高めたDirect Shift-CVT*が設定された。
ADAS、コネクテッド技術
トヨタは新型Corollaユーザーに、コネクテッドサービスT-Connectを提供する。オペレータサービスによる緊急時の通報、メンテナンス情報の提供、スマートフォンとの連携などの機能を付加し、自動車の利用価値を高めた。
トヨタは新型Corollaに、Toyota Safety Senseの最新仕様を全車に標準装備した。高精度な自動ブレーキや操舵支援機能など上級セグメントと同等の安全機能を搭載し、競合モデルに対して優位性を確保することで、日本国内でCorollaの拡販を図る考えである。
<コネクテッドサービス>
新型Corollaは、トヨタの車載通信機DCM(Data Communication Module)を標準搭載した。ユーザーはDCMによりトヨタのコネクテッドサービスT-Connectを利用することができる。
- トヨタは、2018年に発売したCorolla Sportと新型CrownよりDCMの標準装備化を進めている。
- 新型Corollaから、DCMとセットで『ディスプレイオーディオ』を標準搭載し、スマートフォンと接続して各種操作を行えるようにした。
- オペレータサービスによる緊急時の通報や、ホテル・レストラン等の予約サービスを提供する。
- AI音声エージェントによる音声認識を利用した情報配信を行う。主に、施設の検索や天気、車両機能の解説などを行う。
- 故障時のサポート機能eケアサービスを提供する。警告灯が点灯した場合、ナビ画面からコールセンターに接続する。オペレータがユーザーに対して車両状況に応じて適切な走行をアドバイスする。また販売店への整備入庫予約を行う。
- LINEと提携し、LINEで目的地登録や燃料残量の確認ができる。
- トヨタ、LINE、アイシン・エィ・ダブリュが共同開発したカーナビシステムを提供。車内でClovaなどのサービスを利用することができる。ナビの地図データ更新は平均10日、最速で即日に更新を行える。
トヨタはCorollaなどへのDCMの標準装備化を通じて、コネクテッドサービスの提供による顧客満足度向上を図る。これと合わせて、モビリティサービスに関するビッグデータへの情報収集量を増やし、新たなサービスの開発を目指すとみられる。
<ADAS>
新型Corollaは、全車に運転支援パッケージToyota Safety Senseを標準装備している。主な機能は以下の通り。
- プリクラッシュセーフティ:単眼カメラとミリ波レーダを活用し、昼夜での歩行者と車両認識、昼間での自転車認識を行い、緊急時に警告・自動ブレーキを作動させる。
- レーントレーシングアシスト:単眼カメラが車線を認識し、車線中央走行を維持するように、ステアリング操作を支援する。
- オートマチックハイビーム:単眼カメラが先行車と対向車を認識して、ハイビームを自動で制御する。
- インテリジェントクリアランスソナー:超音波ソナーにより低速時に近距離の障害物を検知。誤発進・誤後退の危険がある場合は、エンジン又は駆動モータの出力を抑制して被害を軽減する。
- リヤクロストラフィックオートブレーキ:駐車場での後退時に、後方左右から接近する車両をレーダで検知し、ドアミラーのインジケータやブザーで警告。衝突の危険性がある場合は自動ブレーキを作動させる。
- ロードサインアシスト:単眼カメラが路上標識を認識してドライバーに情報を通知して、標識の見落としを防止する。
FOURIN世界自動車技術調査月報
(FOURIN社転載許諾済み)