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自動車整備士を辞めたいけど、「整備士以外にどんな仕事ができるのか分からない」という人は多いはず。
この記事では、整備士を辞めたい人向けに、おすすめの職種を紹介します。実際に異業種に転職した人の体験談も紹介するので、転職活動の際の参考にしてください。
「整備士を辞めたい…」よくある理由は?
整備士を辞めたいと思っている人、多いですよね。
まずは、多くの人が「整備士を辞めたい」と感じる際のよくある3つの理由を見ていきましょう。
- 整備士が辞めたいと思う理由3つ
辞めたいと思う理由1:給料が安い
SNSなどでも度々話題になっているように、「給料が安いこと」を理由に辞めたいと考えている整備士は多いようです。
- 自動車整備士と全職種の平均年収
日本自動車整備振興会連合会の「自動車整備白書(令和4年度版)」によると、2022年の整備士の平均年収は404万4000円(平均年齢46.7歳)。一方、国税庁の「令和4年分 民間給与実態統計調査」によると、同じ年の全職種の平均年収は457万6000円(47.0歳)なので、整備士の年収は全体より50万円ほど低くなっています。
辞めたいと思う理由2:休日が少なく残業も多い
近年、自動車整備士の労働環境は以前に比べると改善されてきました。しかし、まだ他の産業に比べると「休日が少ないこと」や「残業が多いこと」を理由に辞めたいと思う整備士も少なくありません。
自動車整備士の年間休日は、企業の平均である120日前後より少ない104~110日程度の会社が多い傾向にあります。
残業については、2019年4月に施行された働き方改革関連法以降、残業時間は減ってきています。よほどのことがない限り決められた時間内に収まるように改善されてきており、以前のように「毎日のように遅くまで残業がある」という例は減ってきています。車検が多くなる3月から4月などの繁忙期はいつもより残業時間が多く生じる傾向はあるようです。
辞めたいと思う理由3:職場の人間関係が良くない
職場の人間関係に不満を感じている人もいます。
整備士の職場は、年功序列が色濃く残っていたり、体育会系の雰囲気があったりするところも多いようです。できる人に仕事が集中しがちで、「仕事ができない先輩のほうが、早く帰れる上に給料も多くもらっているなんて……」と思うこともあるでしょう。そんな理不尽な状況に「辞めたい」と思っても無理はありません。
自動車整備士におすすめの転職先って?
整備士を辞めたいと思っても、「どんな職種に就けるのか分からない」と思う人は多いはず。
ここでは、自動車整備士が転職する際におすすめの職種を紹介します。
- 自動車整備士向けのおすすめの転職先
※推定年収は、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の決まって支給する給与額(×12)と年間賞与額・その他特別給与額をもとに算出。自動車整備士の月給は33万700円、賞与は90万7200円で、推定年収は487万5600円(平均年齢40.2歳)です。
整備士の経験を生かす職種【資格必要】
「せっかく取得した整備士資格を生かして転職をしたい!」という人は多いでしょう。以下の職種では、自動車整備士の資格を生かして働くことができます。
- 整備士の経験を生かす職種【資格必要】
バス・タクシー会社の整備士
一般の乗用車ではなく、自分の会社のバスやタクシーを整備するので、業務中にお客さんと関わらなくて済むのが特徴です。バス会社の場合、1つの車両対して数人のチームで業務を行います。
あらかじめ決まったスケジュールで整備・点検を行うので、残業はほぼありません。転職の際は、2級資格を持っていれば問題ないでしょう。
自動車整備士学校の講師
求人の数はそこまで多くはありませんが、自動車整備士を養成する専門学校の講師に転職するのも一つの手です。
教員の資格や免許は必要なく、整備士の2級資格と実務経験(3年以上)を応募資格としている場合がほとんど。基本的には土日休みの完全週休2日制で、月給は平均35万1000円と、給与アップも期待できます。
整備士の経験を生かす職種【資格必要なし】
以下の職種では、整備士資格は必要なく、整備の仕事で培った経験を生かして働くことができます。
- 整備士の経験を生かす職種【資格必要なし】
カーディーラーの営業
カーディーラーの営業では、車の仕組みや性能に関する知識が強みになります。お客さんと話すことも得意だという人に向いているでしょう。
基本給は整備士より比較的高く、推定年収は533万4900円(40.8歳)。営業成績が良ければ歩合が支給されるので、頑張り次第で稼げる職種です。
メーカーの技術職(自動車・部品・機械)
メーカーの技術職は、大学で機械工学や電気工学を学んでいたことを応募条件にしている企業が多いですが、整備士経験を持つ人を受け入れているところもあります。
推定年収は712万200円(41.5歳)と高く、基本的には土日休みの完全週休2日制。中には、スキルアップを支援するために、業務で使用するツールの研修制度や「技術士資格」の取得をサポートする制度を設けている企業もあります。
メーカーのサービスエンジニア
整備士から機械製品や重機の整備・点検を行うサービスエンジニアになる人も多くいます。顧客のところに出向いて製品の状況を説明する仕事のため、コミュニケーションに自信があるという人に向いています。
平均残業時間は整備士より5時間ほど多いですが、平均推定年収は511万9600円(41.8歳)で、24万円ほどの年収アップが期待できます。
カー用品店やレンタカーの店員
カー用品店やレンタカー店で働く場合も、車の仕組みや部品に詳しいことが強みになります。
販売店員の推定年収は330万円6600円(39.9歳)と低めですが、残業はないことがほとんどで、整備士のように常に仕事に追われることはあまりありません。洗車や整備・点検を行うこともあるので、整備士の経験は転職の際に有利になるでしょう。
損害保険会社の技術アジャスター
損害保険会社の技術アジャスターは、車両事故が起きたときに損害の調査や修理費の算出を行う仕事です。資格が必要な職種ですが、入社時に資格を持っている必要はありません。
経験を積んで歩合制の業務委託で働く人もおり、この場合は実力次第で稼ぐことも可能。基本的には完全週休2日制です。
自動車と関わりのある異業種
整備の仕事は辞めたいけど、「自動車に関わる仕事はしたい」「自動車を運転するのは好き」という人には、以下の職種がおすすめです。
- 自動車と関わりのある異業種
運送会社のドライバー
運送会社のドライバーは、拘束時間は長いものの、基本的には1人で動くので自分のペースで働くことができます。
大型トラックの場合は、中型・大型自動車免許が必要です。残業時間は39時間と多めですがその分稼ぐことができ、推定年収は485万2800円(50.6歳)です。
タクシーやバスの運転手
タクシーの運転手の推定年収は418万9900円(59.7歳)。整備士より低いですが、歩合制なので時期や場所によっては稼ぐことが可能です。東京都の推定年収は425万円、大阪府は437万円と平均を上回っています。隔日勤務の場合、1勤務あたり20時間前後(休憩3時間)働くこととなりますが、必ず翌日が休みとなります。
バス運転手は3交代制になっているところが多く、不規則な生活となりますが、推定年収は453万1900円(53.9歳)で、整備士より30万円ほど低くなっています。
整備士から転職を決めた理由は?【転職体験談】
整備士から異業種への転職となると、勝手がわからず不安になってしまいますよね……。
ここでは、以下の職種について整備士からの転職体験談を紹介します。
- 自動車整備士から異業種に転職した4人の体験談
「カーディーラーの営業職」に転職したAさん(20代前半)
整備士から営業に転職を考えた理由は、フロントで活躍する先輩の姿を見たからです。整備の仕事にやりがいを感じなくなってきたことも大きな動機となりました。20代のうちにバリバリ稼ぎたいという気持ちもあったため、単価の高い輸入車ディーラーを第一志望群として転職活動を行いました。
社歴が浅いまま異業種に転職することにしたので、若手ならではの意欲的な姿勢をアピールすることが大切だと考えていました。人材紹介会社のキャリアアドバイザーからも、熱意を伝えるために志望動機を詳しく書いた書類を事前に送るようにアドバイスを受けました。添削もしていただけたので、自信を持って送ることができました。
志望していた輸入車ディーラーは、顧客となる層が高級志向であることから、選考中は言葉遣いや身だしなみ、立ち居振る舞いも評価されると思います。面接では、スーツや時計などの身につけるものにも気をつけるようにしました。
「機械メーカーの保守・メンテナンス」に転職したBさん(30代前半)
年収を上げたいという気持ちと、所有から共有へ移り変わる自動車業界に対する漠然とした不安から転職活動を始めました。
自動車整備のスキルは生かしたいと思っていたので、自動車と仕組みが似ている機械の整備ができる企業を探し、今の会社に入社を決めました。
面接は、ただ質問に答えるだけのコミュニケーションでは、なかなか内定をもらうことは難しいと思います。「この人と働きたい!」と思ってもらうために、客観的に「仕事ができそう」という印象を与えられるような話し方が大切になります。競合となる他社と比較した上で、なぜその会社を第一志望に選んだのかを論理立てて話せるようにしたほうが良いでしょう。
「建設機械メーカーの保守・整備」に転職したCさん(30代後半)
最初は整備士として大型車ディーラーへの転職を考えていました。しかし、もう一つの条件としていた土日休みの会社はなかなか見つけられず……。自分で探すのは限界があると感じ、人材紹介会社に登録してキャリアアドバイザーに相談したところ、建設機械メーカーの保守・整備を紹介してもらいました。
建設機械は、自動車と仕組みが似ているものも多く、職種内容の親和性も高かったため、自分の知識やスキルを直接的に生かせると考えました。また、教育体制に力を入れているところも入社の決め手となりました。
保守・整備の仕事は、顧客のところに出向くこともあるため、面接では質問に対して分かりやすく回答できるかどうかを見られていたと思います。私の場合、笑顔やハキハキした話し方も評価され、第一印象も大事だと感じました。
「損害保険会社の技術アジャスター」に転職したDさん(40代前半)
整備の仕事を20年続け、ある程度スキルを高めることができたので、さらなるステップアップを考えていました。体力的に厳しくなってきたこともあり、土日休みで年間休日も120日前後ある技術アジャスターへの転職を考えました。
実際の業務では、事故の当事者や整備工場との交渉も必要なので、面接では冷静に自分の意見を話したり、今までの業務経験を説明したりする力が見られると思います。報告書や見積書も作成するため、WordやEXCELなどのオフィスツールは使いこなせたほうが良いでしょう。私は事前に教本を購入して一通り覚えました。一から新しいことを学ぼうとする姿勢自体もアピール材料になると思います。
勢いだけの転職はNG!叶えたい条件を考えよう
整備士を辞めても良いのか、今一度考えてみましょう。
「整備士=給料の低い」「休みが少ない」と思ってしまいがちですが、全ての職場がそうだとは限りません。整備士の仕事を辞めなくても、今よりも給与や福利厚生の条件が良い職場が近くにある可能性もあります。
一度冷静になって、「月収30万以上がほしい」「土日休みが良い」「さらなるスキルアップを目指したい」など、叶えたい希望を具体的にした上で、求人が載っているサイトや求人紹介サービスを利用してみると良いでしょう。
整備士として転職したい人は、「自動車整備士におすすめの転職先・転職方法」を参考にしてください。