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整備しやすく、面白い。
BMW/MINI整備士の知られざる魅力

転職先として、どこか敷居が高いイメージの輸入車ディーラー。
その中でも、整備する面白さと教育研修の充実で高い人気を誇っているのが、BMWグループ。その魅力について、全国のディーラー整備士の研修を一手に引き受ける研修センターの技術研修の責任者・高橋氏にお話を伺った。

BMW / MINIの整備士は顧客対応を行わない

BMW / MINIの整備士は、
メカニックでもエンジニアでもなく、
「テクニシャン」と呼ばれますね。

BMW Groupでは、メカから最先端技術まですべてに精通し、車のコンディションをパーフェクトに保つ整備のプロとしてこの仕事を位置づけています。そのため、BMWのテクニシャンは顧客対応…いわゆるフロント業務をほとんど行いません。その分、整備士にしかできない仕事に没頭してほしいからです。

労働者の権利が非常に強い本国ドイツでは、テクニシャンは非顧客対応スタッフと定義されています。出張で向こうのディーラーを訪問し、サービス工場を見学に行くと、テクニシャンは私たちに挨拶さえしないんですよ(笑)。テクニシャン達は、規定の作業時間で仕事が終わるよう一心不乱に作業しているためです。整備士は整備士にしかできない仕事に集中する。職人の国らしい、とても無駄がない考え方ですよね。

BMWグループの整備士について語る高橋氏の写真

整備だけに没頭したい人には最適ですね。ちなみにもし顧客対応がしたくなった場合、ジョブチェンジすることは可能ですか?

もちろん可能です。年齢とともに人とのコミュニケーションが楽しくなり、接客に興味を持つ整備士もいらっしゃいます。そういう方のために、サービス・アドバイザーという、顧客対応を行う専門職が用意されています。顧客とテクニシャンとの仲介役として、顧客にはクルマの症状や具合を説明し、テクニシャンには的確な指示を出す。かなりの専門知識が要求されるため、10年くらい整備経験を積んでからジョブチェンジする方が多いですね。

BMWグループにおける整備士からのジョブチェンジについて語る高橋氏の写真

「外車は整備しづらい」という誤解

輸入車は整備が難しいという印象をもたれがちです。実際はどうですか?

私自身も国産車メーカーからBMWに来たときは敷居が高い印象がありましたが、実際は違いますね。メンテナンス性が考慮されていないのは、イギリスやイタリアのスポーツカーブランドの話で、ドイツ車をはじめとする大衆車ブランドは、整備の際のパーツの着脱もしっかり考慮の上で設計されていますし、マニュアルも整備されています。

中でもBMWは、国産車以上に整備しやすいかもしれません。理由は、工数を大幅に削減するスペシャルツールが多数導入されているからです。

スペシャルツールとは具体的に
どのようなものですか?

エンジンを組むときを例に説明しましょう。通常、バルブタイミングを合わせる際って、クランクとカムシャフトの位置を決めてから、チェーンを山の数を数えながらはめますよね。BMW / MINIの場合は、クランクシャフトとカムシャフトをそれぞれ専用のツールでカチッと固定し、ベルトのテンションを張って、ボルトを締めるだけ。ツールを使えば自動的にクランクとカムが正しい位置に来て、タイミングが合うんです。簡単でしょう?

他にもトルクスから電気系のテスターに至るまで…何十種類もの専用工具が開発され、各ディーラーに導入されています。テクニシャンは、一般的な工具とスペシャルツールを使い分けながら、整備にあたるわけです。整備の時間が格段に短くなりますよ。

私はワークショップ等で国産メーカーの方ともよくお会いするんですが、みなさん「どうしてこんなにスペシャルツールがあるんだ」と驚かれますよ。国産メーカーはディーラー数が多いため、なかなか導入できないみたいですね。

  • スペシャルツールが収められたボックスケースの写真
  • スペシャルツールの写真
    スペシャルツールの一つ。ピストンピン&クリップに使用するツール
  • スペシャルツールの写真
    こちらはカプラー別に用意されたテスト用ツール。このツールを使用することで、細い穴に針金を差し込まず、直接テスターで素早く正確に通電チェックができる。

とはいえ初めてBMW /MINIをいじる方は、戸惑いもあるのでは?

それは他のメーカーや国産メーカーも同じでは? 確かにドイツ車特有のDIN規格のコードや端子番号を覚える必要はあります。でも、それらを一度覚えてしまえば、あとがラクです。例えば、緑のコードはイグニッションONのときに電気が流れ、アクセサリーやイグニッションOFFのときは電圧がかからない…というように。

整備士学校で学生向けにイベントをやっているときによく言うのですが、BMW / MINIでの整備は、テレビゲームと同じです。最初はやり方がわからなくても、ひとたびルールや方法を覚えると、グンと楽しく楽になる。整備のプロとして、もっと上を目指せるようになっているんです。

BMW、MINIの整備について語る高橋氏の写真

ビギナーからエキスパートまで…幅広い研修メニュー

入社間もないテクニシャンをサポートする設備として、
この研修センターがありますね。

整備学校を卒業したての新米テクニシャンから最新の技術情報を知りたいベテランまで…
幅広い層に合わせたトレーニングメニューをご用意しています。入社後は、半年以内にアプレンティスという基礎研修を整備士資格または経験がある方は2日間、無資格未経験の方は4日間受講していただきます。

  • BMW Groupアカデミー幕張の外観写真
    日本にはここ幕張と神戸の2箇所が存在し、北海道から九州まで…全国のディーラーから受講しに来ている。年間受講数は8000人に及ぶ。
  • 研修センターで行われる座学研修の写真
    この日も座学研修が行われていた。

その後の研修メニューは?

レベル別に、パーツやユニットごとの研修が数日間単位で用意されています。例えば入社2年半以内の方を対象とした「ベーシック・イベント」では、5日間のパワートレーン研修やエレクトリック研修。3年目以降を対象にした「アドバンス・イベント」では、4日間のディーゼルエンジン研修や8日に渡るボディ電装研修…といった具合です。受講のタイミングは自由ですが、規程期間内にテクニシャン全員が必ず受けて頂く必修科目になっています。

泊まりがけになりますが、ホテル等はすべてこちらで手配しますし、移動時間を考慮したスケジュールになっていますから、参加はしやすいと思いますよ。また、研修センター以外でも受けられるWBT(Web研修)も複数用意しています。

転職者に人気のある講座はありますか?

そうですね、国産車出身の人に定評があるのは、「12ヶ月点検の内容をBMW Groupとしてのやり方でやったらどうなるか」という4日間の研修です。先ほどのスペシャルツールのような話になりますが、12ヶ月点検のような検査項目が決められた作業をBMW Groupのリペア マニュアルに従って、様々なスペシャルツールを駆使して行うとどれだけ正確に高品質の整備ができるかがわかって面白いようですね。

  • 研修センター内にあるMINI車の写真
    研修センターには新旧MINIの姿も。もちろんMINIテクニシャン向けの研修やマイスター制度も完備されている。

研修内容は更新されるのでしょうか?

ええ。昔、2002年にE65というエポックメイキングなモデルが出て、2004年に電気系のトレーニング内容を充実化しました。その頃から、モデルの変遷と共に、かなりの頻度でメニューの見直しをかけるようになりましたね。電気回路やリレーのトラブルが減った今では、その分をブレーキパッドの交換方法と鳴きを減らすグリスアップ術にあてるなど、時代にあわせて柔軟に組み替えています。直近では2019年の1月に「ベーシック・イベント」の内容が改訂されたばかりですよ。整備の練習に使われる実車も1クラス2台以上使用する等、実習中心のトレーニングになっています。

時代に合わせてというと、
電気自動車の研修などもあるのでしょうか?

はい。ハイブリッドや電気自動車の作業レベルによって4段階の資格を設定し、研修を実施しています。活線作業が実施可能な電気自動車版マイスターである「e マイスター」資格を取得するには、下位の3段階の資格取得後、研修と学科、実技試験含めて25日間のプログラムを修了する必要があります。自動車の高電圧から整備士を守るため、電気工事士向けの危険予知の内容をトレーニングに取り入れ、電気の危険性と安全な扱い方を徹底的に学んでいただいています。そして、車種ごとに資格を設け、その車種の資格を持っていないと整備できないようルールで決めています。たとえ同じバッテリーシステムを採用しているクルマでも、資格がなければ整備することは許されません。

加えて、万が一感電事故が発生した際にも、すみやかに整備士を車体から引き剥がせるよう、絶縁体のレスキューツールを開発。その扱い方や心肺蘇生方法、AEDの使用方法も研修で学ぶようになっています。BMW Groupとしては、「絶対にBMW / MINI関係者から死者、怪我人を出さない」という強い信念で取り組んでいるんです。

  • 研修用のBMW車の写真
    研修用の車両は常に最新の車種に入れ替えられる
  • BMW i3のバッテリーユニットの写真
    通電していないにも関わらず厳重に柵が張り巡らされたBMW i3のバッテリーユニットからは、高電圧=危険というメッセージがうかがえる

BMWには研修制度とリンクした、昇級制度『マイスター制度』がありますね。

ドイツの徒弟制度に由来した整備士専門の昇級制度です。エキスパート研修を修了した人には、より専門的にBMW車の整備に精通するための道として、5段階の研修が用意されています。これら全てを修了し、難関のテストをパスした人だけが、テクニシャンの最高の栄誉である『マイスター』の称号を得ることができます。現在、BMWとMINIのマイスターは全国で200名弱。私も入社したてのときにマイスター制度の一次試験を40問近く解かされたことがありますが、全くわからなかったですね。

おそらく、他社の似た制度よりもずっと難しいでしょう。資格取得にはトータル50日間の研修を受ける必要がありますし、テストは観客もいない中、審査員と1対1のガチンコで行われます。国産車メーカーで行われているメカニックコンテストのようなエンタテインメント性があるものとは一線を画す、とにかく、実戦と同じ環境でとことん技術を磨く場なんです。

ちょっとストイックな印象を受けますが、つらかったり苦しかったりしませんか?

いえいえ、そんなことは決してないです(笑)。確かに取得までの道のりは平均10年前後と長いですが、研修自体は車好き・メカ好きならきっと楽しいものになっていると思いますよ。テスト内容も「この車両には故障箇所が一つしかありません。それを制限時間内に探し当てて下さい」という推理ゲームのような内容ですから。
人は好きなことだからこそ極められる。だから我々運営側も、楽しみながらスキルアップできるようなメニューを意識しています。

BMWグループの昇給制度について語る高橋氏の写真

整備の手間を最小に、整備士の悦びを最大に

なぜこんなにディーラーの
整備士のサポートが手厚いのでしょうか?

それは、BMW Groupが「人への投資を重視する」会社だからです。人の悦びを大切にする会社と言った方がわかりやすいかもしれませんね。燃費や快適性だけでなく、人が操る悦びやエキゾーストを聞く悦びを意識して設計する…「BMWは運転するのが楽しいクルマ」というお言葉をよく頂きますが、私としては「整備するのが楽しいクルマ」だとも思います。

整備士としては、手間をかけて整備したらその分クルマからも大きな変化を感じ取れた方が、やりがいを感じますよね。その点、Mシリーズに限らず、BMW Groupのクルマというのはハイパフォーマンス・カー。パーツが消耗するとガクンと性能が落ち、正しく整備をすると、そこからドカンと元のパフォーマンスを取り戻します。整備後のテストドライブで、加速性能や、直進安定性、ハンドルを切ったときの旋回性能…それらが歴然と良くなっていると明確にわかる。この車が生き返ったと感じるフィーリングは、整備する者にだけ許された、クルマのもうひとつの醍醐味だと思うのです。

整備の仕事について語る高橋氏の写真

なるほど。しかも「整備の手間」がスペシャルツールで削減されるので、「手間:悦び」比はさらに大きくなりますね。

そういうことです。スペシャルツールを使い、リペアマニュアル通りに組めば、誰でもハイクオリティの整備が提供できる。BMW Groupがそういう状態を目指しているのは、ディーラーごとの整備クオリティを均一にしたい狙いとともに、整備士が最小の手間でこの「整備する悦び」を得られるように…という想いが込められているのかもしれません。

BMW / MINIのテクニシャンは優秀ですから、他社から高い給料で引き抜かれてしまうこともあるのですが、多くの人が最終的には物足りなくなって、BMW Groupに戻ってくるんです。「やっぱりBMWの整備が一番面白い」って。

  • 研修センター内に保管されているエンジンの写真
    幕張の研修センターには、全ての市販モデルのエンジンが保管されている

最後に高橋さんから、整備士の皆さんにメッセージをお願いします。

先ほど、BMW Groupは「人に投資する会社」だと言いました。でも、一番人に投資しているのは、我々ではなくディーラー各社なのです。修理技術を高めるために我々が設定した「マイスター」という高いハードルを越えるために、ディーラー側も研修内容に期待して、貴重なテクニシャンを年に何日も研修に送り出してくれるわけですから。これほど従業員に投資をしてくれるディーラーは、他には無いと思いますよ。

こうしたBMW Group日本法人とディーラーの関係性も、整備する悦びと整備の手間のバランスも、BMW Groupでしか味わえないものです。私自身もそうですが、車が本当に好きで技術を上げたいと思っている人には、これ以上ない環境だと断言できます。BMWGroupとは、整備する者が愉しい場所ですから。

  • 高橋氏と黒沼の写真

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