<Tesla>2017年通期決算は増収減益、量販車Model 3生産は計画台数に届かず
新興EV自動車メーカーであるTeslaは、赤字体質からの脱却を目指しているが、2017年通期決算も赤字計上となった。通期決算をみると、売上高は前年比68.0%増の117.6億ドルと増収であったものの、営業損失は前年の6.7億ドルから16.3億ドルとなり赤字幅が拡大した。
増収は、2017年7月のModel 3投入に加え、Model SやModel Xの販売増などが寄与。一方、量販車種となるModel 3の生産開始に伴う費用増などが営業損失拡大の背景にある。
営業損益を四半期別でみると、2016年7~9月期に8,562万ドルの黒字に転換したものの、同年10~12月期以降、再び赤字が続いている。2018年1~3月期は6.0億ドルの赤字であった。
ただTesla側は、2018年内に量販モデルModel 3(2017年発売)の拡販などで四半期別の営業利益が黒字化するとみている。有料化したSuperchargerの利用料による収益も見込んでいる。
一方、Model 3の生産状況は、当初計画に比べ大幅に遅れている。当初の生産計画(2017年7月)によると、2017年12月時点で5,000台/週、2018年に10,000台/週を想定していたが、2018年4月の実績は2,270台/週に留まった。2018年初時点で、1~3月期に2,500台/週、4~6月期に5,000台/週に引き上げる目標を公表していたが、部品調達を含め生産体制の構築が遅れている状況である。
更に2018年3月には米国カリフォルニア州で、Teslaの自動運転機能であるAutopilotの作動中に中央分離帯に衝突し、運転手が死亡する事故が発生した。事故を起こした車両はTesla Model X。Autopilotについては、2018年5月にも同機能作動中にTesla車両が停車中の警察車両に衝突するなど、事故が度々、報告されている。一部では機能の精度や広報・宣伝手法に問題があるとの指摘も出始めている。
2017年通期決算の概要・2018年見通し
▽2017年通期決算
Teslaの2017年通期決算をみると、売上高は前年比68.0%増の117.6億ドルと増収であったものの、営業損失は前年の6.7億ドルから16.3億ドルとなり赤字幅が拡大した。
(単位:百万ドル)
2015年 | 2016年 | 2017年 | ||
売上高 | 4,046.0 | 7,000.1 | 11,758.8 | |
うち自動車事業 | 3,741.0 |
6,350.8 |
9,641.3 | |
(自動車比率) |
92.5% |
90.7% | 82.0% | |
うち自動車リース | 309.4 | 761.8 | 1,106.5 | |
(リース比率) | 7.6% | 10.9% | 9.4% | |
売上総利益 | 923.5 | 1,599.3 | 2,222.5 | |
(利益率) | 22.8% | 22.8% | 18.9% | |
営業費用 | 1,640.1 | 2,266.6 | 3,854.6 | |
(対売上高比率) | 40.5% | 32.4% | 32.8% | |
R&D費 | 717.9 | 834.4 | 1,378.1 | |
(R&D費比率) | 17.7% | 11.9% | 11.7% | |
販管費 | 922.2 | 1,432.2 | 2,476.5 | |
営業損失 | ▼716.6 | ▼667.3 | ▼1,632.1 | |
純損失 | ▼888.7 | ▼674.9 | ▼1,961.4 |
(Tesla 広報資料より作成)
ー 増収は、2017年7月のModel 3投入に加え、Model SやModel Xの販売増などが寄与した。一方、Model 3の生産開始に伴う費用増などが営業損失拡大の背景にある。
ー 営業損益を四半期別でみると、2016年7~9月期に8,562万ドルの黒字に転換したものの、同年10~12月期以降、再び赤字が続いている状況。
▽2018年見通し
2018年2月、Teslaは2017年度通期決算発表で、2018年内に四半期別の営業利益が黒字化するとの見通しを公表した。
ー2017年に販売を開始した量販モデルModel 3の拡販などで営業利益が黒字に転じるとみている。有料化したSuperchargerによる収益も見込んでいる。ただ2018年1~3月期の営業損失は、前年同期の2.6億ドルから6.0億ドルに拡大している。
▽Model 3生産台数
米国 【生産】(単位:台) | |||||
年度 | PC | LT | 生産計 | ||
Model S | Model 3 | 計 | Model X | ||
2013年 | 24,093 | ー | 24,093 | ー | 24,093 |
2014年 | 34,481 | ー | 34,481 | ー | 34,481 |
2015年 | 50,080 | ー | 50,080 | 517 | 50,597 |
2016年 | 50,478 | ー | 50,478 | 33,444 | 83,922 |
2017年 | 51,161 | 2,685 | 53,846 | 47,181 | 101,027 |
(前年比) | (1.4%) | (ー) | (6.7%) | (41.1%) | (20.4%) |
米国 【販売】 (単位:台) | |||||
年度 | PC | LT | 販売計 | ||
Model S | Model 3 | 計 | Model X | ||
2013年 | 18,803 | ー | 18,803 | ー | 18,803 |
2014年 | 13,785 | ー | 13,785 | ー | 13,785 |
2015年 | 23,916 | ー | 23,916 | 180 | 24,096 |
2016年 | 26,167 | ー | 26,167 | 15,484 | 41,651 |
2017年 | 26,736 | 980 | 27,716 | 16,369 | 44,085 |
(前年比) | (2.2%) | (ー) | (5.9%) | (5.7%) | (5.8%) |
カナダ 【販売】(単位:台) | |||||
2013年 | ー |
ー |
ー | ー | ー |
2014年 | 752 | ー | 752 | ||
2015年 | 2,130 | ー | 2,130 | ||
2016年 | 1,490 | 1,007 | 2,497 | ||
2017年 | 1,583 | 1,593 | 3,176 | ||
(前年比) | (6.2%) | (58.2%) | (27.2%) |
Model 3の生産台数(計画)は、2018年2月時点で、1~3月期に2,500台/週、4~6月期に5,000台/週に引き上げる目標を公表。
ー 2018年4月の実績は2,270台/週であった。
ー 長期的には10,000台/週を目指している。
2017年7月に販売開始したModel 3の当初の生産計画によると、2017年12月時点で5,000台/週、2018年に10,000台/週を想定していた。
ー ただ2017年11月時点で、2018年3月に5,000台/週に引き下げた。
ー 2018年2月時点で、1~3月期に2,500台/週、4~6月期に5,000台/週まで引き下げており、生産体制の構築が遅れている状況である。
最近の主な動向
▽EVトラックTesla Semiの先行予約開始
2017年11月、Teslaは同月に発表した商用向けEVトラックTesla Semiの先行予約受け付けを開始した。
ー 販売価格は15万ドル~。一般的なディーゼルの商用トラックのエントリーレベル価格平均の10万ドルに比べ高額となる。ただTesla CEOであるMusk氏は、Tesla Semiは維持費などを含めた全体総額で20万ドルのコスト削減が可能との見方を示している。
ー 2019年頃、納車を開始する予定。
ー 2017年12月時点で、米国卸売企業Walmart、米国運輸サービス会社UPS、飲料メーカーPepsi、Budweiserなどの米国大手企業が購入を決めている。
▽ドライブ計画ツール提供開始
2018年1月、Tesla車オーナー以外の一般EVユーザーに対し、ウェブベースのドライブ計画ツールの提供を開始した。
ー ナビゲーションシステムに組み込まれており、目的地へのルート内にある給電ステーションや、それぞれの充電所要時間などを表示する。
ー Tesla車オーナーが利用できるサービスとは異なる簡易バージョンとなる。
▽ハッキング対策完了を発表
2018年2月、Teslaは、車両に搭載しているソフトウェアプラットフォームKubernetesのハッキング対策が完了したと発表した。
ー Kubernetesには、コンソールから外部アクセスし、Amazonが提供するクラウドサービスAmazon Web Services (AWS)に侵入、仮想通貨情報や、自動運転収集データなどが盗まれるというハッキング事故が発生していた。
ー Teslaはクラウドセキュリティ監視サービス会社RedLockから指摘を受け、Teslaモデルオーナーにパッチを配布した。
▽自動運転機能作動中に事故発生
2018年3月、米国カリフォルニア州で、Teslaの自動運転機能であるAutopilotの作動中に中央分離帯に衝突し、運転手が死亡する事故が発生した。事故を起こした車両はTesla Model X。
ー 2018年4月、事故原因についてTeslaは、運転手の不注意であったと説明した。
ー 自動運転機能Autopilotについては、問題点も指摘されている。2018年5月には同機能作動中に停車中の警察車両に衝突する事故が発生。同機能作動中に発生した事故は度々、報告されている。同機能が実用化レベルではなく、開発レベルにあるのではないか、という声も一部では出ている。
急速充電Supercharger設置数
2018年3月時点で、Superchargerのステーション数は世界で1,205ヵ所(9,300基)。
ー 2017年通年で338ヵ所、2018年1~3月期に77ヵ所増えた。Teslaは量販車Model 3の市場投入でSuperchargerの設置箇所が不足気味になっており、設備拡充を急いでいる状況。
ー 2018年6月時点で、Superchargerのステーション数は世界で1,255ヵ所(9,955基)。
Superchargerの利用料金は、1kWh当たり0.26ドルに設定。ガソリン価格に換算すると、1ガロン当たり2.73ドルを想定している。
FOURIN社世界自動車調査月報(FOURIN社転載許諾済み)