世界はEVに向かうが、自動車メーカーの戦略は単純にはいかない

2017.12.01
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世界は一斉にEVに向かう

地球温暖化対策のためのCO₂排出量の削減策の一つとして、主要国はゼロエミッションの電気自動車(EV)導入の目標を掲げ、普及を図る。そのため自動車メーカーもEVの本格市場投入戦略を立ててきた。

世界の内燃機関否定の流れ

今年7月、英政府は、大気汚染の改善を目的にガソリン・ディーゼル車の新規販売を2040年から禁止すると発表した。仏政府も2040年までにガソリン・ディーゼル車の新規販売を禁止する方針だ。ドイツでは新エネ車(EV、PHEV、FCEV)の普及を目指し、充電ステーションを2020年までに10万ヵ所追加設置する。ドイツでは自動車産業で働く人は80万人で、内燃機関を製造をする下請けメーカー、生産従事者への影響は大きい。緑の党は2030年からのガソリン・ディーゼル車の販売禁止を掲げる。北米では、ZEV規制採用の加州+8州が2025年までにZEV330万台普及目標を発表している。

【主要国EV化目標(乗用車)】(FOURIN技術月報2017.10参照)米国:ZEV(EV)規制採用の加州+8州、2025年までにZEV330万台普及目標。加州は、2030年ZEV420万台普及目標、2050年には新車販売は100%ZEV目標。 ドイツ:2020年プラグイン電動車(EV/PHEV/電動二輪車)普及100万台目標、内燃機関車については雇用を守るため早期の廃止はしない。 英国:2040年までにガソリン/ディーゼル乗用車・バン販売を終了、2050年までにほとんど、全ての乗用車・バンをゼロエミッション化。 フランス:2040年までにガソリン/ディーゼル車販売を終了。 インド:2030年までにガソリン/ディーゼル車販売をやめる方針。 中国:2030年新エネ車(EV/PHEV)販売は市場全体の40%(1500万台)目標、ガソリン/ディーゼル車販売禁止については検討。 日本:次世代自動車(EV/HEV/PHEV/FCEV)の新車販売比率、50%(2020年)、70%(2030年)目標。

自動車メーカーの戦略は単純にはいかない

EVは世界で早期に三菱自(i-MiEV:2009年)と日産(LEAF:2010年)が発売したが、航続距離が長く充電時間の少ないHEVのPRIUSが販売を伸ばした。三菱自と日産は改良・販売を続け、Renaultを含めたアライアンスで、他社より一歩先を行く具体的な戦略を立てた。

【Renault・日産・三菱自アライアンスの目標】(2017年9月発表)2020年までに:・複数のセグメントに展開可能なEV専用共通プラットフォーム実用化 ・新たなEVモーターおよびバッテリーを投入し、アライアンスで共有。 2022年までに:・EVの70%が共有プラットフォームベース ・100%EV を12車種発売 ・航続距離600kmを達成 ・バッテリーコストを30%削減(2016年比) ・15分急速充電で走行可能な距離を2016年の90kmから230kmに拡大 ・フラットな電池パッケージで室内空間拡大、スタイリング自由度向上 ・アライアンス共通のC/Dセグメントに三菱自の新PHEV技術を採用。 ■日産LEAF(EV)

日産LEAF(EV)の写真

トヨタ自動車は9月28日、マツダ、デンソーとEVの基幹技術の開発を行う新会社「EVシー・エー・スピリット」を設立した。ダイハツ、日野、SUBARU、スズキなども加わる可能性がある。HEV複雑系では非常に有効に機能したマーケティング・開発・生産システムであるが、部品数の少ないEVでは「魅力的な商品」開発は容易ではないだろう。世界の主要自動車メーカーはEVを早期に量産化する目標を発表したが、内容はまだ明確ではない。

【主要自動車メーカーの戦略】米GM:2023年迄にEV・FCEVで20車種以上を発表。 独VW:2025年迄にEV50車種投入、世界で3,000万台/年EV発売。 独Daimler:2022年迄に全車種でEV・HEV採用、2020年までに北米と欧州で発売するsmartをすべてEVにする。 トヨタ自動車:2020年までにEV量産を検討、マツダ・デンソーとEV連合、中国で2019年にEV生産・販売を目指す。 仏Renault・日産・三菱自:2022年(世界販売1,400万台/年)の3割をEV化、3社で12車種EV新発売。 ホンダ:2030年までに世界販売の2/3を電動化、欧州では2025年に達成、2019年欧州向け小型EV発売。

(トヨタ自動車・日産・BYDのHPと発表資料、およびFOURINの月報などを参考に作成)

FOURIN世界自動車技術調査月報(FOURIN社 転載許諾済み)>

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