<Tesla>2017年通期決算は増収減益、量販車Model 3生産は計画台数に届かず

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新興EV自動車メーカーであるTeslaは、赤字体質からの脱却を目指しているが、2017年通期決算も赤字計上となった。通期決算をみると、売上高は前年比68.0%増の117.6億ドルと増収であったものの、営業損失は前年の6.7億ドルから16.3億ドルとなり赤字幅が拡大した。

2011年から2017年の売上高・損失率の推移を表したグラフ。売上高は年々増加し、2017年には前年比68.0%増の117.6億ドルと増収したものの、営業損失は16.3億ドルと赤字幅が拡大している

2011年から2017年の営業費用・対売上高R&D比率の推移を表したグラフ。2017年の営業費用3,854.6億ドル、R&D費比率11.7%増収は、2017年7月のModel 3投入に加え、Model SやModel Xの販売増などが寄与。一方、量販車種となるModel 3の生産開始に伴う費用増などが営業損失拡大の背景にある。

営業損益を四半期別でみると、201679月期に8,562万ドルの黒字に転換したものの、同年1012月期以降、再び赤字が続いている。201813月期は6.0億ドルの赤字であった。

ただTesla側は、2018年内に量販モデルModel 3(2017年発売)の拡販などで四半期別の営業利益が黒字化するとみている。有料化したSuperchargerの利用料による収益も見込んでいる。

一方、Model 3の生産状況は、当初計画に比べ大幅に遅れている。当初の生産計画(20177月)によると、201712月時点で5,000/週、2018年に10,000/週を想定していたが、20184月の実績は2,270/週に留まった。2018年初時点で、13月期に2,500/週、46月期に5,000/週に引き上げる目標を公表していたが、部品調達を含め生産体制の構築が遅れている状況である。

更に2018年3月には米国カリフォルニア州で、Teslaの自動運転機能であるAutopilotの作動中に中央分離帯に衝突し、運転手が死亡する事故が発生した。事故を起こした車両はTesla Model X。Autopilotについては、2018年5月にも同機能作動中にTesla車両が停車中の警察車両に衝突するなど、事故が度々、報告されている。一部では機能の精度や広報・宣伝手法に問題があるとの指摘も出始めている。

2017年通期決算の概要・2018年見通し

▽2017年通期決算

Tesla2017年通期決算をみると、売上高は前年比68.0%増の117.6億ドルと増収であったものの、営業損失は前年の6.7億ドルから16.3億ドルとなり赤字幅が拡大した。

(単位:百万ドル)

    2015年 2016年 2017年
売上高   4,046.0 7,000.1 11,758.8
        うち自動車事業 3,741.0

6,350.8

9,641.3
(自動車比率)

92.5%

90.7% 82.0%
うち自動車リース 309.4 761.8 1,106.5
(リース比率) 7.6% 10.9% 9.4%
売上総利益   923.5 1,599.3 2,222.5
  (利益率) 22.8% 22.8% 18.9%
営業費用   1,640.1 2,266.6 3,854.6
  (対売上高比率) 40.5% 32.4% 32.8%
R&D費   717.9 834.4 1,378.1
  (R&D費比率) 17.7% 11.9% 11.7%
販管費   922.2 1,432.2 2,476.5
営業損失    ▼716.6  ▼667.3  ▼1,632.1
純損失    ▼888.7  ▼674.9  ▼1,961.4

(Tesla 広報資料より作成)

ー 増収は、20177月のModel 3投入に加え、Model SModel Xの販売増などが寄与した。一方、Model 3の生産開始に伴う費用増などが営業損失拡大の背景にある。

ー 営業損益を四半期別でみると、201679月期に8,562万ドルの黒字に転換したものの、同年1012月期以降、再び赤字が続いている状況。

▽2018年見通し

2018年2月、Teslaは2017年度通期決算発表で、2018年内に四半期別の営業利益が黒字化するとの見通しを公表した。

2016年から2018年第1四半期までの四半期別売上高・損益率の推移を表すグラフ。2018年内に四半期別の営業利益が黒字化するとの見通しを公表した。

ー2017年に販売を開始した量販モデルModel 3の拡販などで営業利益が黒字に転じるとみている。有料化したSuperchargerによる収益も見込んでいる。ただ201813月期の営業損失は、前年同期の2.6億ドルから6.0億ドルに拡大している。

▽Model 3生産台数

米国 【生産】(単位:台)
 年度 PC LT 生産計
Model S  Model 3 Model X 
 2013年  24,093 24,093 24,093
2014年 34,481 34,481 34,481
 2015年  50,080 50,080 517 50,597
 2016年  50,478 50,478 33,444 83,922
 2017年  51,161 2,685 53,846 47,181 101,027
(前年比) (1.4%) (ー) (6.7%) (41.1%) (20.4%)
米国 【販売】 (単位:台) 
年度 PC LT 販売計
Model S  Model 3 Model X 
 2013年  18,803 18,803 18,803
 2014年  13,785 13,785 13,785
 2015年  23,916 23,916 180 24,096
 2016年  26,167 26,167 15,484 41,651
 2017年  26,736 980 27,716 16,369 44,085
(前年比) (2.2%) (ー) (5.9%) (5.7%) (5.8%)
カナダ 【販売】(単位:台)     
 2013年 

 2014年  752 752
 2015年  2,130 2,130
 2016年  1,490 1,007 2,497
 2017年  1,583 1,593 3,176
(前年比) (6.2%) (58.2%) (27.2%)


Model 3の生産台数(計画)は、2018年2月時点で、1~3月期に2,500台/週、4~6月期に5,000台/週に引き上げる目標を公表。

ー 2018年4月の実績は2,270台/週であった。

ー 長期的には10,000台/週を目指している。

2017年7月に販売開始したModel 3の当初の生産計画によると、2017年12月時点で5,000台/週、2018年に10,000台/週を想定していた。

ー ただ2017年11月時点で、2018年3月に5,000台/週に引き下げた。

ー 2018年2月時点で、1~3月期に2,500台/週、4~6月期に5,000台/週まで引き下げており、生産体制の構築が遅れている状況である。

最近の主な動向

▽EVトラックTesla Semiの先行予約開始                

2017年11月、Teslaは同月に発表した商用向けEVトラックTesla Semiの先行予約受け付けを開始した。

ー 販売価格は15万ドル~。一般的なディーゼルの商用トラックのエントリーレベル価格平均の10万ドルに比べ高額となる。ただTesla CEOであるMusk氏は、Tesla Semiは維持費などを含めた全体総額で20万ドルのコスト削減が可能との見方を示している。

ー 2019年頃、納車を開始する予定。

ー 2017年12月時点で、米国卸売企業Walmart、米国運輸サービス会社UPS、飲料メーカーPepsi、Budweiserなどの米国大手企業が購入を決めている。

2017年先行受け付けを始めたEVトラックTesla Semiのイメージ写真

▽ドライブ計画ツール提供開始           

2018年1月、Tesla車オーナー以外の一般EVユーザーに対し、ウェブベースのドライブ計画ツールの提供を開始した。

ー ナビゲーションシステムに組み込まれており、目的地へのルート内にある給電ステーションや、それぞれの充電所要時間などを表示する。

ー Tesla車オーナーが利用できるサービスとは異なる簡易バージョンとなる。

▽ハッキング対策完了を発表

2018年2月、Teslaは、車両に搭載しているソフトウェアプラットフォームKubernetesのハッキング対策が完了したと発表した。

ー Kubernetesには、コンソールから外部アクセスし、Amazonが提供するクラウドサービスAmazon Web Services (AWS)に侵入、仮想通貨情報や、自動運転収集データなどが盗まれるというハッキング事故が発生していた。

ー Teslaはクラウドセキュリティ監視サービス会社RedLockから指摘を受け、Teslaモデルオーナーにパッチを配布した。

▽自動運転機能作動中に事故発生

2018年3月、米国カリフォルニア州で、Teslaの自動運転機能であるAutopilotの作動中に中央分離帯に衝突し、運転手が死亡する事故が発生した。事故を起こした車両はTesla Model X。

ー 2018年4月、事故原因についてTeslaは、運転手の不注意であったと説明した。

ー 自動運転機能Autopilotについては、問題点も指摘されている。2018年5月には同機能作動中に停車中の警察車両に衝突する事故が発生。同機能作動中に発生した事故は度々、報告されている。同機能が実用化レベルではなく、開発レベルにあるのではないか、という声も一部では出ている。

急速充電Supercharger設置数

2018年3月時点で、Superchargerのステーション数は世界で1,205ヵ所(9,300基)。

ー 2017年通年で338ヵ所、2018年1~3月期に77ヵ所増えた。Teslaは量販車Model 3の市場投入でSuperchargerの設置箇所が不足気味になっており、設備拡充を急いでいる状況。

ー 2018年6月時点で、Superchargerのステーション数は世界で1,255ヵ所(9,955基)。

Superchargerの利用料金は、1kWh当たり0.26ドルに設定。ガソリン価格に換算すると、1ガロン当たり2.73ドルを想定している。

FOURIN社世界自動車調査月報(FOURIN社転載許諾済み)

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