【Tesla】新型モデル投入で収益改善目指す、自動運転技術ではAIチップ内製化図る

2019.03.28
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新興BEV自動車メーカーTeslaは、新モデルの市場投入により、収益改善を図る戦略に乗り出している。

2017年7月に販売価格3.5万ドルのBEV量販車 Model 3を市場投入した他、派生車となるCUVのModel Yや新型スポーツカーなどの小型自動車に加え、大型/小型BEVトラックなど商用車開発も進めている。新モデルは2019年以降に市場投入される見通しである。

業績をみると、2018年1~6月期は、売上高が前年同期比35.1%増の74.1億ドルと増収であったものの、純損失は前年同期の8.0億ドルから15.3億ドルとなり赤字幅が拡大した。

Model 3の生産体制構築に伴う費用増などが純損失を拡大させた模様。ただ2019年には、Model 3の欧州向け/アジア大洋州向け輸出を開始し、業績改善を図る計画である。

Tesla、連結、2013~2017年、2017年・2018年上期の売上高・純損失の業績を表す図表。2013年から、売上高は右肩上がりで伸び、2017年には、120億ドルに到達しそうな程。しかし、純損失は2013年から年を追うごと下がっており、2018年上期には、純損失額は15.3億ドルとなり、赤字幅は広がっていく一方である。

生産体制としては、2018年8月に、50億ドルを投じ中国に新工場を建設すると発表した。2020年にModel 3の生産を開始し、生産能力は2023年頃に50万台/年とする計画である。

米国と中国に主要生産拠点を設け、2軸体制で各種BEVモデルを生産し、世界各国市場に供給する。Teslaには、中国ネットサービス大手の騰訊控股(テンセント)が出資しており、今後、更に中国企業との関係強化が進むと考えられる。

完成車生産拠点概要

米国 中国

Fremont工場 上海工場


California州
Fremont
上海

2012年 2020年予定



Model S、Model X、Model 3 Model 3含む
EVモデル
(予定)



25.5万台
→50万台(2019年)
50万台/年
(2023年頃)

▼2010年にTeslaが跡地を買収。2012年6月に稼働し、 Model Sの生産を開始。
-2009年までGMとトヨタの合弁工場NUMMIであった。

▼2014年7月、生産ライン能力を増強。生産能力は10万台/年に拡大

▼2016年、Tesla Model 3(3.5万ドル、航続距離220マイルのEV)の生産に備え、Fremont工場の設備を刷新。車体組立ラインの生産能力は、17.5万台/年(2017年現在)。

▼2017年7月、Tesla Model 3を生産開始。

▼2017年6月、上海市とEV工場の建設で合意した模様。-現地進出は、市場拡大が見込まれる中国EV市場を狙った措置。
-2017年3月に中国ネットサービス大手の騰訊控股(テンセント)から約17.8億ドル(出資比率5%)の出資を受けたと公表。中国との関係強化を進めている状況。

▼2018年8月、Teslaは50億ドルを投じ中国に新工場を建設すると発表。
-2020年にModel 3生産を開始する予定。
-2018年7月時点で、工場建設に関して中国上海政府からの承認を獲得済み。

(Tesla 広報資料、各種報道資料等より作成)

一方、自動運転機能Autopilotについては、2018年8月に自動運転向けAIチップの内製化を発表。2019年以降に、NVIDIA製から、内製AIチップHardware 3に切り替える。

ただAutopilotの作動中に発生した事故も報告されており、一部では機能の精度や広報・宣伝手法に問題があるとの指摘も出始めている状況である。一部で批判の声が出ているものの、同分野では自動車メーカー各社による競争が過熱しており、Teslaは競合他社に先駆け新技術を市場投入する戦略を今後も維持していくとみられる。 

Tesla、2018年上期決算/生産/販売概要

▽2018年1~6月期決算

Teslaの2018年1~6月期決算をみると、売上高は前年同期比35.1%増の74.1億ドルと増収であったものの、純損失は前年同期の8.0億ドルから15.3億ドルとなり赤字幅が拡大した。

▽生産/販売(米国)

2018年1~6月期の生産台数は、前年同期比71.8%増の8.7万台となった。Model 3の生産開始が増産要因。2018年1~6月期の販売台数は、前年同期比2倍の4.1万台。

▽事業見通し

2018年内に、Model SとModel X、Model 3の販売台数を計10万台超に引き上げる計画。2017年の販売台数は7.1万台。

2019年にModel 3の欧州向け/アジア大洋州向け輸出を開始する予定。業績面でも、量販車のModel 3輸出拡大は利益率を高める要因にもなるとみている。

Tesla、自動運転機能Autopilotの現状

▽概要

2016年末、Teslaは、従来の高速道路での自動運転機能(レベル2)を進化させた新機能であるエンハンスト オートパイロット(Enhanced Autopilot)を導入した。OTA(Over the Air=通信によるソフトウエアアップデート)により機能を更新することが可能(各国の規制状況により、変更内容は異なる)。

自動運転機能作動時には、運転者による操作なしで、車線を変更する機能などを搭載。従来製品の場合、自動運転機能作動時に車線変更をしたい場合、ウインカーを出すと、周囲の状況を認識したうえで車線を変更していた。2018年10月時点では、Autopilot 9.0が最新となる。

2016年10月、Teslaは、自動運転機能(ハードウエア)のベースをMobileyeのEyeQ3から、NVIDIAの自動車用コンピューターであるDrive PX2(1つのプロセッサでADAS処理可能)に切り替えた。

位置づけとしては、Mobileye製のシステムをベースとした第一世代から、NVIDIA製のシステムをベースとした第二世代へと進化した形。2016年10月19日以降に生産する全ての車両に、新型ハードウエアを搭載する。同ハードウエアは、将来を見据えて完全自動運転機能に対応しているという。

2018年8月、自動運転向けAIチップの内製化を発表。NVIDIA製から、内製AIチップHardware 3に切り替える。処理能力は従来製品から10倍高まるという。Hardware 3は、Model S/X/3に搭載する予定で、2019年以降に切り替える見通し。

自動運転機能の導入時期/追加概要

2012年11月 自動収納式ドアハンドル、アラーム、GPS対応Homelink、
ボイスコマンド
13年
3月
予約充電 (電気料金が一番安い時間帯に充電)
6月 ワンタップ ナビゲーションでスーパーチャージャーの位置を表示
8月 Wi-Fi & テザリング、ヘディングアップ マップ
10月 使用していない時の消費電力を抑える節電モード、タッチスクリーンにオーナーズ マニュアルを追加
11月 エアサスペンションを高く調整
14年
3月
ヒルスタート アシスト、自宅や職場へのナビゲーション機能
9月 Autopilot 6.0導入:トラフィックベースのナビゲーション導入、カレンダーアプリ投入、新パワーマネジメントオプション、ロケーションベースのスマートエアサスペンション
15年
1月
Autopilot 6.1導入:ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)、正面衝突警報、
オートハイビーム、トリップ エネルギー予測、バックカメラ/バックガイド、
カレンダーの改善:ミーティングノートと電話番号
3月 Autopilot 6.2導入:自動緊急ブレーキ、ブラインドスポット警告、バレーモード
10月 Autopilot 7.0導入:オートパイロット: オートステアリング、オートパーキング、自動車線変更、側面衝突回避
16年
1月
Autopilot 7.1導入:オートパイロットの改善、オートパーキング (並列駐車)
9月 Autopilot 8.0導入:メディアプレーヤー/インターフェースの改善、位置検索機能の改善、ボイスコマンドの改善、回生ブレーキの改善
10月 自動運転システム(ハードウェア)を第二世代に切り替えた。自動運転機能(レベル2)を進化させたエンハンスとオートパイロットを同年内に導入
17年
2月
Autopilot 8.1導入:エンハンスト オートパイロットの機能強化(時速90mileまで対応)、トラフィックアウェアクルーズコントロール、ADAS機能:自動車線変更/車線逸脱警告/自動緊急ブレーキ/オートパーキング (縦列駐車)/オートパーキング (並列駐車)/ブラインドスポット検知機能/スピード アシスト
18年
10月
Autopilot9.0導入:ナビ機能の向上、エアコンコントロール機能の改善、加速時の障害物検知機能、オートパイロットコントロール機能などを更新

(Tesla 広報資料、各種報道資料等より作成)

Tesla、米国製品投入計画

セグメント ~2018
MY
2019
MY
2020
MY
2021
MY
2022
MY~
ミドルカー
’17年
7月
     
’21年
アッパー
ラグジャリー

’16年
4月
 
’19年
   
アッパー
スポーツカー
×
’12年
       
     
’20年
 
ラグジャリーCUV
’15年
9月
   
’20年
 
ミドルCUV    
’19年
   
PU      
’20年
 
大型トラック    
’19年
   

  

セグメント モデル PF 備考

ミドルカー

Model
3
Gen
III
2017年7月発売。車両本体のベース価格は35,000ドル~(補助金制度適用前)。量販を狙った新型EVで、EVの本格普及を目指した戦略車種。

-全長184.8×全幅76.1×全高56.8(in)。ホイールベースは113.2in。5人乗り。ベースモデルの航続距離は220マイル。自動運転機能を利用する場合には、オプション料金の支払いが必要となる。

アッパー
ラグジャリー
Model
S
Model
S
2012年発売。世界初のプレミアムEVセダンという位置づけ。ファミリーセダンの快適さと利便性を重視。最大航続距離は500km以上(一部グレード)。

-米国モータートレンド誌の2013年カーオブザイヤーに選ばれ、米国の国家道路交通安全局(NHTSA)による安全性試験で5つ星評価を獲得。

2016年4月、Model Sのフェイスリフトモデルを発表。
-フロントデザインを一新。Model Xと同様に、EVには必要の無いグリルを廃し、ボディカラーと同色のフロントバンパーに変更。

2016年8月、航続距離315マイル(EPA基準)超となる新モデルModel S P100Dを投入すると発表した。
-リチウムイオン電池容量は100kWh。

アッパー
スポーツカー

Road
ster
Lotus
Elise
2008年発売。Tesla初のモデル。18650規格のリチウムイオンバッテリーを6,831個搭載。

-1回の充電による航続距離は最長394 km。加速性能は、3.9秒で時速100kmに達する。
-同モデルは、世界30ヵ国以上で2,400台超を販売。

新型
Road
ster
n.a. 2017年11月、新モデルとなるTesla Roadsterの投入計画を公表。BEVのスポーツカー。2020年にも市場投入する予定。航続距離は620マイル。ベース価格は20万ドル。
ラグジャリー
CUV
Model
X
Model
S
2015年9月発売。Teslaにとって初のCUV投入となる。
-ファルコンウイングドア、3列シートなどの特徴がある。
ミドル
CUV
Model
Y
Gen
III
Model Yは、Model 3と同じプラットフォームを用いたミドルCUV。
PU n.a. n.a. 市場投入に向けた準備を進めている模様。
大型
トラック
Tesla
Semi
n.a. 2017年11月、Teslaは同月に発表した商用向けEVトラックTesla Semiの先行予約受け付けを開始した。
-2019年頃、納車を開始する予定。


FOURIN
世界自動車調査月報
(FOURIN社転載許諾済み)

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