【米国系自動車メーカー】最新の自動運転/ADAS開発・搭載動向

2018.11.21
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米国系乗用車メーカーを対象に、各社の先進運転支援システム(ADAS)の搭載動向をまとめた。

米国では自動緊急ブレーキ(AEB)が2022年までに事実上標準化されることになっており(2016年にほとんどの自動車メーカーが合意)、これを見据えてAEBを標準設定にするモデルが増えている。

また、リアビューカメラは2018モデルイヤー以降で標準搭載が義務化されており、各社対応済みである。これら以外のADAS機能は標準設定ではなく、中~上級モデルにオプションまたは追加パッケージとして設定されている場合が多い。

自動車メーカーによって、注力する安全機能や展開状況は若干異なる。GMは、アダプティブクルーズコントロール(ACC)、車線逸脱警告(LDW)/車線維持支援(LKA)などを含むADAS機能Super Cruise(SAE基準レベル2相当)を、2020年までに上級ブランドCadillacの全モデルに展開する計画を2018年6月に発表した。

2018 Cadillac CT6からSuper Cruiseの搭載を開始。LDW/LKAは車速約60km/h以上で作動する設定になっており、主として高速道路での使用を想定している。GM最量販モデルのピックアップトラックChevrolet Silveradoでは、前方/後方緊急ブレーキ、後方駐車支援、LDW/LKAをオプションで設定できる。

また、GMモデルでオプション設定可能な機能としては、以上の他に夜間視認性向上システムやティーンドライバー向けのセーフティシステムなどがある。

Fordは、2018年3月に複数のADAS機能を統合したCo-Pilot360を発表した。2019年から、乗用車・SUV・ピックアップトラックなど全モデル・全グレードに標準搭載する。Co-Pilot360には、AEB、警告付き死角情報システム、LKA付きACC、自動ハイビーム、リアビューカメラが含まれる。

FordのACCはブレーキペダルの操作なしで完全停止し、再発進できるACC with Stop&Goである。その他、死角検知システム(BLIS)、駐車支援システム、歩行者検知、緊急衝突回避アシストなどもオプションで設定できる。最量販モデルFord F-150には、ACC with Stop&Go、駐車支援システム、BLIS、LDW/LKA、歩行者検知付き前方衝突回避システムを設定できる。

FCAは、ブランド別に自動運転レベル2~3のシステム搭載を計画中で、早ければ2021年にJeepの主力モデルにレベル3のシステム搭載を予定している。FCAには通常のACCとStop&Go機能付きのACC+がある。Chrysler Pacificaや高級ブランドAlfa Romeo/MaseratiにはこのACC+のほか、前方/後方駐車支援、死角検知システムなどの設定も可能である。

設立当初から自動運転による電気自動車を目指すTeslaは、レベル2に相当するEnhanced Autopilotを展開。同パッケージにはStop&Go付きACC、LKA、車線変更、高速道路の乗り換えなどが含まれる。

米国系乗用車メーカー、最近の主な自動運転/ADASの開発・搭載動向

GM

 ▽自動運転・ADASへの取り組み

GMは自動運転開発スタートアップCruiseを2016年3月に買収し、その社名をGM Cruise LLCに変更。以来、GMブランドへの自動運転システム開発を一任している。

Cruiseは、部分的な自動運転技術Super Cruise(SAE基準でレベル2に相当)を開発。2017年9月以降生産の2018 Cadillac CT6にブランド初搭載している。

GMは、2020年には全てのCadillacブランドにSuper Cruiseを設定する計画を2018年6月に発表した。Super Cruiseは、車線逸脱警告/車線維持支援、アダプティブクルーズコントロール、テレマティクスサービスOnStarを含む。

Cruiseは、2013年10月に米国California州San Franciscoで設立された。2015年6月にCalifornia州運輸局(DMV)より自動運転技術の試験走行許可証を獲得している。

その他GMは、自動運転関連技術をもつ関連企業・スタートアップなどとの提携や買収、フリート企業との提携を軸に自動運転モビリティ事業拡大を進めている。2017年12月には、モビリティ事業を収益構造に加えることを発表した。米国・中国でシェアビジネスとして展開する計画である。

2020年代の早い時期に、自動運転システム搭載の電気自動車(EV)シェアサービスを導入予定。

▽自動運転の開発・試験状況

GMは、2018年中にライドシェア用自動運転車両の実証実験を開始する計画である。

2017年8月に、California州San Francisco市内に住むGM Cruise社員向けにAVライドサービスCruise Anywhere(β版)の試験運行を開始した。米国大手配車サービス企業Lyftと自動運転車両のライドシェアの実証実験で提携(2017年2月)。

2018年中にフリートの試験運用を開始し、2019年にはレベル5のフリートタクシーを導入予定である。また、GMはLyftに対し、2021年以降にChevrolet Bolt AVの提供も予定している。

2018年3月、GMは量産型の自動運転車両Cruise AVの生産開始を発表。米国Michigan州Brownstown工場でルーフモジュールを、それ以外はOrion工場で生産する。それに伴い、両工場 に総額1億ドルを投じて設備を最適化するとした。Cruise AVの投入は2019年中を目処としている。

2018年1月には第4世代のCruise AVが公開された。2019年に2,600台を、高精度地図整備済みの地域で投入する予定。ルーフモジュールの生産は既に開始されており、その他の生産も2019年には開始される予定。

Cruise AVには、ペダル、ステアリングホイールが装備されない。GMは2018年1月、レベル5想定のCruise AVの走行許可を米国運輸省(DOT)に申請している。その他GMは、2017年10月にLiDAR開発会社であるStrobeを買収し、GM Cruiseのチームに加えている。

▽アダプティブクルーズコントロール(ACC)

GMのACCは、車速設定と先行車との車間距離設定(Far/ Medium/Nearの3段階)ができる。車間距離設定は、高速では広め・低速では狭めなど、走行速度によって距離が自動で調節される。

ACCは、フロントカメラとフロントバンパー中央にあるレーダーセンサーを使用し、前方の先行車の有無を検知する。ACCは車速25km/h(16mph)以下では使用不可。

ACCモードで走行中の予期せぬ先行車の割り込みや追い越し、障害物の出現など、システムが危険と判断した場合は、赤いランプの点滅や8回の警告発信音で危険をドライバーに知らせる。

GMブランドでは、Sparkなど一部の廉価モデルには非搭載。それ以外はオプションとしてACCの設定ができる。高級ブランドCadillacの上級モデルでは、Driver Assist Packageに含まれている。ACCは、2017年9月から搭載が開始されたSuper Cruiseの機能の一部に含まれている。

▽車線逸脱警報/車線維持支援(LDW/LKA)

GMの車線逸脱警告(LDW)は車線維持支援(LKA)とともに搭載されていることが多い。車種によるが、ステータス情報はインパネ中央の車速メーター内側(Driver Information Center)に表示される。

LDWはルームミラー裏のフロントガラス上部周辺に設置されているフロントカメラを通して検知を行う。システム作動状態で、車速56km/h(35mph)以上での走行中に、方向指示器が作動していないときにシート振動や警告音などでドライバーに警告する。

LKAはLDWと同じフロントカメラがベース。方向指示器の非作動時に、車線に接近した際に自動で軌道修正を行い車線中央まで車両を戻す。車速60~180km/h(37~112mph)で作動する。

LDWは全モデルでオプション追加できる。LKAはSparkなどの一部廉価モデルは非設定。それ以外は、オプション追加、または上級グレードに標準搭載されている。

▽自動緊急ブレーキ(AEB)

GMブランドの自動緊急ブレーキ(AEB)には、前方緊急自動ブレーキ(Forward Automatic Breaking、FAB)と後方緊急自動ブレーキ(Rear Automatic Breaking、RAB)がある。

前方FABのセンサーはモデルにより異なる。フロントカメラまたは中長距離レーダーのみのモデル、両者を組み合わせたモデル、さらに短距離レーダーまで組み合わせたモデルもある。作動範囲車速は8~80km/h(5~50mph)。最大60m先までの先行車を検知する。

ChevroletブランドではTraverseなどの中級モデル以上でオプション装備。Cadillacブランドでは上級グレードに標準装備。FABには、前方衝突アラート(FCA)システムがつく。

後方緊急ブレーキRABは、後退時、Rear Park Assist用の超音波センサーとリアバンパーに内蔵されている短距離レーダー(1または2個)で検知・作動する。作動範囲は、車速0.5~20mph。

前方歩行者用緊急ブレーキはACC/LDW/LKAと同じフロントカメラを使用して歩行者・自転車を検知する。一部廉価モデルを除き上級グレードにオプションで設定が可能。後方歩行者用アラートは、2019 Cadillac CT6から搭載される。

より低速のAEBであるLow Speed Forward Automatic Brakingも2019 Traverseに設定が可能。車速8~60km/h(5~37mph)で作動する。

▽その他の自動運転・ADAS

リアビューカメラは全モデル・全グレード標準装備。Cadillac XT5(2019年モデル)は、Rear Park Assistを標準装備している。

リアバンパー搭載のセンサーを使用し、障害物の検知や接近警告を音声・画面表示・シート振動などでドライバーに知らせ、後方駐車をサポートする。車速8km/h(5mph)以下でリバース時に作動する。

その他GMブランドのセーフティオプションには、前方衝突警告(Forward Collision Alert)、Rear Cross Traffic Alert、Teen Driverシステム、Enhanced Night Visionなどがある。

Rear Cross Traffic Alertは、後退時の進行方向に車などの障害物を検知し、ドライバーに警告音・シート振動・画面表示などで危険を知らせるシステム。

Enhanced Night Visionは、フロントグリル上方に設置された熱感知の赤外線カメラで夜間でも人や動物などを検知する。Enhanced Night Visionは、Cadillac CT6(2016年モデル~)にオプション装備可能(上級トリムは標準装備)。

(参考)GMブランド、主なモデルのベース価格

Chevrolet
Sedan
Hatchback
Spark 13,050~
Sonic 15,295~
Cruze 16,975~
Malibu 21,680~
Impala 27,895~
SUV
Crossover
Trax 21,000~
Equinox 23,580~
Traverse 29,930~
Tahoe 47,500~
Suburban 50,200~
Pickup Colorado 20,200~
Silverado 1500 28,300~
Silverado HD 34,400~
Cadillac
Sedan
Hatchback
ATS 35,495~
CTS 46,495~
XTS 46,395~
CT6 54,095~
SUV
Crossover
XT4 34,795~
XT5 40,595~
Escalade 74,695~
Buick
Sedan
Hatchback
Regal Sportback 24,990~
LaCrosse 29,565~
SUV
Crossover
Encore 22,990~
Envision 33,995~
Enclave 39,995~

注)2018年8月時点の価格。 (単位:ドル)

Ford

 ▽自動運転・ADASへの取り組み

2018年3月、Fordは自社開発の先進運転支援システムCo-Pilot360を発表。2019年より、乗用車・SUV・ピックアップトラックの全モデル・グレードで標準搭載を開始することを発表した。

Co-Pilot360は自動緊急ブレーキ(AEB)、警告付き死角情報システム、車線維持支援(LKA)付きACC、自動ハイビーム、リアビューカメラを備える。2018年夏発売の2019 Ford Edgeから搭載が開始される。

Fordは2018年7月、Ford Focus(欧州モデル)に逆走警告機能Wrong Way Alertを搭載したことを発表。オプションで設定可。ヘッドアップディスプレイ(オプション)とインパネ中央の画面に逆走メッセージを表示させ、警告音を鳴らす。

Fordは自動運転開発に対し、積極的に投資を行っている。2018年7月には、Ford Autonomous Vehiclesを設立。新子会社では、自動運転に関する研究・開発を進める。

2023年までに、40億ドルを投じる計画。これには、Fordの量産向け自動運転技術開発を担当しているスタートアップArgo AIへの10億ドルの投資も含まれる。

2018年5月、電動車と自動運転開発規模拡大のため、米国Michigan州Detroit市Corktownにある旧駅舎Michigan Central Stationを買収。既存の電動車・自動運転開発ハブを移管する。2022年までに2,500人の従業員を配置する予定。

2017年8月には、Fordが自動運転車両向けの取り外し式ハンドル、アクセル・ブレーキの設計案の特許を申請。自動運転車両向けデザインを検討していることが明らかになった。

自動運転モビリティについては、2021年頃を目処にFord Fusion HEV(北米)、Transit(英国)の自動運転車両をライドシェアに導入する予定である。2017年中に英国London、米国California州、Arizona州、Michigan州でテスト走行を開始している。

また、米国大手配車サービスLyft、Uberなどと提携し、Fusionシリーズを提供。ライドヘイリング、フリートサービスを試験的に行っている。将来的に自動運転車両をフリート運用する計画である。

▽自動運転の開発・試験状況

Fordは出資・提携を通じ自動運転システム開発・試験を推進。無人オンデマンド宅配サービスの試験プログラムも行っている。

2018年6月、米国Florida州Miami、Miami Beachで試験的に商品の配達サービスと、フリートマネージメントセンターの設置を開始。食品・生活雑貨配達サービススタートアップPostmatesと連携し、Fordの自動運転車を使用した配達サービスを実施している。Fordはこうした運送サービスを2021年に正式提供する計画。

2017年には米国大手食品企業と提携しMichigan州、Florida州で無人運転車によるピザの宅配サービスを行っていた。

その他、米国Virginia工業大学と提携し、自動運転車両と歩行者・対向車ドライバー間のコミュニケーション研究を行っている。

▽アダプティブクルーズコントロール(ACC)

FordのACCはブレーキ操作なし/完全停止からの発進Stop&Goシステムが搭載されている。フロントカメラで周囲(前方)の車の状況、レーダーで先行車との距離を検知する。

車速20km/h(12mph)以下では作動不可。ACC中の自動ブレーキは、ドライバー操作のブレーキ比30%までの踏み込みが行える。先行車が急ブレーキなどを踏んだ場合は、ドライバーがマニュアルで踏み込むことを想定している。また、車速10km/h (6mph)以下で走行する先行車などは検知しない可能性がある。

FordのACCは、2017 Ford Fusionから搭載が開始されている。

ACCは、Fiesta、Focus、EcoSportなどの廉価モデルには非搭載。それ以外はオプション装備、または上級グレードに標準装備。Lincoln MKTモデルでは、パッケージでACCが設定可能。同ACCは、前方衝突警告とブレーキサポート機能を組み合わせたもの。

▽車線逸脱警報/車線維持支援(LDW/LKA)

FordのLKAはLane Keeping System、LDWは一部のLane Keeping SystemとDriver Alert Systemにあたる。

LKAは、フロントカメラが走行レーンを検知・認識している状態で、車速65km/h (40mph)以上で作動。ドライバーへの警告は3通りあり、警告(ステアリングホイールの振動)のみ、ステアリング補助のみ、またはその両方を行う設定から選べる。

LDWでは、方向指示器の出ていない状態で車線に一定以上近づいた際に、ステアリングホイールの振動だけでなく、音、インパネ中央のディスプレイでドライバーに警告する。

LKAは、セダン・ハッチバック最廉価Fiesta、SUV最廉価EcoSport以外にオプションまたはパッケージで搭載されている。Fusion以上の価格帯モデルでは、最上級グレードで標準装備。2019年モデルからはCo-Pilot360のパッケージとして全モデル・全グレードに標準搭載される。

LDW付きのLKAは、F-150またはLincolnブランドで、オプションまたはパッケージで装備が可能。

▽自動緊急ブレーキ(AEB)

FordはAEBとしてフロント方向の衝突回避・軽減ブレーキシステムPre-Collision Assistを設定。フロントバンパー内蔵のレーダーを使用し、先行車を検知する。

Pre-Collision Assistは、車速8km/h(5mph)以上で作動する。一定距離以上先行車に近づいた際、警告音、ドライバー側のフロントガラス下方に視覚的警告を発する。ブレーキサポートで減速し、衝突を回避または衝突を緩和する。自動緊急ブレーキが作動した状況でドライバーがブレーキを踏んだ際は、ブレーキが最大にかかるようアシストを行う。

対向車両、夜間の歩行者、自転車、動物の検知は不可。また、停止している車、車速10km/h以下で走行している先行車は検知しない可能性がある。

Fiesta、Focus、EcoSport以外のモデルにオプションで搭載できる。Lincolnブランドではパッケージに含まれる。F-150、Lincolnモデルには、歩行者検知・警告が追加される。

2019年モデル以降標準搭載のCo-Pilot360は、AEBを含む。

▽その他の自動運転・ADAS

リアビューカメラは全モデル・全グレード標準装備。

その他、死角検知システムBLIS(Fiestaは設定なし。それ以外はオプション、上級モデル・グレードには標準搭載)、Enhanced Active Park Assist(Lincoln上級モデル向けパッケージ)などがある。

BLISは車速10km/h(6mph)以上で作動。リアバンパーの左右に埋め込んでいるセンサーで後方車両を検知する。左右の車両後方の死角エリアが対象。検知範囲は、サイドミラーからリアバンパー後方4mまで。

Enhanced Active Park Assistは、前後左右のセンサーを利用し、駐車スペースの検知や、駐車スペースの出し入れの際の障害物警告やステアリングアシストを行う。ドライバーがアクセル・ブレーキの操作のみで駐車が行えるシステム。

2017年11月に開催された米国L.A.モーターショーで、Lincoln Nautilus(MKXの後続モデル)にレベル2相当のADAS機能を搭載。歩行者検知Pedestrian Detect、LDW/LKAのほかに緊急衝突回避アシストシステムEvasive Steer Assist(ESA)を追加した。

フロントカメラとACC用のレーダーを組み合わせ、先行車との距離を一定に保つ。車間距離が一定以下となり、AEBで回避できないとシステムが判断した際、ドライバーのステアリング操作をアシストし、衝突を回避または衝突を最小限に抑えるよう誘導する。

(参考)Fordブランド、主なモデルのベース価格

Ford
Sedan
Hatchback
Fiesta 14,205~
Focus 17,950~
Fusion 22,215~
C-MAX 24,120~
Mustang 25,845~
Taurus 27,690~
SUV
Crossover
Ecosport 19,995~
Escape 23,940~
Transit 25,900~
Edge 29,315~
Explorer 32,140~
Expedition 51,790~
Puckup Transit Connect 23,215~
F-150 27,705~
Transit Passenger 35,100~
Wagon
Superduty 33,150~
Lincoln
Sedan
Hatchback
MKZ 35,605~
Continental 45,160~
SUV
Crossover
MKC 33,355~
MKX
(Nautilus)
39,035~
MKT 43,530~
Navigator 72,555~


 注)Fordブランドは2018年8月時点の価格。 Lincolnは2018年モデルのみ(単位:ドル)

FCA

 ▽自動運転・ADASへの取り組み

FCAは、他社とのアライアンスを軸に自動運転・ADAS開発を進めている。ブランド別には、FCAが2020年にレベル2+相当を、Maseratiが2022年までに全モデルにレベル3、Alfa Romeoが2022年にレベル2+~3の製品を投入予定である。

Jeepでは、2021年までにRenegadeなどの一部の主力モデルにレベル3のシステムを搭載予定。Ramは、Ram 1500から小型商用バンなどにレベル2の搭載を2021年までに開始する計画である。2023年までに、更に高度な自動運転システムを開発する意向。搭載ブランドは、Maserati、Alfa Romeo、Jeep、Ram。

FCAは、BMW、Intel(米国)、Mobileye(米国)、Aptiv(米国)が発足した自動運転開発アライアンスに参加(2017年8月)。2021年を目処に、スケーラブルな自動運転レベル3~5のプラットフォームを共同で開発する計画。FCAは特にAptivと密接に開発を進める。この開発アライアンスには、Continental(ドイツ)やMagna(カナダ)も参画している。

▽自動運転の開発・試験状況

FCAは、2016年よりGoogle傘下の自動運転開発会社Waymo(米国)にChrysler Pacifica PHEVを提供している。2017年末までに600台を提供。自動運転タクシーフリート向けに、2021年までに62,000台を更に提供する予定である。

米国Michigan州Chelsea、Arizona州YuccaにあるFCAのProving GroundでWaymoが走行データを収集している。

FCA子会社であるMagneti Marelliは、自動運転などの次世代モビリティーサービス向けに、カメラ・レーダー・LiDARを組み込んだヘッドランプ・リアランプシステムなどの自動運転・ADAS関連部品やシステムを開発している。

▽アダプティブクルーズコントロール(ACC)

FCAのACCには、通常のACCと完全停止からの発進が可能なStop&Go付きのACC+がある。フロントカメラと1個のレーダーで先行車を検知する。人、対向車、停止している車や障害物には反応しない。

ACC/ACC+モードは、車速0km/h以上でオンにできる。設定速度は車速32km/h(20mph)以上180km/h(110mph)以内。設定車間距離は、4モード(Longest、Long、Medium、Short)。

ACCでは、先行車の停止後2秒以内に先行車が発進すれば、低速からの追従を再開する。ACC+は、自車が完全に止まって2秒以内に先行車が発進すれば、操作なしで追従が再開される。

ACCはChryslerブランドにオプションとして設定可能。ACC+は、Dodge、Alfa Romeo、Maseratiにオプション追加が可能。Jeepブランド(Renegade、Wranglerなど)ではまだ設定されていない。

▽車線逸脱警報/車線維持支援(LDW/LKA)

LDW/LKAは、FCAでLaneSenseと呼ばれるシステム。フロントカメラで走行レーンを検知、自動車の位置を測定して車線間中央をキープする。車速60km/h(37mph)~180km/h(112mph)で使用できる。

方向指示器なしでレーンに一定距離以上近づいた際は、ステアリングホイールへの振動、インパネ中央のクラスターに警告メッセージを表示させるなどして、ドライバーに逸脱検知を知らせる。警告が出た時点でドライバーがテイクオーバーしなければ、システムがハンドルを自動的に中央方向に切り、車線中央に戻す。

FCAブランドで、Wranglerなど一部のモデルには非搭載。それ以外のモデルはオプションで装備が可能。Alfa RomeoとMaseratiの高級ブランドでは標準装備。

▽自動緊急ブレーキ(AEB)

FCAでは、AEBとしてフロント方向の緊急ブレーキForward Collision Warning(FCW)システムが搭載されている。リアはなし。FCWは、フロントバンパー内臓のレーダーとフロントガラス中央上方に備えられたフロントカメラで構成されている。車速2km/h(1mph)以上でFCWが作動できる。

車速42km/h(26mph)以下の場合、システムが自動的に最大限のブレーキをかけることも可能。

Wranglerなど一部のモデルにはFCWは非搭載。それ以外のFCAブランドモデルはオプション装備が可能。

▽その他の自動運転・ADAS

リアビューカメラはParkView Rear Back Up Cameraとして全モデル・全グレード標準装備。

FCAではその他、リアバンパーの超音波センサーを使用した駐車アシストParkSense Rear Park Assist、駐車場から後退して出る際に後方の車の有無などを警告するRear Cross Path Detection、死角検知システムBlind Spot Monitoring System、前方からの駐車アシストParallel & Perpendicular Park Assist Systemなどがオプションで設定できる。

自動運転向けに提供しているChrysler Pacifica、高級ブランドであるAlfa Romeo、Maseratiは、ParkSense Rear Park Assist、Rear Cross Path Detectionを標準装備している。

前方の駐車アシストのオプション追加は、Maseratiのみ可能。

(参考)FCA ブランド、主なモデルのベース価格

Chrysler
Sedan 300 28,995~
SUV Pacifica 26,995~
Pacifica Hybrid 39,995~
Alfa Romeo
Sedan Giulia 38,195~
SUV Stelvio 42,195~
Coupe 4C Coupe 55,900~
4C Spider 65,900~
Dodge
Pickup Ram 1500 27,295~
2019 Ram 1500 31,695~
Jeep
SUV Renegade 18,445~
Compass 21,095~
Cherokee 23,995~
Wrangler 27,495~
Grand Cherokee 30,895~
Maserati
Sedan Ghibli 74,980~
Quattroporte 107,680~
SUV Levante 75,950~
Coupe GranTurismo 134,300~
Convertible GT Convertible 150,340~

注)2018年8月時点の北米価格。2019 Ram 1500以外は2018年モデル。(単位:ドル)

Tesla

 ▽自動運転・ADASへの取り組み

Teslaは、自動運転レベル5に対応するシステムAutopilotを手がけている。2018年8月時点では、レベル2までのシステムを開放。

AutopilotはEnhanced Autopilot(レベル2に相当)へ改称。同システムパッケージ(5,000ドル)購入後、レベル5対応のシステムパッケージ(3,000ドル)購入で、完全自動運転機能が装備できる。

ー Enhanced Autopilotには、ACC、LKA、車線変更、高速道路の乗り換え、車の呼び出し(サモン)などが含まれる。

ー 両パッケージとも、Model S/X/3に設定されている。

▽自動運転の開発・試験状況

Teslaは2018年8月、独自で自動運転向け人工知能(AI)チップHardware 3を開発中であると発表。今後は同チップを搭載する。

当初のTeslaのシステムはMobileyeのEyeQ3を使用。2016年10月にNVIDIAのDrive PX2に切り替えた。

▽アダプティブクルーズコントロール(ACC)

TeslaではACCはTraffic Aware Cruise Controlと呼ばれる。TeslaのACCは、フロントカメラとレーダー(最大視認距離160m)で先行車両を検知する。

前方に車両が検出されない限り、車速30~150km/hで設定できる。5分以上の停止でACCモードがオフになる。

▽車線逸脱警報/車線維持支援(LDW/LKA)

TeslaのLKAはLane Assistと呼ばれる。高速道路走行を想定。フロントカメラで車線認識、超音波センサーで車両周囲8m範囲の物体検知を行う。

LKAは車速59~10km/hで作動する。方向指示器を出さずに車線を逸脱すると、ハンドルを振動させて警告する。

LKAと併せて自動ステアリングアシストシステムAuto Steering Systemを作動することで、車線中央をキープできる。同システムは、車速48~140km/hで有効となる。

▽自動緊急ブレーキ(AEB)

フロントカメラ、レーダーで前方車両、オートバイ、自転車、歩行者などの物体を検知し、距離を測定。AEBは全モデル標準搭載。車速10~150km/hで作動する。

車速46km/h以上で走行中の場合、AEB作動中に車速40km/hまで減速すると自動でAEBが解除される。

FOURIN世界自動車技術調査月報
FOURIN社転載許諾済み)

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