VWの自動運転技術開発戦略ロードマップ
2017.11.14VW/Audi、自動運転開発ロードマップ
VWグループ内ではAudiが自動運転開発を主導している。NVIDIAをはじめとする米国系IT企業などと連携して開発を進め、2017年末に限定的なレベル3(車速60km/h以下の高速道路での渋滞アシストと自動駐車/車庫入れ)を実現したA8を発売予定である。
2020~2021年には高速道路の制限速度内で車線変更や追い越しも行えるレベル4を実現する予定である。 これとは別に、VWブランドはレベル5自動運転車の開発を進めており、自動運転コンセプトカーSedricを2017年3月に公開した。2021年までに一部の都市の限定区域内でレベル5自動運転によるシャトルサービスを開始する予定である。
自動運転開発の鍵となる人工知能やデジタル化などの先端技術はドイツMünchenのData LabやBerlinのMOIAなどが中心になって開発。また、グループ外のIT企業やスタートアップ企業とも積極的に連携し、新しいモビリティサービスの研究を進めている。
【VW/Audi、自動運転開発ロードマップ】
注)自動運転レベルはSAE基準。一部FOURIN推定。
Audiがレベル3/4開発主導、VWはシャトルバス開発に注力
▽VWグループの自動運転開発戦略
・VWグループ内で自動運転開発を主導しているのはAudiである。NVIDIAやMobileye、Continental、Delphi、HEREなどのサプライヤーの技術を活用し、2017年末に限定的なレベル3(車速60km/h以下の高速道路での渋滞アシストと自動駐車/車庫入れ機能)搭載車であるA8を発売予定。 2020~2021年に高速道路の制限速度内で車線変更や追い越しも可能な限定的なレベル4搭載車を発売予定であり、自動運転開発を段階的に着実に進めている。
・一方、VWブランドはAudiとは異なるアプローチをとる。2017年9月のIAA 2017では、レベル5自動運転が可能なコンセプトカーSedricを公開し、2021年までに一部の都市で運用を開始すると発表した。 レベル3やレベル4の自動運転ではAudiの技術を流用しつつ、VWブランドとしてはレベル5による新しいモビリティサービスの開発と実用化を優先する方針と見られる。
▼VWは2016年12月にモビリティサービスブランドMOIAを立ち上げ、欧州の複数都市でシャトルバスサービスの試験を開始(一部は開始を予定)している。
▼特にドイツHamburgでは、同市の高架鉄道と連携してシャトルバスサービスを2021年以降に開始すると予告しており、Sedricはこうしたシャトルバルのベースになると見られる。
▽VWの人工知能開発組織および開発提携動向
・VWは2014年に、ドイツMünchenにITやビッグデータ、人工知能などの先端技術開発に特化した専門組織Data Labを設立。
・また、2016年にドイツBerlinにMOIAを設立。人工知能やIT技術を持つスタートアップと連携し、その技術を取り込む。
・2017年8月、VWはドイツDresdenで、スタートアップ支援プログラムを2018年春に開始すると発表した。
▼駐車スペースナビ、充電サービス、車両データ、カーシェアリング、環境に良いロジスティクスなどのチームに分かれ、スタートアップを発掘・育成し、最短200日で製品化につなげる。・2016年5月、世界有数の人工知能研究機関であるドイツ人工知能研究センター(DFKI)に出資すると発表した。
▼DFKIには世界60ヵ国から800人近い研究者が集まる。・2017年6月、NVIDIAと戦略的提携で合意。
▼デジタル化の鍵を握る技術として人工知能開発を強化する。・2017年9月、IBMとデジタルモビリティサービスの開発で合意。
▼VWのWEデジタルエコシステムを共同開発する。IBMの人工知能Watsonを活用し、ドライバーに最寄りの利用可能なサービスを適切なタイミングで伝えることを目指す。
VW、主な自動運転技術搭載車/コンセプトカー
▽Audi A8 (限定的レベル3搭載車)
・2017年7月にAudiが発表したフラッグシップモデルA8は市販モデルとして初のレベル3自動運転機能(SAE基準)を搭載。
▼高速道路での車速60km/h以下の走行時と自宅車庫や路上縦列での駐車時にのみ機能する限定的レベル3である。
▼人工知能技術を応用した渋滞アシスト(AI Traffic Jam Pilot)により、ステアリング、アクスル、ブレーキ操作を自動化(車速60km/h以下で同一車線内のみ)。また、スマートフォンなどの遠隔操作による縦列駐車(AI Parking Pilot)、車庫入れ(AI Garage Pilot)も実現。
▼NVIDIAのモバイルGPUプロセッサーTegra K1 SoCとMobileyeの画像認識プロセッサーEyeQ3を組み込んだ中央演算処理装置zFASをDelphiが供給。
▼各国ごとに自動運転関連の法規制状況が異なるため、Audiはこれらの機能が技術的には可能であるとしつつも、製品化については国ごとに異なる対応をとる。
▽Audi Elaine (レベル4対応コンセプトカー)
・2017年9月のIAA 2017でAudiは自動運転レベル4対応のコンセプトカーElaineを発表。
▼Audi e-tron Sportback Conceptをベースに開発したSUV。
▼2020~2021年に発売予定の自動運転レベル4搭載車のベースになるモデルと見られる。NVIDIAの次世代GPUプロセッサーXavierを搭載する。
▼クラウド技術とCar-to-X通信技術を活用し、他の車と情報を共有することで、ドライバーの運転負担を軽減し、より安全、快適、効率的なドライビングを可能にする。
▽Audi Aicon (レベル5対応コンセプトカー)
・Audiは、IAA 2017でElaineと同時に、自動運転レベル5対応のコンセプトカーAiconを発表。
▼Aiconは航続距離700~800kmを想定するスポーツクーペタイプのコンセプトEVで、乗員が長距離ドライブ中に運転とは全く別の作業を行えるコンセプトとして提案。
▽VW、Sedric (レベル5対応コンセプトカー)
・VWはIAAで自動運転レベル5対応のコンセプトカーSedricを発表。単なる車両製造会社からモビリティサービス提供会社へと変貌をとげるVWグループを象徴するモデルとして提案。
▼2017年3月のGenèveで初公開。4月に上海でも公開。
▼自動運転レベル5、電動化、デジタルネットワーク化を統合し、持続可能性と安全性を両立するコンセプトモデル。
▼都市圏でのシェアリングモビリティを想定したモデルであると同時に、他のVWグループブランドの自動運転・モビリティ戦略でも共有することを前提に開発している。
(VW広報資料、各種報道を基にFOURIN作成)
<FOURIN世界自動車技術調査月報(FOURIN社 転載許諾済み)>