トヨタ、HEV技術活用し全方位で電動化開発を強化、自動運転は2020年の高速道路での実用化を目指す
2017.12.27トヨタは、2050年までに新車におけるCO₂排出を2010年比9割削減することを目標に掲げており、HEV(トヨタ名称HV)をはじめとした電動車開発を強化している。
さらに電動化と並行して、今後も搭載がつづく内燃機関においても、環境性能と動力性能の両立を目指した開発にも取り組んでいる。
また自動運転分野においては、2020年代前半での一般道での自動運転技術導入に向けて、米国TRIを中心に、コア技術であるAIをはじめとしたシステムの開発に取り組んでいる。
電動車開発
トヨタは、電動車開発において、自社が得意とするHEVの性能向上を図るとともに、HEV技術を活用してPHEVやFCEV、EVまで全方位で開発を強化する方針である。
HEVでは、2015年末の4代目Priusを皮切りに、新モデルや全面改良モデルで新システムの搭載を進めている。FF用ではモーターやインバーターの効率化やモーター配置変更による機械損失を低減。2017年までにPriusのほかC-HRや新型Camryに搭載した。
FR用では2017年に投入したLexus LCと新型LSに2モーターと4速ATを組み合わせた新システムを搭載。ATによるギア比を活用した低速域での加速性能の向上と高速域でのモーター使用による燃費向上を実現した。
PHEVでは、トヨタは2016年にPrius PHVを全面改良。高効率なFF用新HEVシステムをベースにワンウェイクラッチの搭載と電池容量の増加によりEV走行の領域を拡大して、環境性能を向上。
今後、Prius以外のモデルにもPHEVの設定を図るとみられる。
またトヨタは、水素社会の実現に向けてFCEVの開発を推進。
2014年は第一号となるMIRAIを投入。タンクやFCスタックなど専用部品を新規開発する一方で、駆動バッテリーやモーターなどで既存部品を流用し、コスト削減を進めた。
トヨタは2020年頃の実用化に向け第二世代のFCEV開発を進めており、BMWとの提携を通じた更なるコスト削減や、利便性をさらに高めるための航続距離延長を目指している。
このほか、トヨタは中国などの新興国を含むグローバルな排ガス規制強化を受けて、HEVやPHEV、FCEVに加えて、2016年末以降、EV開発に本腰を入れている。
2016年末に、EV開発の社長直属組織を立ち上げた他、2017年にはマツダ、デンソーとの合弁によるEV開発会社を設立、スズキともEV事業で連携を検討することに合意した。
またトヨタは、HEVで蓄積した技術を活用して開発を進めながら、他社との連携を通じて、コストや性能面などの競争力強化を図る。
内燃機関・変速機開発
トヨタは電動化技術の開発と並行して、引き続き内燃機関の開発も強化している。
2016年末には、ミドルクラス向けの新エンジンDynamic Force Engineを発表。新エンジンでは、TNGA構想による開発コンセプトの下、燃費と出力の両立に向けて、部品配置の変更やストローク変更等によりシリンダー内での高速燃焼を実現した。
トヨタは、グループ全体での製品競争力強化に向け、他のクラスのエンジンでも同様の高速燃焼技術を導入する方針で、2017年には、大型クラス向けの3.5ℓV6タイプのDynamic Force Engineを公表した。
またATでは、ミドルクラス以上のモデルでの多段化を推進。
FFでは8速、FRでは10速タイプを新開発。ロックアップ領域の拡大による伝達効率の向上とダイレクトな走りとともに、ギアレシオの拡大による低速域での加速性能向上や高速域でのエンジン回転数上昇を抑制することで走りと燃費性能の両立を実現。高速燃焼を実現したDynamic Force Engineと組み合わせることで、燃費と走りの両面で更に性能を向上させる。
自動運転開発
トヨタでは自動運転の開発において、短期的な目標として2020年に高速道路で、2020年代前半に一般道路での自動運転技術の導入を目指している。
トヨタは目標達成に向け、米国TRI(Toyota Research Institute)を中心にAIなどの開発を推進。2017年には、TRIで改良型試験車両を公表し、センシングの高精度化や、システムのドライバーとの運転切り替え等を研究している。 またトヨタは、自動運転技術の開発強化に向け、他社との連携を強化。2017年には、関連技術のベンチャー企業への投資ファンドの設立や、AI開発会社への追加出資を行い、将来的な人材確保や技術面での体制強化を図り、自動運転技術の早期実用化を目指す。 (新山)
<トヨタ広報資料、各種報道を基にFOURIN作成>
<FOURIN世界自動車技術調査月報(FOURIN社 転載許諾済み)>