【ホンダ】HEV/PHEV用で熱効率40%超を達成したエンジン戦略

2018.11.22
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ホンダは、HEVやPHEV、FCEVなどの電動車の開発/投入を強化する一方で、引き続きコンベ車(純エンジン車)の設定も継続している。このため、ホンダはエンジンの効率化に向けた開発も引き続き重要視している。

ホンダはエンジン開発において、コンベ車用、HEV/PHEV用エンジンを問わず熱効率の向上による燃費性能の改善と、高出力化による走りの良さを追求。筒内で高タンブル化による急速燃焼を重視している。

ホンダは、2017年の新型N-BOXの投入を機に、軽自動車用エンジンを刷新した。ピストンのロングストローク化や吸気ポートの形状変更による吸気流制御を行うことで筒内でのタンブル促進を図り、急速燃焼を実現。さらに燃焼室の小型化による冷却損失を低減した。

またホンダはBセグメント以上のグローバル戦略車のコンベ車用に1.0ℓ、1.5ℓ、2.0ℓの3機種のダウンサイズエンジンVTEC TURBOを設定し、各モデルの全面改良に合わせて搭載を進めている。VTEC TURBOでは3機種で同じ技術を採用して燃焼コンセプトを共通化。電動ウェイストゲートターボの高効率過給による出力確保とポンピングロスの低減をはじめ、急速燃焼を狙った高タンブル吸気ポート、吸排気でVTC(バルブタイミングコントロール)を導入。

またナトリウム封入バルブや水冷シリンダーヘッド等を用いた排ガスの効率的な冷却、タービンの耐熱性確保により、過給において空燃比のリッチ状態による温度低下を抑制、リーン状態での運転領域を広げて燃費性能を確保した。

またホンダはHEVやPHEVのエンジンについては、専用のエンジンを設定。2018年に、2モーターシステムSH i-MMD向けのエンジンを刷新した。ポンピングロス対策のアトキンソンサイクルを継続採用。加えてクールドEGRの活用やバルブでの熱対策等によるノッキング対策、排熱回収機による早期暖機、筒内での高タンブル技術等の導入により2.0ℓエンジンでは熱効率40.6%を実現した。

主要モデルにおける主な内燃機関ラインアップ

【ホンダ、主要モデルにおける主な内燃機関ラインアップ】ホンダはBセグメント以上のグローバル戦略車のコンベ車用に1.0ℓ、1.5ℓ、2.0ℓの3機種のダウンサイズエンジンVTEC TURBOを設定し、各モデルの全面改良に合わせて搭載を進めている。

軽自動車用660ccガソリンエンジンの主な採用技術

Nシリーズ向けエンジンの刷新

ホンダは2011年に投入した新世代軽自動車N-BOXを皮切りにNシリーズ向けの新軽自動車エンジンを搭載した。2017年には、第2世代N-BOXの投入を機に、Nシリーズ向けエンジンを刷新。2018年以降、他のNシリーズモデルについても全面改良を機に、新エンジンに切り替わる見通しである。

燃費性能と動力性能の両立を目指し、急速燃焼の導入を考慮したエンジン設計を実施。ボア×ストロークを先代エンジンの64.0×68.2mmから60.0×77.6mmに変更し、ナローボア×ロングストローク化した。

ナローボアにより燃焼室の表面積を小さくすることで冷却損失を低減。ロングストローク化により、ピストンスピードを高めて、筒内でのタンブル促進を実現。

【ホンダ新型軽自動車エンジンの燃焼室形状】新型エンジンは従来のエンジンより燃焼室の表面積を小さくすることで冷却損失を低減した。

バルブタイミングコントロール(VTC)に加えて、回転域に応じてバルブタイミングとリフト量を調整するホンダ独自のバルブ制御VTECを軽自動車で初めて採用。吸気効率を高めてロングストローク化しても出力性能を確保して燃費と動力性能を両立した。

直線的に筒内に空気を入れる吸気ポート形状を採用。合わせて燃焼室の形状を改良してタンブルを制御。また、ピストンヘッド部分に半球状のくぼみを設定して、タンブルを維持しながら点火プラグ近辺に混合気を集中させることで、急速燃焼を実現。

【ホンダ新型軽自動車エンジンの吸気ポートと筒内のタンブル流】新型エンジンでは、直線的に筒内に空気を入れる吸気ポート形状を採用。。吸気効率を高めて、燃費と動力性能を両立した。

エンジンバルブでは排気側バルブにナトリウム封入加工を採用。加えて、吸排気両方でバルブの傘部分に鏡面加工を行った。バルブを平滑化することで、吸気時に導入される新気との接触面積を減らすことで、高温のバルブから新気への熱伝達を低減しノッキング耐性を確保。自然吸気(NA)エンジンで12.0:1、ターボエンジンで9.8:1の高圧縮比化を実現して効率を向上。

ターボでは、電動ウェイストゲートバルブを採用。過給圧を効率的に制御し、レスポンスの向上を図った。

ダウンサイズターボガソリンエンジンVTEC TURBOの主な採用技術

概要

ホンダはダウンサイズターボエンジンとしてVTEC TURBOを展開。1.0ℓ直3、1.5ℓ直4、2.0ℓ直4の3機種を設定し、2013年以降、主力モデルの全面改良を機に、各クラスに合わせたダウンサイズエンジンを設定している。

1.5ℓでは、CセグメントとDセグメントの幅広い範囲をカバーするダウンサイズエンジンとして採用が拡大。Civicをはじめ、2017年に米国で全面改良となったAccordにも採用された。

1.0ℓは、欧州向けCivicに2017年から設定されており、2018年以降、他のCセグメントやBセグメントモデルにも展開される可能性がある。

2.0ℓは、V6クラスのDセグメント車用ダウンサイズエンジンとして設定。また、高い動力性能を活かしてCivic Type-R向けにも採用。

採用技術

VTEC TURBOは、低燃費・高出力化に向けて3機種で同じ技術を採用し、燃焼コンセプト共通化している。ターボによる出力向上とポンピングロスの低減。電動ウェイストゲートによりターボラグを低減してドライバビリティを向上。

吸排気バルブタイミングコントロール(VTC)の搭載や高タンブル吸気ポート、マルチホール直噴インジェクターによる筒内混合促進技術を採用し急速燃焼の導入を図った。

▽急速燃焼技術

直噴でのPNの排出対策や燃費と出力の両立を目的とした急速燃焼の導入に向けて筒内タンブルを促進。吸気ポートの角度を寝かせて、直線的に筒内へ空気を送り込めるようにした。加えて、吸気ポートの先端にエッジを設けることで、筒内での逆タンブルを防止して効率的にタンブル流を発生させる。

ピストンヘッドの形状を凹形状とすることで、タンブル流を保持しながら混合気を燃焼室の最適な場所に誘導する。

ボア×ストロークを1.5ℓでは73×89.4mm、1.0ℓでは73×78.7mmとしており、燃費性能を重視するためのタンブル促進を狙いロングストローク化した。一方2.0ℓではより高出力化を狙い86×85.9mmのレイアウトを採用し、ピックアップ特性を重視している。

▽過給技術

VTEC TURBOでは、電動ウェイストゲートバルブを搭載するシングルスクロールターボチャージャーを採用。高負荷領域の燃費改善に向け、水冷式シリンダーヘッドと一体化したエキゾーストマニホールド、排気側のナトリウム封入バルブ等により効率的な排ガス冷却を実現。また、タービンハウジングに高耐熱のステンレス鋳鋼を採用し、空燃比のリッチ化(燃料が濃い状態)による温度低下への依存度を低減した。

低負荷時の燃費改善として、電動ウェイストゲート活用。ウェイストゲートの制御は吸気スロットルと協調制御を行うことで、スロットル開度に応じたトルクを創出することが可能である。

タービンについては、クラス毎にスペックを調整。1.0ℓや1.5ℓは低速からの立ち上がり特性とレスポンスを重視し小型のタービンを採用。タービン径を、1.0ℓではφ31(mm)、1.5ℓではφ37(mm)とした。2.0ℓでは高出力化に主眼を置いて大容量化に対応しφ47(mm)のタービンを採用。

▽フリクション軽減技術

フリクション軽減に向けて、ピストンスカートのコーティングやロッカーアーム等のリフターでのローラーを活用。

1.0ℓ仕様では小型車への採用を想定し、さらなるフリクション低減に向けて可変容量オイルポンプや油中タイミングベルト、細軸クランクシャフト等を独自に採用する。

【2.0L VTEC TURBOの採用技術】2.0L VTEC TURBOで採用されているターボチャージャーとナトリウム封入バルブのイラスト

HEV/PHEV向けガソリンエンジンの主な技術

概要

ホンダはHEVやPHEVにおいて、燃費性能を追求するため専用設計のエンジンを採用。アトキンソンサイクルによるポンピングロス低減や高圧縮比化による熱効率を追求する。

2モーターHEV向け2.0ℓ

ホンダは2018年に北米で発売した新型Accord HEV向けにエンジンを刷新。先代Accord HEVに続きアトキンソンサイクルを採用。また熱マネジメントや低フリクション化を徹底し、エンジン単体で熱効率40.6%を実現した。

熱効率の向上を目指して、圧縮比を先代の13.0:1から13.5:1に変更。高圧縮比化によるノッキング対策としてクールドEGRの量を先代17%から21%に増加。また吸気バルブでの鏡面加工や排気バルブでのナトリウム封入により冷却性能の向上。EGRの高効率化に向け、バルブ内の経路を改良。ガス通路の曲がりを緩やかにして圧損を軽減。

急速燃焼に向け、シリンダー内への吸気の入射角を、従来よりも鋭角にすることで、タンブル筒内でのタンブルを促進した。コールドスタートからの早期暖機を目的に、先代に続き排熱回収機を搭載した。

フリクション低減では、シリンダー内のスリーブ表面の平滑面を増やした。また、バランスシャフトをオイルパン内に配置し、オイルの撹拌抵抗を低減した。

2モーターPHEV向け1.5ℓ

ホンダは、2018年6月に日本市場に投入(北米向けは2017年末)したClarity PHEV向けに新開発のエンジンを搭載。Accordに搭載されている2モーターシステムをベースにPHEV化。エンジンは1.5ℓにダウンサイズした。

従来と同様にアトキンソンサイクルによるポンピングロスを低減。1.5ℓのFit HEV向けエンジンと比べて、燃焼室をコンパクト化して冷却損失を低減。高タンブルのインテークポートの採用による急速燃焼の促進や、鏡面バルブやナトリウム封入バルブによるノッキング対策を行った。

熱効率はFit HEV用エンジンの39.5%に対して40.5%を実現。

FOURIN世界自動車技術調査月報
(FOURIN社転載許諾済み)

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