ドライバーモニタリング技術の最新動向

2017.11.28
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ドライバーモニタリング技術動向

<ドライバーモニタリング役割>

運転中や運転前のドライバーの心身状態をセンサーやカメラを通じて自動車側が監視し、警告を出してドライバーが運転に集中できるような状態にするほか、場合によってはドライバーによる運転を中止させることで事故防止につなげる。

▼車内に設置したカメラを利用してドライバーの瞼の動きや頭の動きを認識してドライバーの運転状態をAIが監視する。

▼ステアリングホイールやシート等に搭載したセンサーを通じて、ドライバーの脈拍や血流等を測定し、AIが運転可能な状態であるかを判断する。

<ドライバーモニタリングの活用>

運転中にドライバーの瞼や頭の動きを検出して、AIがドライバーの脇見や居眠り運転を判断し、警告音や振動などで警告することで、ドライバーが運転に集中できるようにする。

▼高度自動運転において、天候等で自動運転での航行が難しくドライバーと自動運転システム間での運転切り替えを行う際、ドライバーの状態に合わせて、運転タスクを移動する。
▽脇見や居眠りを検知した場合、ドライバーへ警告するとともに、タスクの移動が難しい場合は、自動で路肩等に停止して、システムを停止し、事故防止につなげる。

▼運転中にドライバーの脈拍や血圧等を検知して、健康状態を把握。ドライバーの体調が急変して運転に支障をきたす可能性を検知した場合に自動運転に切り替えて安全な場所に退避、急激な体調不良(意識不明等)による暴走事故を防止する。 ▽運転前にドライバーのセンシングを行い、健康状態が悪い場合に手動運転を行えないようにすることで、事故の防止につなげる。

ドライバーモニタリングを活用した最近の主なコックピット技術動向

<カメラによる状態監視>

ZF

ZFが2017年6月に発表したコンセプトカーVision Zero Vehicleでは、カメラによるドライバーモニターシステムを搭載したコックピットが採用された。 Vision Zero Vehicleの写真

(ZFのコンセプトカーVision Zero Vehicle)

▼Vision Zero Vehicleは、交通事故ゼロ、排ガスゼロを目指したコンセプカー。事故発生ゼロを目指した技術の一つとしてカメラによるドライバーモニターを搭載した。

▼ドライバーの注意散漫状態を検知して警告するシステムとしてドライバーモニタリングを設定。

▼学習機能を搭載したレーザーベースのカメラシステムを車内に設置し、ドライバーの頭の位置を3次元で測定・監視を行う。

▼カメラをデジタル式ではなくレーザーベースとすることで、室内が暗くてもドライバーの認識ができるようになり、時間帯を問わずに正確な認識を可能とする。

▼カメラで捉えたドライバーの状況からシステムが運転に対して危険であると判断した場合、車載ディスプレイによる視覚的な警告や音響による警告、シートベルトの締め付けなどでドライバーに警告して、運転に集中させる環境を作り出す。

▼ドライバーモニタリングシステムと自動運転技術と組み合わせて、緊急時にはアクセルやステアリングを自動で制御し、路肩などへの退避行動も行う。

▼Vision Zero Vehicleには、ドライバーモニタリング以外に、GPSや標識情報を活用した逆走防止機能なども搭載されている。

Valeo

Valeoは、カメラによるドライバーモニタリングシステムを開発・提案している。

▼カメラでドライバーの視線の向きを監視し、ドライバーが道路上に視線を向けていない場合は、ドライバーに警告するシステムとして提案。

▼Valeoのドライバーモニタリングシステムは2017年5月に横浜で開催された自動車技術展に展示された。機能の詳細は、本誌2017年7月号(第40号)P.13を参照。

オムロン

オムロンは、2017年10月に千葉県幕張市で開催された電子部品技術展示会CEATEC 2017に、近赤外カメラを利用したドライバーモニターシステムを出展。

オムロンの近赤外カメラを使ったモニタリング機器の写真

 

(オムロンの近赤外カメラを使ったモニタリング機器)

▼ドライブレコーダーやデジタルタコグラフなどの運行管理機器の機能にドライバーモニタリングシステムを組み合わせたシステムとして提案。

▼システムにドライブレコーダーのカメラとGPS、加速度センサーなどを組み合わせ、ドライバーの状態監視を含めた運行管理を行うことが可能。 オムロンはCEATEC 2017で、ドライバーモニタリングシステムを活用した次世代のコックピットシステムを展示した。

▼近赤外カメラで、ドライバーの瞼の動きや、顔の向きを検出し、そのデータを基にドライバーが運転に適した状態であるがどうかAIが判断する。判断基準は、ドライバーの瞼の動きや顔の位置などをベースに、ハンドルのホールド状態、着座状態など、複数の指標を組み合わせて行う。▽カメラによりリアルタイムでドライバーの顔を追って検出。ドライバーの黒目の検出による目線状態と顔の向きのデータを組み合わせてドライバーの集中度をAIが判断。視線の状態に加えて顔の向きの変化から、運転中の携帯電話の使用などによる集中力の低下をAIが判断することもできる。

▼近赤外カメラにより、昼夜問わずにドライバーの状態検出が可能であるほか、サングラスを装着した状態でも視線検知を行うことができる。

▼各種データからドライバーが運転に適していない状態であるとAIが判断した場合は、ドライバーへ警告を出すほか、非常時には、自動運転で路肩への退避を行うことを想定している。

<脈波センサーを活用した状態検知>

ローム

ロームは2017年10月開催のCEATEC 2017で展示した次世代コックピットにおいて、自社のセンサーデバイスを利用した脈波検知のドライバーモニタリングシステムを提案した。

▼ステアリングホイールのグリップ部分に光学式脈波センサーを搭載し、ドライバーの健康状態を把握。センサーによるデータからドライバーの体調が急変し、運転が困難となった場合は、自動運転で路肩に退避するシステムを想定する。

<参考:脈波・脳血流のセンシング技術の研究>

デンソー

デンソーは将来的な自動運転システムでの運転タスク移動機能に必要なドライバーモニタリングへの活用を目指し、生体データを活用したドライバー状態の研究を進めている。

▼人間の脈拍や脳血流のデータを生体データとして利用。赤外線センサーによる光の跳ね返りを通じて脈拍や血流の動きを検知する。

▼測定により得た生体データと実際のドライバーの状態の因果関係を正確に把握するため、実証実験や研究を実施。主に人間の状態(感情等)に対し、脈拍と血流がどのような反応を示すかを検証と分析を行う。

▼デンソーは、より正確な分析を行うため、より多くの人から生体データに関するサンプルデータの収集に取り組んでいる。2017年10月のCEATEC 2017でも、来場者との合意の下、VR体験を通じて生体データの収集を行った。

(各社広報資料、CEATEC 2017会場でのヒアリングを基にFOURIN作成)

FOURIN世界自動車技術調査月報(FOURIN社 転載許諾済み)>

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