<米国VS中国 自動車戦争>追い上げる中国の脅威 5年で売上高は1.9倍に
かつてはGM・フォード・クライスラーの3社で「ビッグ3」と呼ばれた米国の自動車メーカー。しかし、長きに渡って販売台数世界1位を誇っていたGMは経営破綻に陥り、クライスラーはフランス・フィアットの傘下に…。そんななか、台頭してきたのが中国の自動車メーカーだ。
成長度や利益率といった観点から、米国と中国の大手自動車メーカーを比較し、現状を明らかにする。
中国大手の売上高は5年間で1.9倍に拡大
オートモーティブ・ジョブズがまとめた「世界自動車メーカー売上高ランキング」にランクインした米国2社と中国2社の売上高の伸びを国ごとに算出し、比較した。中国(上海汽車、長安汽車)は5年間で1.9倍に増えた一方で、米国(GM、フォード・モーター)は1.1倍という結果になった。
売上高でも迫る中国 18年にはGMを上回る可能性も
中国自動車メーカーは、売上高の規模でも米国を追い上げている。
中国最大手の上海汽車は、12年の売上高が6.0兆円だったが、17年は14.5兆円に増加。フォード(17.6兆円)とGM(16.3兆円)との差を縮めた。
直近5年間の平均成長率をもとに18年の売上高を試算すると、上海汽車が16.7兆円でGMの15.8兆円を上回る。成長度だけではなく、売上高で中国が米国を超える日も近い。
海外ブランドの力が上海汽車の売り上げを牽引
上海汽車の成長には、海外自動車メーカーと設立した合弁会社が中国国内で販売している海外ブランドの売り上げ増加が寄与している。
中国は全世界の販売台数のうち3割以上を占める世界最大の自動車大国となっており、世界の自動車メーカーは中国でのシェア獲得に力を入れている。外資企業が中国で自動車を生産するには現地企業と合弁会社を設立しなければならないという規制があるため、海外メーカーが中国事業を強化すればするほど中国メーカーの事業も拡大する構図になっているのだ。
中国最大手の上海汽車は17年の販売台数が693万台で、5年前の449万台から1.5倍に増加した。17年の内訳をみてみると、VWとの合弁会社の「上海VW」の販売台数は206万台で、GMとの合弁会社「上海GM」は200万台。12年と比べると、上海VWの販売台数は1.6倍、上海GMは1.4倍に増加した。
自社の乗用車ブランドもこの5年間で2.6倍に増えたが、17年の販売台数は52万台と全体の7.5%に過ぎない。販売台数の伸びは、やはり欧米大手との合弁事業によるところが大きいと言える。
中国政府の動向が自動車メーカーを左右
中国では現在、中国企業と合弁会社を設立する際の外資企業の出資比率は50%以下に限定されているが、中国政府は18~22年にかけてこれを緩和する方針。利益は出資比率に応じて分配されるので、中国自動車メーカーは外資企業の出資比率が引き上がると収益が悪化する可能性がある。
現在の自動車業界は電気自動車や自動運転、コネクテッドカーなど新技術の発展が目覚ましい。生き残っていくためには研究開発の強化が欠かせないが、利益が減少すれば積極的な投資は難しくなる。
現在の中国自動車メーカーの成長は外資企業との合弁事業に支えられているが、合弁関係が解消されたり中国市場が停滞したりすると、たちまち成長は鈍化してしまう。自動車業界で強固な足場を築くには、自社ブランドを強化して世界市場に乗り出すことが欠かせない。
停滞する米国と外資企業に依存する中国。どちらもクリアすべき課題は山積している。
(オートモーティブ・ジョブズ編集部 山岡結央)