<Amazon>新興EVメーカーや自動運転スタートアップへの出資・買収を通じて、物流の無人化/効率化を目指す

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Eコマース大手Amazon(米国)は、自動車分野への参入に積極姿勢を見せている。2019年2月以降、新興EVメーカーや自動運転スタートアップへの出資や買収を進めており、次世代自動車を活用した物流システムの効率化を視野に入れているとみられる。

AmazonはEVメーカーRivianに配送用EVを10万台発注することを発表した(2019年9月)。Amazonが同日発表した、Paris協定の目標を10年前倒しで達成するコミットメントの一環である。配送用EVはAmazonとRivianが共同で開発する。Rivianの共通プラットフォームSkateboardを採用し、物流事業向けに各部を最適化した設計となっている。同車両による配送は2021年から開始し、2030年までに10万台すべてを稼働させる計画である。

2020年6月、Amazonは自動運転スタートアップZooxを買収。Zooxは他の多くのスタートアップと異なり、ロボタクシー車両を独自に開発する方針を掲げている。2018年12月にはCPUC(California州公益事業委員会)が認可する自動運転旅客輸送サービスのパイロットプログラムの許可を他社に先駆けて取得しており、自動運転技術の高さが窺える。

一方で、2020年4月にはTeslaに起こされていた訴訟で多額の和解金を支払うことが決まるなど、財政面で困窮していたとみられる。

またAmazonはテクノロジー企業として、配達用の自動走行ロボットScoutの独自開発も行っている。6輪の車輪と小型ボックスを備えたロボットが歩道を自律的に走行し、荷物を顧客に届ける。既に一部の地域で試験運用を開始している。

Amazon、自動車分野への参入動向

▽自動運転スタートアップZooxを買収

Zooxno独自開発車両のイメージデザイン2020年6月、自動運転スタートアップZooxの買収を正式発表。

  • 買収額は一部報道によると12億ドル。直近の企業評価額は27億ドルであった。
  • 2020年4月、ZooxはTeslaに起こされていた訴訟に関して、多額の和解金を支払った模様。
  • Teslaは2019年3月、独自開発した物流ソフトウェアプラットフォームWARPに関する機密情報を持ち出した複数の元Tesla従業員がZooxに入社したとして、Zooxおよび元従業員を相手に訴訟を起こしていた。

▽Rivianへ出資、配送用EVを10万台発注

2019年2月、新興EVメーカーのRivianはAmazonが主導する投資ラウンドで7億ドルを調達したと発表。

2019年9 月、AmazonはRivianに配送用EVバンを10万台発注することを発表した。

  • Amazon が同日発表した気候変動に関するコミットメント「The Climate Pledge」の一環。同コミットメントでは、Paris協定の目標を 10 年前倒しし2040年までに事業全体でゼロカーボンとすること、事業に必要な電力を2025年までに100%再生可能エネルギーで供給することといった目標が掲げられている。
  • Rivianはアフターサービスまで手がける。Amazon以外には同車両を提供しない。
  • Amazonは10万台を調達するにあたり、4.4億ドルを投資。
  • EVバンによる配送は2021年から開始し、2022年に1万台、2030年までに10万台すべてを稼働させる計画。


Rivianは新型コロナウイルスパンデミックの影響でIllinois州Normalの工場を一時閉鎖していたが、2020年5月に稼働再開。Amazonが発表した声明によれば、EV配送バンの生産スケジュールに変更はない。ピックアップのR1TとSUVのR1Sの生産開始は2021年に延期。

  • 他社からの調達車両と合わせると、配送大手UPSの保有台数(13万台)に匹敵。

Teslaは2020年7月、元Tesla従業員が機密情報を持ち出してRivianに入社したとしてRivianおよび元従業員を提訴。Rivianは疑惑を否定している。

▽自動運転スタートアップAuroraへ出資

自動運転スタートアップAurora Innovation(以下Aurora)は2019年2月、Amazon等から5.3億ドル超を調達したことを発表。

  • ベンチャーキャピタルSequoia Capitalを通じて行われた投資ラウンドの一環。Auroraの評価額は25億ドル以上に上昇。
  • Amazonにとっては自社Eコマース事業への自動運転車の活用がねらいとみられる。
  • Auroraは事業規模拡大、物流ノウハウ等での恩恵を受ける。
  • Auroraは現代自、VW、Bytonとも提携している。

▽CESに自動車部門として出展

2020年1月のCES 2020には、「Amazon Automotive」としてブース出展。複数のOEM・サプライヤーとともに、将来のコネクティビティやモビリティに向けた取り組みを公開した。

  • Amazonは車載向けAI音声アシスタントAlexa Autoおよび音声アシスタントデバイスEcho Autoを開発している。その他、Amazon Web Services(AWS)を用いたソリューション等を提案。
  • Alexa Autoを搭載したRivian車両やLamborghini Huracán EVO RWDなどを展示しアピールした。

Zoox、自動運転技術開発動向

▽ロボタクシー市場向けに独自車両開発を計画

他の自動運転スタートアップの多くがOEMと提携するなどして既存車両に自動運転技術を搭載することから始めるのに対して、Zooxはロボタクシー車両を独自開発し、配車サービスまで手がける方針を掲げた。

  • 独自開発の車両は公道走行の許可が得られないため、トヨタHighlanderに自動運転システムを搭載し、San Franciscoの金融街などで試験走行を実施。
  • 2020年中に公道での完全自動運転を実現する計画であった。

2019年6月に開催されたAmazonのAIカンファレンスre:MARSにおいて、ZooxのAicha Evans CEOが基調講演に登壇し、同社の車両設計の一部について説明した。

  • RGBカメラとLiDARを使用し、各ビジョンセンサーは270°の視野を持つ。1つが故障しても360°の視野を維持できる。
  • 四輪操舵で、高精度の軌跡追従が可能。
  • デュアルバッテリ、デュアルパワートレイン搭載。

▽California州自動運転実績レポートで2019年7位

California州DMV(車両管理局)が毎年発行する自動運転実験の走行実績レポートにおいて、Zooxは2019年に7位となった。

  • レポート(Disengagement Report)は、自動走行中に安全確保のための介入(システムによる手動運転への切り替え、セーフティドライバーによる介入操作)が発生した頻度を評価するもの。
  • 2019年のZoox実績は、58台の車両が延べ67,015マイル走行し、介入は42回発生した。1,000マイルあたり0.52回で、California州で自動運転車の公道走行許可を得ている64社中7位(1位はBaiduで同0.055回、Auroraは同10.5回で15位)。

▽California州で初の旅客輸送許可を取得

2018年12月、CPUC(California州公益事業委員会)が認可する自動運転旅客輸送サービスのパイロットプログラムの許可を取得。

  • CPUCによる同許可を取得したのはZooxが初めて。2020年7月現在、他にAutoX、Pony.ai、Waymo、Aurora、Cruise、Voyageが取得している。許可は3年間有効(Zooxは2021年12月まで)。
  • 許可されたパイロットプログラムでは、セーフティドライバーが同乗したうえで旅客輸送を実施。旅客への課金はしない。

Amazon/Rivian、配送用EVバンを共同開発

Amazon/Rivian、配送用EVバンのイメージデザインAmazonはRivianと配送用EVバンを共同開発している。

  • 配送用途の車両として随所に工夫がなされている。
  • Amazon用車両は他社向けには提供しない。
  • 物流事業におけるフリート効率向上も視野に入れる。

製造するバンのサイズは3種類。さまざまな配送ルートに対応するため、バッテリ容量も複数用意。

Rivianのすべての車両はSkateboardと呼ばれる共通プラットフォームを採用しており、Rivianが2021年から生産予定のR1T、R1Sと同じバッテリやパワートレインをAmazon用車両にも採用する。

  • Skateboardは、床部にバッテリーを搭載するほか、各ホイール用のモーター、fブレーキ、サスペンション、冷却システムを備える。
  • 180kWhのバッテリーパック(Teslaの約2倍の容量)を搭載する。航続距離約724km(450マイル)を達成可能。

Rivian Skateboardのイメージデザイン駆動方式はAWDを基本とし、走行環境や気象条件に柔軟に対応するため一部はFFとする。

安全支援システムとして、自動緊急ブレーキ、車線維持支援、歩行者向け警告、標識認識、ドライバーモニタリングを標準装備。

デジタルクラスターおよびセンターディスプレイを装備し、いずれもAmazonの物流管理システムに接続され、配送ルートなどがシステムから車両に配信される。また、AI音声アシスタントAlexaを統合することにより、ハンズフリーシステムを実現。車両設計のあらゆる側面で効率性に焦点を合わせる。

  • 車室内の空調や乗降を繰り返すドライバーのための人間工学に基づいた運転席、パワートレイン設計などそれぞれの面で、時間およびエネルギー最適化を行う。
     

バンパーは損傷した際に容易に交換できる設計となっている。Amazon用車両は全世界で導入するため、左ハンドル仕様と右ハンドル仕様の両方を設定する考え。

Amazon、配達用自動走行ロボットScout

Amazonは配達用の自動走行ロボットScoutを開発している。

  • 小型のクーラーボックスほどの大きさで、6輪の車輪を備える。住宅街の障害物(ごみ箱、ベンチ、小動物など)を回避しながら、歩道を自律的に走行する。速度は人間の歩行速度と同程度。周囲の人を危険にさらしたりストレスを感じさせたりしないよう、適切な行動モデル化がなされている。
  • 2019年1月、試験運用を米国Washington州Snohomishで開始。同8月にはCalifornia州Irvineでも試験運用を開始した。
  • 試験運用では、対象エリアに少数台を導入し、平日日中のエリア内の配達の一部をScoutが担う。Scoutにはスタッフが随行する。

スタッフは、配達にあたってのサポートだけでなく、顧客がScoutにどのような反応をするかについても観察し記録する。

  • Scoutの開発にあたっては、Seattleに専用の研究開発ラボを設置。ハードウェア設計からデバイス操作のためのバックエンド技術の開発まで行う。社内エンジニアらは、構築したハードウェアプロトタイプやソースコードをリアルタイムに検証できる。

配達ロボット開発においてはAmazonは後発にあたるため、開発のスピードアップが重要。

  • テストは雨天や吹雪などさまざまな天候で行われた。また、走行する歩道の高詳細3D地図を作成している。
  • 車体のデザインにおいては、明るい青色、柔らかい曲線、ゴム製のタイヤなどにより、ロボットが脅威を感じさせることなく、背景に溶け込むような工業デザインを意識している。

階段などの段差を乗り越えられない点や規制面での課題がある。

Amazon ScoutのイメージデザインFOURIN世界自動車技術調査月報
(FOURIN社転載許諾済み)

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