<ZF>CASE分野の技術力強化にむけた攻め続ける経営戦略とは
2019.08.23ZFは2018年2月にCEOが交代したが、2025年に売上高400億ユーロを目指す以前からの経営方針に変更はない。2018年の売上高見通しは365億ユーロと前年並みに留まる(同年6月発表)。M&Aによって世界トップ3に躍り出るまでの成長を遂げたが、その後2016年からは足踏み状態となっている。
しかし、自動運転や電動車、モビリティサービスなどの次世代技術への取り組みは積極的であり、2025年目標達成への布石は着実に打っている。
部門 | 2016年 | 2017年 | (前年比) |
アクティブ& パッシブセーフティ |
13,645 | 13,970 | (2.4%) |
乗用車 パワートレイン |
7,981 | 8,725 | (9.3%) |
乗用車シャシ | 6,447 | 6,484 | (0.6%) |
商用車向け | 2,960 | 3,172 | (7.2%) |
アフターマーケット | 2,815 | 3,007 | (6.8%) |
産業向け | 2,552 | 2,530 | (▼0.9%) |
Eモビリティ | 862 | 924 | (7.2%) |
2017年末までCEOを務めていたStefan Sommerの解任理由はその積極的な拡大路線であったというが、2018年に入ってもR&D機能強化に向けた他社の買収や出資は継続している。
2019年1月にはエンジニアリング会社のルーマニアBeeSpeedの自動車事業の子会社化けを予定通り実施(発表は2017年5月)、 ZFの子会社BeeSpeed Technical Engineering Centerとなった。従業員数は2018年12月現在の110人超であるが、2020年までに230人超まで増員予定である。
このほか、2018年10月には、ドイツのエンジニアリングコンサルタント会社ASAPの株式35%以上を取得したと発表した。
他社との提携にも動いており、2019年1月のCESではMicrosoftとの提携拡大を発表。両社は2018年1月からクラウドベースのサービスで提携しており、ZFはMicrosoft Azureベースの商用車向けフリートマネジメントサービスの運用を開始したほか、予備的メンテナンスサービスの開始も予定している。
都市向けの自動運転電動小型シャトルの開発・生産では、ドイツe.GO Mobileと合弁事業e.GO Mooveを展開。自動運転電動ミニバスe.GO Moverを2019年からe.GOの生産拠点(ドイツAachen)で生産開始するほか、ドイツやフランスの都市での事業開始に向けてフランスの公共交通事業オペレーターTransdevとの提携を発表した(2019年1月)。
このほか、IoT化などデジタライゼーションのための施策も進めており、向こう数年間に30億ユーロ超の投資を計画。
ドイツSaarbrücken工場では、8億ユーロを投じて、IoTの導入や設備刷新、インフラやサプライヤーパークの整備を行うほか、Friedrichshafenの本社工場では2016年から6年を費やす改装を行っているが、2018年末までに自動化したロジスティクスシステムやドローンによる部品輸送システムの導入などを行った。
人事異動動向(2017年12月以降)
CEOの交代
・2017年12月7日付けでStefan Sommer CEOが解任された。
Sommer CEOは2012年5月にCEOに就任し、2016年6月には5年間の任期延長が決まっていたが、ZF財団の意向を受けて解任を決めた。
・2018年2月1日付けでWolf-Henning Scheider がZFのCEOに就任。Scheiderは前職はMAHLE CEO。
Scheider就任までは、財務担当役員で副CEOのKonstantin Sauerが暫定CEOを務めた。
取締役会役員の交代
・2018年6~7月に2人の役員の人事異動を発表した。まず、2018年6月に同年9月30日付けで、2人の役員の退任を発表。
1人はコーポレートマーケット担当のPeter Lakeで、2015年から3年間としていた契約期間が満了となったため。もう1人は人事担当のJürgen Holeksaで、個人的事由によるもの。2011年7月から同職にあった。
・2018年7月、Lake、Holeskaの後任となる人事を発表。
人事担当は、2019年1月1日付けでSabine Jaskulaが後任に就任。前職はContiTechの人事担当上級副社長で、2001年以降Continentalで要職を歴任。
コーポレートマーケットの職責は別の販売・マーケット担当と統合して消滅。新たに、2018年10月1日付けで取締役会入りしたHolger Kleinは、2017年から務めていたZFの乗用車シャシ部門に加え、アフターマーケット担当、アジア・大洋州担当、インド担当、キーアカウントマネジメント担当、アジア・大洋州・インドの乗用車担当を兼任することとなった。
M&Aおよび他社との提携動向
買収・出資
・2019年1月、ルーマニアのエンジニアリング会社BeeSpeedの自動車部門を買収。ZFとは2008年からブレーキシステムの開発で提携しており、2017年5月に親会社BeeSpeedが同部門のスピンオフ後、買収することを発表していた。
買収後は、ZFの子会社BeeSpeed Technical Engineering Centerとなる。本拠はTimisoara。自動車部門の責任者で、BeeSpeedの共同オーナーであるSever Scridonが引き続きトップを務める。
BeeSpeedの自動車部門の2018年12月時点の従業員数は110人超。2020年までに230人超まで増員予定。
・2018年10月、ドイツのエンジニアリングコンサルタント会社ASAPの株式35%以上を取得したと発表した。出資を通じて、自動運転や電動車の開発能力を強化する。
ASAPは世界11拠点に1,100人以上の従業員を擁する。
Microsoftとの提携拡大
・2019年1月、Microsoftとクラウドについての提携を拡大すると発表。両社は2018年から提携しており。MircosoftのクラウドAzureをベースとしたIoTプラットフォームをZFが使用している。
-019年初までに、商用車向けフリートマネジメントシステムを運用開始。バスメーカーVDLでは、300台超の電動バスにフリートマネジメントシステムを搭載。
2019年からは、フリート事業者向けの予備的メンテナンスサービスを提供予定。
都市向け電動自動運転シャトルの開発と提携動向
小型EVシャトルの量産計画
・2018年6月、ZFとドイツAachenのe.GO Mobileの合弁会社e.Go Mooveが、e.Go Mobileの拠点で2019年に乗貨輸送向け自動運転EV(people and cargo mover、自動運転の多目的ミニバス)のe.GO Moverの生産を開始することを発表した。
生産開始当初は、年間数万台規模の生産を計画。ZFは向こう5~7年間でこうした車両への需要が年100万台規模に達すると見ている。
10~15人の乗員の移動手段のほか、宅配サービス向けの自動運転EVとして活用する想定。
Transdevと提携
・2019年1月、e.GO Mobile、フランスの公共交通事業オペレーターTransdevと、自動運転車の開発で提携することを発表。
e.GO Mooveが電動の自動運転シャトルのe.GO Mover、ZFが電動ドライブシステム、ステアリングシステム、ブレーキ、ProAI(AIベースコンピューター)、センサー類を提供。Transdevは監視システム、インフラとの接続、顧客アプリケーションを提供。
2020年までに、ドイツとフランスの都市を中心に展開予定。
工場のデジタライゼーション動向
・2018年12月、ドイツSaarbrücken工場に向こう4年間で8億ユーロを投資することを発表。
製品の改良や生産工程の改善に向けた30億ユーロ超の投資計画の一環で、Saarbrücken工場ではIoTの導入、設備刷新とインフラやサプライヤーパークの整備を行う。
トランスミッション生産を手掛ける同工場は、長期的には電動化の進展によって生産規模や人員の縮小が見込まれるが、IoTの活用によって競争力の強化・維持に繋げたい意向がある。
・2018年11月、ドイツ国内の企業としては初めて工場敷地内でドローンを飛行させる認可を取得。Friedrichshafen工場内の2つの生産ホールに部品を輸送する。使用するドローンはモーターを6基搭載し、最大3kgまでの物品の輸送が可能。
・Friedrichshafen本社工場は、2016年から設備刷新工事を続けており、完工予定の2022年までに6億ユーロを投資予定。
6億ユーロのうち、2018年末までに2億ユーロ程度を費やし、自動化したロジスティクスシステムや、TraXon Hybrid(商用車向けモジュールAT)の組立設備導入、Industry 4.0の技術導入などを実施した。
このほか、約7,000万ユーロを投じて新たなトランスミッションのテスト施設を設置予定。
決済サービス事業をスピンオフ
2018年7月、ZFが米国IBMやスイスの大手銀行UBSなどと共同で立ち上げた決済サービスCar eWallet事業をスピンオフした。新会社Car eWalletの本拠地はドイツBerlin。
ブロックチェーン技術ベースで、高速道路の利用料、駐車料金、EVの充電、カーシェアリングなどでの利用を想定。
2018年後半より試験運用を開始。
欧州委から1億ユーロの罰金が科される可能性を示唆
・2018年12月、同年第4四半期に1億ユーロの特別費用が発生したことを発表。2011年に欧州委員会が当時のTRWに対して開始した、シートベルトやエアバックなどの乗用車向け安全部品の捜査の結果生じる罰金を支払うための予備的措置。罰金の詳細は2019年上期に決定する見通し。
技術関連団体に参加
ブロックチェーン技術普及を目指す団体を設立
・2018年5月、自動車メーカーなどとMobility Open Blockchain Initiative (MOBI)を設立。安全で効率的なデジタルモビリティサービスを提供するためのブロックチェーン技術の普及が目的。
車載通信向けセキュリティ技術の団体に加盟
・2018年4月、OTA (Over-the-Air)更新や車両デジタル診断ソリューションのためのマルチベンダーイニシアティブ、eSync Allianceに加盟したと発表。
eSyncは、米国Excelforeが開発した車載エンドディバイスによる通信向けのセキュリティ技術で、eSync Allianceは同システムを採用する企業の集まり。
OTA更新やデジタル診断向けのeSyncプラットフォームの標準化、相互運用性の確立を目指す。
中・東欧で新工場を開設
ポーランド
・2018年1月、ポーランドCzestochowa拠点を1万㎡拡張し、ADAS向けエレクトロニクス部品の新工場を追加すると発表。
Czestochowa工場は2019年末稼働。フル稼働時の従業員を300人とする計画。生産品目はカメラ、エアバッグ制御ユニットなどのADAS関連製品。
セルビア
・2018年4月、セルビアPančevoに、Eモビリティ事業向けの新工場を建設すると発表した。同年6月に建設を開始し、2019年に稼働予定。
生産品目は電動車向けモーターやジェネレーター。敷地面積は約2万m2。Pančevo市が無料で貸与。
投資額は第1フェーズ(2018~2021年)に約1億ユーロで、10.8ヘクタールの建物を建設予定。第2フェーズとして、2022年以降に生産工場を増設する見通し。
従業員数は第2フェーズ終了までに1,000人の予定。
FOURIN世界自動車調査月報
(FOURIN社転載許諾済み)