<BMW>電動車25モデルの投入計画と自動運転戦略
2019.10.29BMWの社是は、革新的技術によってベストなユーザーエクスペリエンスを提供するナンバー1企業たることである。2016年に行われたBMW創業100周年記念式典で当時CEOを務めていたHarald KrügerはACES(自動運転、コネクティビティ、Eモビリティ、シェアリング)に力を入れると発表した。その後に市民権を得たCASE(by Daimler)より早い。
しかし、ACES発表から3年、今なおこの新分野でBMWは主導権を握れていない。2019年7月、BMW監査役会はKrügerの解任を発表した。
電動車戦略の概要と製品計画
▽BMWの電動車戦略
BMWは従来計画を2年前倒しし、計25の電動車(EV/PHEV)を2023年までに投入する方針を2019年6月に示した。
- 2021年の電動車販売を2019年の2倍にする。
- 2025年までに世界販売の3割を電動車とする。
▽BMWの電動車(EV/PHEV)販売実績
- BMWは2013年のi3(EV)発売以来、2018年末までに累計35.8万台の電動車(EV/PHEV)を販売した。
- 2018年は142,600台、2019年1~7月は69,670台で、2019年末までに累計50万台を達成する勢いである。
- 2018年のEV/PHEV世界販売ランキングで、BMWはTeslaに次ぐ2位、欧州では首位である。
▽BMWの欧州CO₂排出目標値
欧州委員会によりBMWに求められる2020/2021年フリート平均CO₂排出目標値は101g/kmである。2017年実績はスーパークレジットなしで122g/kmであり、目標値と21g/kmの開きがある。
▽プラグインハイブリッド(PHEV)
BMWの電動パワートレインの軸は今のところPHEVである。
- BMWはZFから次期8速ハイブリッドAT(第4世代8HP)を2022年から複数年受給する長期契約をZFと2019年春に締結した。
- 2019年夏に欧州で発売した330e (PHEV)のパワートレインは、先代モデルより大幅にスペックが向上した。
- 2.0ℓ直4ターボガソリンエンジン(出力135kW)にZF製の8速ハイブリッドAT(第3世代)を組み合わせたP2システム。
- システム出力は185kW。10秒間だけ発生するシステム最高出力(XtraBoost)は先代比30kW増の215kW。
- 電池容量を先代の7.6kWhから12.0kWhに増量した。これによりEV航続距離も先代比50%増の66kmとなった。
- EV走行時の最高速は先代比20km/h増の140km/h。
- 都市の超低排出ゾーン(ULEZ)で自動的にEV走行に切り替えるeDrive Zones(次ページ)を搭載している。
▽PHEV以外の電動パワートレイン
BMWはEVを2023年までに12モデル発売予定である。そのうち2021年までの4モデルが判明している。
2025年までに全車に12Vか48VのMHEVを設定する方針を2017年に示した。3 Series(G20)に48V MHEVを2020年に追加すると予想されているが、今のところ公式発表はない。
- 開発担当取締役Klaus Fröhlichは、燃費改善効果を5%から10%に高めた次世代48V MHEVを2022年頃に発売する可能性を示唆している。
- FCEV開発ではトヨタと技術協力している。2020年代前半にX5のFCEVを少量生産する計画である。
▽CEO交代と、その電動車戦略への影響
BMWの監査役会は2019年7月、CEOのHarald Krügerの解任を発表した。後任にはOliver Zipseが就いた。
任期満了を待たない解任の背景には、ACESで業界主導権を握れていないことへの監査役会の不満があったとされる。
後任のOliver Zipseはそれまで生産担当取締役を務め、Krügerとともに電動車生産戦略を立案してきた人物であり、前任者の戦略を大きく転換するとは考えにくい。一方で、監査役会はZipseに2019年末までに新しい戦略を出すよう求めている。
監査役会が旧執行部の方針をPHEV偏重と判断していたとすれば、もう一度EVに重きを置く戦略に変わる可能性もある。
ゼロエミッション区間で自動的にEV走行に切り替わる機能eDrive Zonesを2020年以降のPHEVに標準搭載
BMWは2013年にEVのi3を、2014年にPHEVのi8を発売した。電動車(EV/PHEV)の累計販売台数は2019年末までに50万台を超える見込みである。
BMWは2019年6月に、従来計画を2年前倒しし、計25の電動車を2023年までに投入する方針を示した。2021年の電動車販売を2019年の2倍にし、2025年までに世界販売の3割を電動車とする方針である。
BMWがいま最も力を入れているのがPHEVである。
2019年4月には、ZFが2022年に量産開始する第4世代8速ハイブリッドATの長期受給契約をZFと締結した。BMWは2020年以降に発売するすべてのPHEVに、都市の超低排出ゾーン(ULEZ)でEV走行に自動的に切り替わる機能eDrive Zonesを標準搭載する。
EVのラインアップも増やす。i3のパワートレインを流用してMini Electricを2020年に発売し、その後、iX3(中国)とiNext、i4を発売する計画を公式に発表している。
これらのEV/PHEVはコンベ車と同一のプラットフォーム(UKLかCLAR)を用いて、コンベ車と同一の工場で生産される。BMWはこれを全体統合生産方式と呼び、世界各拠点の改修を進めている。
▽eDrive Zonesを2020年以降のPHEVに標準搭載
BMWは2019年6月、PHEVのEV走行への自動切替機能eDrive Zonesを発表した。環境性能と顧客利便性を両立する。
eDrive Zonesはジオフェンシングによって、都市中心部にある超低排出ゾーン(ULEZ)の境目を自動的に認識し、ゾーン内に進入する際、EV走行に自動的に切り替える機能である。
- ゾーンの判別はGPSとナビゲーションシステムにより行う。
- 都市内でのCO₂排出とエンジン音を低減する。
- EV走行への切替に特別な操作を必要としないため、ドライバーにとっての利便性も大きい。
BMWはeDrive Zonesを2019年夏発売の330eに初めて搭載した。2020年以降に発売する新世代(第4世代)PHEV全車に標準搭載する方針である。
▽ドライバーにインセンティブとしてBMW Pointsを付与
さらにBMWは、eDrive Zonesを補完するものとして、デジタルポイントプログラムBMW Pointsを発表した。
- 2020年にサービス開始予定。EV走行距離に応じて、BMW Pointsをドライバーに付与する。
- ドライバーは蓄積したポイントを充電サービスChargeNowで利用できる。中長期的には、駐車サービスParkNowやシェアリングサービスShareNowでも利用できるようにする。
▽eDrive ZonesとBMW Pointsの開発経緯
BMWは2018年にオランダのRotterdam市などと協力して、都市内でのPHEVの利用調査(Electric City Drive)を行った。
- 50台のPHEVをユーザーに貸与。ユーザーのスマートフォンにアプリをインストールし、車両と接続させた。
- 予め設定したゼロエミッションゾーンに試験車両が進入すると、コックピットディスプレイにそのことを表示し、EV走行への切替を促した。3ヵ月間の試験により、ユーザーの9割が都市圏でEV走行を選択していることがわかった。
BMWの開発担当者は「規制によってコンベ車を排除するのではなく、ポイント制度のようなインセンティブを導入する方が、都市の環境改善に直結することがわかった」と述べている。
Rotterdam市で環境政策を管轄する副市長は「都市内でPHEVを自動的にEV走行に切り替える機能は非常に実用的であり、他の自動車メーカーも使えるようにすべき」と述べた。
▽欧州諸都市のゼロエミッション走行規制
欧州の一部都市は、旧式ディーゼルエンジン搭載車の市内への進入禁止措置を導入済みである。さらに一部では、内燃機関そのものを排除する新規制を検討している。
eDrive Zonesは、規制対象にPHEVを含めるか否かの議論に影響を与える可能性もある。
発売予定のEVと主な予想スペック
▽Mini Electric、2020年、2021年(中国)
2019年末生産開始。2020年初に発売。
生産は英国Oxford工場(2019年末~)と中国光束汽車(長城汽車との合弁)工場(2021年~)で行う。
パワートレインは現行i3s (94Ah)を流用する。
出力135kWのモーターをフロントに配置。電池容量32.6kWh、航続距離200km。ワンペダル制御。
価格は32,500ユーロ~(i3sより3,650ユーロ安い)。
▽iX3 (SUV)、2020年(中国)
2020年に生産開始。同年に中国で発売予定。
華晨汽車との合弁、華晨BMW(BBA)の瀋陽工場で生産。
第5世代電動パワートレインを搭載する第1号モデルとなる。
- 出力200kWのモーター1基をリアに搭載。
- 電池容量は70kWh。航続距離は400km(WLTP)。電池セルはCATLから調達する。
価格は70,000ユーロ前後と予想される。
▽iNext (i6/i6s, SUV)、2021年
2021年に発売予定。生産はドイツDingolfing工場で行う。
i6/i6sの呼称で販売される可能性がある。
パワートレインに関する公式発表はない。既存の後輪駆動プラットフォームCLARに第5世代電動パワートレインを組み合わせた以下の4種類が計画されている模様である。
- 出力250kWのモーターをリアに搭載する後輪駆動モデル。電池容量63kWhで航続距離は460km。
- 合計出力320kWのモーターを前後に搭載する4輪駆動モデル。電池容量92kWhで航続距離は560km。
- 合計出力400kW(フロント150kw/リア250kW)の4輪駆動モデル。電池容量103kWhで航続距離は600km。
- 電池容量115kWhの最上位モデルi6s。
価格は72,000~110,000ユーロと予想される。
▽i4 (クーペ)、2021年
2021年に発売予定。生産はドイツMünchen工場で行う。
- i4の生産に向け、BMWは2億ユーロを投じて、2018年10月からMünchen工場の改修を行っている。フレキシブル生産を標榜し、コンベ車とEV/PHEVの混流生産を実現する。今後、世界の他の拠点でも同様の改修を進める方針。
iNextと同じCLAR+第5世代電動パワートレインの構成。
電池容量は60kWhと80kWhの2種類になる可能性がある。
▽2022年以降に発売が予想されるEV
BMWはさらに5 Seriesベースのi5、7 Seriesベースのi7、X5ベースのiX5などの発売を計画している模様である。
- これらのモデルはそれぞれ同じプレットフォームでEVとしてだけでなく、コンベ車やPHEVとしても発売される。
- EVの電圧は500Vから最終的に800Vになる可能性がある。また、これに合わせて対応充電出力も120kWから350kWに上げていく方針とみられる。
BMWのパワートレイン、モジュールエンジン第2世代への置換を2018年までに完了
BMWはエンジンのモジュール化を2013年から進めてきた。3/4/6気筒の直列ガソリン/ディーゼルエンジンでボアストロークや気筒当たり排気量を共通化した。2015年以降は第2世代への切り替えを進め、3.0ℓディーゼルエンジンを除いて、2018年までにほぼ完了した。
▽モジュールエンジン
BMWの3~6気筒の直列エンジンは1気筒あたりの排気量とボア×ストロークを統一したモジュールエンジンである。
- 排気量は1気筒あたり500ccで統一。
- ボア×ストロークはガソリンエンジンが82.0×94.6(mm)、ディーゼルエンジンが84.0×90.0(mm)で統一。
- 補機類も可能な限り共通化している。
2013年からモジュール化を進め2015年までに第1世代への切替を完了。2015年から第2世代への切替を進め、B57を除き2018年までに完了した。
以下の☆印がモジュールエンジン。
▽ガソリンエンジン(型番、生産開始年、出力範囲)
- 1.5ℓ直列3気筒(B38、2013年~、55~170kW)☆
- 2.0ℓ直列4気筒(B48、2014年~、135~225kW)☆
- 3.0ℓ直列6気筒(B58、2014年~、240~285kW)☆
- 3.0ℓ直列6気筒(S55、2014年~、317~368kW)☆
- 4.0ℓ/4.4ℓV型8気筒(N63/S63、2008年~、300~447kW)
- 6.0/6.6/6.7ℓV型12気筒(N74、2008年~、400~465kW)
▽ディーゼルエンジン(型番、生産開始年、出力範囲)
- 1.5ℓ直列3気筒(B37、2013年~、70~85kW)☆
- 2.0ℓ直列4気筒(B47、2014年~、85~170kW)☆
- 3.0ℓ直列6気筒(B57、2015年~、195~204kW)☆
▽エンジン生産拠点で電動アクスル用のアルミハウジングも生産
BMWのエンジンはドイツMünchen、オーストリアSteyr、英国Hams Hall、中国瀋陽の鉄西工場で生産されている。
そのうち半数以上をSteyr工場が担当。従業員約4,500人で、1日あたり6,100基のエンジンを生産している。ディーゼルエンジンのグローバル開発センターもここSteyrにある。
Steyr工場はPHEV用エンジンも生産している。2017年には約40,000基のPHEV用エンジンを生産した。
BMWは2019年第1四半期にSteyr工場でアルミモーターハウジングの生産ライン追加工事を開始した。
- モーターとギア、インバーターを機電一体電動アクスルとしてパッケージするためのアルミハウジング生産ラインである。
- 5種類のタイプの異なるモーターハウジングを生産する。
- 何段階かの拡張を予定しており、2026年までに最大46万基/年の生産能力にする計画。
▽電動パワートレインの生産拠点
BMWはEV/PHEVのモーターやギア、バッテリーパックをドイツLandshut、Dingolfing、米国Spartanburgで生産している。
電池セルはSamsung SDIとCATLから調達している。
インバーターはDelphi Technologiesなどから調達している。
プラットフォーム戦略と生産効率改善
BMWには前輪駆動プラットフォームのUKL(FAAR)と後輪駆動プラットフォームのCLARがある。いずれもEV/PHEVに展開可能なものである。
他社とのプラットフォーム共有も進め、華晨BMWやトヨタの一部モデルがUKLやCLARを用いている。また、2019年に入り、DaimlerやJaguar Land Roverとも、EVだけでなくコンベ車も含むプラットフォームの共通化について話し合っている模様である。
▽2種類のモジュールプラットフォーム、UKL(FAAR)とCLAR
BMWには大きく2種類のモジュールプラットフォームがある。
前輪駆動プラットフォームのUKL(FAAR)と後輪駆動プラットフォームのCLARである。
- UKLはアンダークラス、FAARは前輪駆動アーキテクチャ、CLARはクラスターアーキテクチャを意味するドイツ語の略である。
いずれもコンベ車だけでなく、EVやPHEVにも展開可能なプラットフォームである。BMWは2021年以降のすべてのモデルをコンベ車とEV、PHEVのどのパワートレインでも生産できるようにする方針である(下記の「全体統合生産方式」参照)。
▽前輪駆動プラットフォームUKL
前輪駆動プラットフォームUKLにはUKL1とUKL2がある。UKL1はサブコンパクト用、UKL2はコンパクト用である。
UKL1の第1号は2014年のMini Hatchで、以降はClubmanとCountryman以外のMini全モデルが採用している。
UKL2の第1号は同年のBMW 2 Series Active Tourerで、以降は1 Series、2 Series Gran Tourer、X1、X2が採用している。
▽後輪駆動プラットフォームCLAR
後輪駆動プラットフォームCLARはアルミとスチール、CFRP(炭素繊維強化樹脂)によるモジュールプラットフォームである。
CLARの第1号は2015年発売の7 Seriesで、以降は3/5/6/8 Series、X3/X4/X5/X6/X7が採用。
▽他社とのプラットフォーム共有
UKL2を華晨BMWのZinoro 60H(2017年~)が採用。
CLARをトヨタSupra(2019年~)が採用。
Daimlerと廉価EVプラットフォームの開発で協力していることを両社の首脳が公言している。さらに将来的にコンベ車も含むプラットフォームを共通化することも検討している模様。
Jaguar Land Rover(JLR)はBMWとEVプラットフォームを共有する方針である。さらに、次期Range Rover Evoqueや次期Land Rover Discovery Sportなどの小型SUVのプラットフォームにBMWのFAARを採用することも検討している模様である。
- JLRの取締役会には、CEOのRalf SpethをはじめとしてBMW出身者が多数在籍している。
▽全体統合生産方式
BMWは全体統合生産と呼ぶ新しい生産方式の構築を目指している。自動化/デジタル化された生産ラインにより、あらゆるパワートレインに対応可能な生産方式である。
- BMWによれば1908~1930年代はFord生産方式(大量生産)の時代、1920~1960年代はGMスローン方式(派生フルライン生産)の時代、1960~2000年代はトヨタ生産方式(無駄を省いたジャストインタイム生産)の時代。そして、これからはIoTとスマートデータによる全体統合生産方式の時代である。
Daimlerと自動運転開発からモビリティサービス、部品購買まで幅広く協力
▽自動運転分野での開発協力
2019年7月、BMWはDaimlerと自動運転(AD)/先進運転支援システム(ADAS)の開発で長期的に協力すると発表した。
- 共同開発の目標は、自動運転Level 4を搭載する一般消費者向けのオーナーカーを2024年に発売することである。ただし、ここでのLevel 4は、高速道路での限定条件下でのドライバーレス自動運転と自動駐車を指している。
- さらに、市街地におけるADの高度化でも協力し、スケーラブルな自動運転プラットフォームを共同で開発する。
- 両社から1,200人以上の専門技術者がこの開発協力に参加し、その一部は混成開発チームを形成する。
- 開発協力は2社に限定されないオープンなものとしている。
▽モビリティサービスでの協力
BMWとDaimlerは、各社独自に展開してきた複数のモビリティサービスを統合する計画を2018年3月に発表した。
2019年2月にこの計画を具体化し、モビリティ事業を5部門に区分し、両社で総額10億ユーロ以上を投じると発表した。
- ShareNow(カーシェアリング)、FreeNow(配車)
- ReachNow(ライドヘイリング)、ParkNow(駐車)、ChargeNow(充電)の5部門。
5部門の2019年上半期の利用者数(登録ユーザー数)は世界で7,500万人以上、サービス提供都市は1,200以上である。
▽車体プラットフォームの共有検討
将来的に廉価EV(30,000ユーロ未満)やコンベ車を含む全体的な車体プラットフォームの共有を検討している模様である。
▽非競争分野での部品共同購買
BMWとDaimlerは2008年から、互いのブランドアイデンティティに影響を与えない部品の購買で協力している。
- タイヤやシートフレームなど数十種類の部品が対象。
- 共同購買により部品1個あたり8~15%の調達コスト削減。
- 2008年当時、BMWの調達担当取締役を務めていたHerbert Diess(現VW CEO)らが導入した。
自動運転開発
BMWは2021年に市街地(車速70km/h以下)での自動運転Level 4 or 5のフリート試験を開始する。また、同年に高速道路(車速130km/h以下)での自動運転Level 3搭載車を量産開始する。ただし、BMWのLevel 3開発はこれに限定され、その後はL4/L5だけを目指す。
BMWはドイツMünchen北部Unterschleißheimに自動運転開発センター(Autonomous Driving Campus)を2017年に開設した。
1,300人のエンジニアが従事している。2019年3月には、近接地に自動運転データセンター(High Performance D3 platform)を開設した。実車ベースの走行データ200万km分とシミュレーションベースの走行データ240万km分を蓄積するために、230ペタバイトのデータストレージを備えている。
BMWは7 Seriesを改造した自動運転試験車両計80台をドイツや米国、中国、イスラエルに投入し、走行データの収集を行っている。試験車両は2019年末までに140台、2020年までに185台に増やす計画である。
従来の開発パートナー(Intel/Mobileye、Continental、Magna、Aptiv、FCA)に新たにDaimlerも加わり、オープンな体制で2024年のLevel 4量産を目指す。
▽自動運転開発目標
2021年に市街地(車速70km/h以下)での自動運転Level 4 or 5のフリート試験を開始する。
2021年に高速道路(車速130km/h以下)での自動運転Level 3搭載車を量産開始する。
- BMWがLevel 3を目指すのは、この条件(高速道路での車速130km/h以下)に限る。それ以外は世界の地域を走行環境によって3つに分け、L2の適用かL4/L5を目指す(下図)。
▽自動運転開発拠点
ドイツMünchen北部Unterschleißheimに自動運転開発センター(Autonomous Driving Campus、ADC)を2017年に開設した。
- 最大1,800人のエンジニアを収容できる。現在はエンジニアとソフトウェア開発者をあわせて1,300人が従事。
- 即時決断/即時実行のアジャイル開発プロセスを導入。ソフトウェア開発から公道走行試験まで行う。
2019年3月、同じUnterschleißheimに自動運転データセンター(High Performance D3 platform)を開設した。
- D3は、Data-Driven Developmentを指す略語。
- D3 platformの役割は、試験車両から送られる約500万kmの走行データを蓄積すること。そこから200万kmの有益なシナリオ(運転状況/走行環境)を抽出する。
- 実車ベースのこの200万kmに、仮想(シミュレーション)によって得られる240万kmを追加する。
- 実車と仮想を合わせて必要となるデータストレージ容量は230PB (1ペタバイト=1,000テラバイト)である。演算装置には10万コア以上、GPU 200個以上の処理能力が必要である。
D3 platformはADCから数kmの距離にあり、ADCのHardware in the Loop (HiL)ステーションと高速通信回線(96×100Gbps)で結ばれる。実効データ転送レートは3.75 Terabit/s。
- D3 platformが集める生データの量は1日あたり1,500TB。2週間に1度50PBのデータをADCのHiLsに送る。
さらに、MünchenにあるR&DセンターFIZには、Driving Simulation Centerを建設中。2020年に完成予定である。
また、2017年からチェコSokolovにテストコースを建設中。
- 2020年代初めに稼働予定。自動運転用のテストコースで、広さは500ha。MünchenのFIZから車で2時間半の距離にある。
- BMWにとってAschheim(München近郊、1971年~)、Miramas(南フランス、1986年~)、冬季試験用Arjeplog(スウェーデン、2006年~)に次ぐ4番目のテストコース。
▽自動運転開発のための試験車両
BMWは2011年以降、ドイツの高速道路A9や米国、中国、イスラエルに試験車両を投入してデータ収集を行っている。
- 試験車両は7 Seriesを改造したもの。
- 台数は約80台、そのうちの60台がUnterschleißheim周辺を走行している(2019年3月時点)。
- 2019年末までに140台、2020年までに185台に増やす。
▽自動運転開発の提携パートナー
Daimlerとの長期開発協力を2019年7月に発表した。
- BMWはそれ以前にFCA、Intel/Mobileye、Continental、Magna、Aptiv、百度(Baidu)などとも、自動運転プラットフォームの開発で協力してきた。これらのパートナーとの協力関係を維持したままDaimlerとも協力する。
高精度地図では、HEREとNavInfo(四維図新)と協力。
5G通信インフラでは、5GAAに加盟。
FOURIN世界自動車技術調査月報
(FOURIN社転載許諾済)