<高齢者事故対策>ペダル踏み間違い防止や通信技術と組み合わせた逆走防止など様々なアプローチが登場

2019.05.20
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高齢者による事故が社会問題化している。自動車メーカーや部品メーカー各社は、特に高齢者に多いとされるペダルの踏み間違いや逆走に歯止めをかけるために、様々な角度から製品開発を継続している。

日本国内における交通事故件数や事故死亡者数は運転支援システムの性能向上や搭載車の増加により、全体としては減少傾向にある。その一方で、65歳以上の高齢ドライバーの事故死亡者比率は増加傾向にあり、2018年は全体の5割を超えた。

日本の交通死亡事故者と高齢者比率のグラフ。2013年~2018にかけて、交通事故件数は63万件から43万件へと減少。交通事故での死亡者数も4438人から3532人へとほぼ右肩下がり。一方、65歳以上の事故死亡者比率は52.0%から55.7%へと徐々に増加している。高齢者事故の主な原因としては、ペダル踏み間違いや逆走が挙げられる。高齢者は、一般に注意力が散漫で、身体の衰えにより、適切なタイミングで適切な運転行動をとれないことが背景にある。

自動車メーカー各社は、高齢者事故が社会問題化し始めた2017年頃から、主力モデルの更新を機に、ペダル踏み間違いによる誤発進・誤後退を防止する機能を含む安全運転支援パッケージの標準装備化を進めている。

ペダル踏み間違い防止に向けた技術提案

運転支援システム搭載車の普及

日本国内では、高齢者をはじめとした事故の防止に向けた取り組みとして、2017年よりサポカー、サポカーSの制度を導入。

  • 官民で連携して運転支援システム搭載車の普及啓発を行う。
  • 緊急自動ブレーキや踏み間違い防止機能など装備した車両を安全運転サポート車(サポカー)として認定。
  • 安全運転支援機能によって区分が分けられている。
  • サポカーは自動ブレーキを搭載した車両。サポカーSは踏み間違い防止も追加される。
  • サポカーSでは、自動ブレーキ機能に応じて3段階に区分が別れており、ベーシックでは対車両の低速時ブレーキ、ベーシック+では、30km/h超での対車両自動ブレーキ、ワイドでは、対歩行者の自動ブレーキや車線逸脱警報、オートハイビーム等が追加される。 

 

また、日本の自動車メーカー各社は2017年以降、主力モデルの全面改良や一部改良などを機に、独自の安全運転支援システムの標準装備化を進めている。

トヨタ/ダイハツ:後付け式の踏み間違い加速抑制システム

トヨタやダイハツは2018年末、後付け式の踏み間違い加速抑制システムを発売した。

システムは超音波ソナーとコントローラー、車内警告表示機を組み合わせたものである。安全運転支援システムのパッケージが設定されていない旧型モデルにも設定できるようにして、誤発進・誤後退による事故を根本から減らすことを目指す。

  • Toyota Safety Senseなどの運転支援パッケージ非搭載車である既存・旧型モデルでの安全運転を支援することが目的。
  • 2018年末の段階でトヨタは先代Prius(2009~2015年12月以前型)とAqua(2018年4月以前の型式)に搭載が可能。ダイハツについては、累計販売台数が多い2007年12月に発売した軽トールワゴンTanto(2代目)向けに設定。
  • 両社とも、今後対応車種を拡大する方針。

 
トヨタの仕様
トヨタの仕様は、前後に各2つ超音波ソナーを追加で搭載。このほか室内にはドライバーへの表示機やコントローラーを追加する。

  • ソナーが車両前後3m以内の障害物を検知。
  • 障害物を検知した状態で、間違ったシフトポジションに入れると室内のディスプレイで音声と表示で警告。それでも車速5km/h以上でアクセルを踏み込んだ場合、加速を抑制する。加速が抑制されるため、衝突時の被害が低減できる。またドライバーは落ち着いてペダルの踏み間違いを修正できる。
  • 後退時には、ソナーが障害物を検知していない状態でも、5km/hでアクセルを踏み込んだ場合に、表示/音声での警告と加速を抑制する。これにより駐車場での踏み間違いによる暴走を防ぐ。
  • システムはトヨタとデンソーとの共同開発。ドライバーへの表示機については、名古屋大学と共同で研究。緊急時に高齢者が認識しやすいような表示法とした。 

 

トヨタの後付け踏み間違い加速抑制システムの構成

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ダイハツの仕様

ダイハツもトヨタとほぼ同じシステム構成で、一部の機能が異なっている。

  • 車両前後3m以内の障害物を検知。
  • 障害物を検知した状態で、アクセルを踏むとエンジンへの燃料供給をカットし、加速を抑制する。
  • トヨタとは異なり、後退時に障害物を検知していない状態での加速抑制機能は設定されていない。

 

カーナビによる逆走時の警告

逆走防止技術も増えている。多くの自動車メーカーはドライバーに逆走を警告する機能のあるカーナビを展開している。

さらに2018年10月には、日産が逆走報知機能付きナビゲーション技術をパイオニアにライセンス供与した。ライセンス供与により、逆走報知カーナビの搭載数を日産車以外にも増やすことで、社会問題化している高齢者事故の解消を促す狙いである。

自動車メーカー各社:逆走防止カーナビ

日本自動車メーカー各社は、高速道路での逆走防止対策として、ナビゲーションで車両の逆走を通知する機能を導入している。

  • 具体例としてホンダ純正品であるインターナビでは、車両のGPSによる位置情報と車速、シフトポジション等のデータから、車両の進行方向を検出し、音声とナビ画面上でドライバーに通知する。
     

ホンダ、インターナビの逆走通知

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日産:逆走報知カーナビ技術をライセンス供与

日産は2018年10月に、日産が独自開発した逆走報知ナビゲーション技術をパイオニアにライセンス供与したことを発表した。

  • 日産はパイオニアへのライセンス供与を通じて、逆走通知システムの普及を図る。これにより、社会全体での自動車の安全性や快適性向上につなげる。
  • パイオニアは、2018年秋に同システムを搭載したカーナビシステムを発売。順次、搭載機種を拡大する計画。
  • GPSや地図、車速のデータをベースに車両の逆走を判定。
  • 車両前方地図の分岐や合流地点に逆走判定エリアをリアルタイムに生成する。判定エリアを通過した後に、再度判定エリアに侵入した場合に、逆走と判断して、ナビ画面上でドライバーに通知する。

 

 逆走車の検知・情報提供システム

逆走事故防止には、周辺車両へ逆走車の存在を通知するシステムも開発されている。

路上検知装置や車載通信を利用してクラウドに車の位置情報や進行方向を集約する。クラウド側で逆走車を検知すると、逆走車に警告し、周辺走行車にも逆走車の存在を通知する。このようなシステムを日本のアマネク・テレマティクステクノロジーやドイツのBosch(欧州で展開)が開発・実用化している。

古河電工:逆走検知システムレーダー

古河電工は2018年11月、準ミリ波レーダーを用いた逆走検知システムを開発したと発表。

  • 24GHzレーダー技術を活用することで、従来のカメラ画像処理方式やレーザー方式に比べて、夜間や悪天候下でも安定した検知が可能となっている。
  • 検知システムを用いて、逆走車への警告や周辺走行ドライバーへの逆走車両の通知機能の開発などに役立てる。
  • 古河電工は2017年3月に、NEXCOの高速道路逆走対策技術の公募に選定された。技術テーマは道路上の逆走車両の検知とその情報収集であり、検知率の向上を目指し、実際の高速道路で実証実験行ってきた。

アマネク・テレマティクスデザイン:マルチメディア放送による逆走通知

自動車向けマルチマディア放送を手がけるアマネク・テレマティクスデザイン(アマネク)は、放送機能を活用した逆走情報提供システムを提案している。

  • 路上に設置した逆走検知センサーや通信カーナビ(逆走検知機能付き)搭載車両の位置データを基に、逆走車両が存在する区間を通行する車両に注意喚起を行う。
  • 逆走車両の位置などのデータを高速道路管理者のシステムサーバー等を経由して取得。アマネクのマルチメディア放送のチャンネルアプリや車載機を通じてエリア内を走行する車両に逆走車の存在を通知する。
  • 同技術は2017年3月に、NEXCOの高速道路逆走対策技術の公募*に選定された。選定された技術テーマは車載器による逆走車両への注意喚起、自動車側での逆走の発見及びその情報収集。

 
Bosch:クラウド使用した逆走通報

Boschは2019年初旬時点で、クラウドを活用する逆走検知・警報システムを欧州地域で展開している。

  • 通信機能を活用して各車両の位置を定期的にクラウドに集約。クラウドのデータベースの保存されている、車両走行可能な進行方向データと車両の進行方向データを比較して、逆走を検知する。
  • 逆走を検知すると10秒以内に逆走車両と逆走車両が走行するエリアに存在する他のドライバーにも通知する。

2018年春頃には、ドイツのラジオ局ANTENNE BAYERNと提携。

  • 提携によりANTENNE BAYERNのアプリ等を通じて、25万人のユーザーにBoschが検知した逆走情報を配信することができる。

 

日産の逆走防止カーナビ技術

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(FOURIN社転載許諾済み)

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