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自動車車体整備士は国家資格「特殊整備士」のひとつです。自動車の車体に関する専門的な知識を有し、修理や整備をするプロフェッショナルです。この記事では、自動車車体整備士の仕事内容、資格取得方法、資格取得のメリットなどを解説します。
自動車車体整備士とは|業務内容、自動車整備士との違い
自動車車体整備士は車体の専門家
自動車車体整備士(車体整備士)は、自動車の車体(フレーム部やボディ)の修理と点検、整備を専門に行うスペシャリストです。自動車の車体に関する専門的な知識と技術を持ち、事故などでダメージを受けた自動車の車体を、安全に走行できるように修復する重要な職務を担っています。
車体整備士は、特殊整備士と呼ばれる国家資格のひとつです。この資格を持っていると、車体整備や板金塗装の仕事に就く際に有利になります。
自動車車体整備士と自動車整備士の違い
自動車整備士と自動車車体整備士は資格名も似ていますし、業務内容の違いがわからない、という方もいらっしゃるかもしれません。ここでは自動車車体整備士と自動車整備士の違いについて解説します。
資格が違う
自動車整備士の国家資格は次の4つに区分されています。
自動車車体整備士はこのうち「特殊整備士」にあたります。特殊整備士とは、いわば自動車整備士資格のオプション的な立ち位置にあり、専門分野の整備に関する国家資格になります。特殊整備士には、自動車車体整備士と自動車電気装置整備士、自動車タイヤ整備士の3つがあります。
自動車整備士と呼ばれるのは「1級自動車整備士」「2級自動車整備士」「3級自動車整備士」の技能検定合格者です。
自動車車体整備士を含めて特殊整備士の資格は、1級、2級、3級の自動車整備士資格と組み合わせて初めてメリットを発揮する資格です。自動車整備士の資格を取得し、その後で特殊整備士の資格を取得するのが一般的な流れとなっています。
業務内容が違う
自動車車体整備士と自動車整備士では、担当する業務も異なります。
- ■自動車車体整備士
- 車体やフレーム、外装などを専門的に整備する
- ■自動車整備士
- 自動車整備士は主に自動車のエンジンや駆動、制動に関する機構を整備する
自動車車体整備士は、事故でゆがんだ車体や外装パーツを、調整ツールなどを用いて緻密に計測しながら元通りに修復するという高度な技術と知識を有しています。車体が歪んでいては安全な走行や制動の性能は得られません。
今後、自動運転や自動ブレーキなどの安全装置を作動させるセンサーやカメラを正しく作動させるためにも、車体整備士の業務は重要になっていきます。
働く場所が違う
自動車車体整備士と自動車整備士は、働く場所が少し異なります。
- ■車体整備士の主な勤務先
- 自動車整備工場、板金塗装工場 など
- ■自動車整備士の主な勤務先
- 自動車整備工場、ディーラ―、タクシーやバス会社 など
自動車車体整備士は、一般的な自動車整備工場に加えて、ボディや車体の専門的な修復を行う板金塗装工場などでその技術が活かされます。
自動車車体整備士の試験|試験内容、合格率、難易度
自動車車体整備士の試験内容
ここでは自動車車体整備士資格の取得方法について解説します。
自動車車体整備士の資格を取得するには、国家試験を受け、合格する必要があります。
国家試験には、国(国土交通省)が実施する技能検定試験と、一般社団法人日本自動車整備振興会連合会(日整連)が実施する登録試験があります。
国土交通大臣の登録を受けた機関である日整連の登録試験に合格することで、国の技能検定試験が免除されます。
注意点としては、同じ特殊整備士の資格である自動車電気装置整備士と違い、国が行う技能検定試験は実技試験のみです。学科試験については、日整連の登録試験を受験することになります。受験をお考えの方は気を付けてくださいね。
登録試験に合格すると、技能検定試験が2年間免除されます。その間に、各都道府県の自動車整備振興会で免除申請(全面申請)の手続きが必要ですので注意してください。
日整連が実施する自動車車体整備士登録試験の詳細は以下の通りです。
試験日 | 年2回 |
---|---|
試験内容 |
【学科試験】
|
【実技試験】 点検、分解、組立、修理、工具機械の取り扱いなど |
|
受験資格 |
実務経験(学歴により1年以上~2年以上)
※実務経験証明書が必要 |
出題数 | 【学科試験】40問 |
【実技試験】4問 | |
合格基準 |
【学科試験】 |
【実技試験】 |
|
受験手数料 | 【学科】7,200円(1級は9,300円) 【実技】14,000円 |
合格率 | 69~97% |
自動車車体整備士の登録試験は、年に2回行われます。
- 第1回は、学科試験が10月、実技試験が1月
- 第2回は、学科試験が3月、実技試験が8月
国が実施する技能検定試験は、自動車車体整備士については先述のとおり実技試験のみが行われます。試験は12月頃に実施されます。
試験資格は実務経験が必要です。実務経験の年数は、学歴やお持ちの資格によって異なります。下記の記事内にある「特殊整備士」の項目でご確認ください。
「受験資格について」(国土交通省ホームページ)
自動車車体整備士試験の合格率
続いて、自動車車体整備士の登録試験(学科試験)の受験者数、合格率について見ていきましょう。
平成23年以降の申請者数、受験者数、合格者数、合格率について一覧表にまとめました。
年度 | 申請者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率(%) |
---|---|---|---|---|
平成23年度第1回 | 226 | 222 | 171 | 77.0 |
平成23年度第2回 | 732 | 719 | 651 | 90.5 |
平成24年度第1回 | 153 | 149 | 103 | 69.1 |
平成24年度第2回 | 694 | 684 | 619 | 90.5 |
平成25年度第1回 | 154 | 147 | 112 | 76.2 |
平成25年度第2回 | 665 | 652 | 601 | 92.2 |
平成26年度第1回 | 125 | 121 | 96 | 79.3 |
平成26年度第2回 | 722 | 716 | 673 | 94.0 |
平成27年度第1回 | 209 | 206 | 164 | 79.6 |
平成27年度第2回 | 706 | 699 | 652 | 93.3 |
平成28年度第1回 | 122 | 120 | 87 | 72.5 |
平成28年度第2回 | 661 | 649 | 600 | 92.4 |
平成29年度第1回 | 117 | 115 | 86 | 74.8 |
平成29年度第2回 | 765 | 758 | 735 | 97.0 |
平成30年度第1回 | 177 | 172 | 130 | 75.6 |
平成30年度第2回 | 740 | 730 | 701 | 96.0 |
令和元年度第1回 | 206 | 202 | 177 | 87.6 |
令和元年度第2回 | 728 | 724 | 695 | 96.0 |
令和2年度第1回 | 81 | 81 | 72 | 88.9 |
令和2年度第2回 | 796 | 790 | 767 | 97.1 |
令和3年度第1回 | 182 | 179 | 154 | 86.0 |
令和3年度第2回 | 672 | 664 | 637 | 95.9 |
令和4年度第1回 | 232 | 226 | 189 | 83.6 |
令和4年度第2回 | 765 | 755 | 701 | 92.8 |
過去のデータを見ると、受験者数は安定しているようです。
合格率については年々上昇している傾向があり、令和になってからは平均で約91%の合格率となっています。
2020(令和2)年4月より、自動車特定整備事業がスタートしました。分解整備に電子制御装置整備を加えた特定整備で認証工場の認定を受ける際の要件に、車体整備士が加わりました。さらに、自動車整備主任者の資格要件にも車体整備士が加わっています。
自動車車体整備士の資格がより重要になったことで、今後は受験者数、検定合格者も増加していくかもしれません。
自動車車体整備士試験の勉強方法、難易度
自動車車体整備士国家試験の勉強は、過去問を解く方法があります。
過去問題は日本自動車整備振興会連合会のホームページで公開されていますので、そちらをダウンロードして勉強するといいでしょう。
難易度については、前述したように近年は90%前後の合格率となっています。「勉強しなければ合格しないが、勉強をすれば合格は難しくない」といった傾向があるようなので、しっかり勉強をして試験に臨めば合格は難しくないのではないでしょうか。
上記の過去問題、そして練習問題集も出版されていますので、いろいろなテキストに目を通し、資格取得にチャレンジするのがいいでしょう。
自動車車体整備士の講習|実技試験の免除について
自動車整備技術講習を受け、技能試験を免除する方法があります。
自動車車体整備士の講習は以下のような内容になります。
本記事では、一例として東京都の場合を取り上げます。
講習時間 | 114時間 |
---|---|
講習回数 | 全19回 |
受講コース | 日曜日の日中 |
受講資格 (必要な実務経験年数) |
一般(下記の学歴などに該当しない場合)…2年 |
大学、高専の機械科等卒…1.6年 | |
一種養成施設、認定大学…1年 | |
講習料 | (会員)78,500円 (非会員)146,000円 ※テキスト代、保険料、税金等を含む金額 |
実施する各都道府県の自動車整備振興会によって内容が異なる場合がありますので、詳しくは受講される自動車整備振興会にお問い合わせくださいね。
この講習を受けて修了すると、講習終了日より2年間、技能検定が免除されます。
こちらも期間中に免除の申請が必要ですのでご注意ください。
自動車車体整備士のメリット
自動車車体整備士の資格取得には次のようなメリットがあります。
将来性がある資格
自動車車体整備士は将来性がある資格と言って差し支えないでしょう。
自動車のメカニズムは日々進化しています。自動運転化やADAS(先進運転支援システム)などの電子制御装置にばかり目が行きがちですが、低燃費を実現する軽量化や事故時の衝撃吸収構造、耐久性を向上させたボディや塗装においても、技術の進歩には目を見張るものがあります。
車体整備士は自動車を安全かつ長期的な使用ができるように、車体のメンテナンスを行うことができる専門家です。自動車の車体やボディが高度化、精密化していく中で、その手腕を発揮できる機会はますます増えていくと推測できます。
転職で有利になることも
自動車車体整備士の資格を所有していることで、転職で有利になることもメリットとして挙げられます。
整備工場や板金塗装工場はもとより、ディーラーも整備や修理を重視するビジネスモデルになっています。車体整備士の資格を持っていることで、より専門的で高度な修理修復の業務を担当できることがアピールできます。
自動車の車体の整備・修理は、他の部品と違って「交換」することができない・容易でない場合がほとんど。だからこそ、技術力と知識を駆使して、歪みやひずみを測定して修復していきます。ボディの修復においても同様です。
修理を主体とする事業所であれば、車体整備のスペシャリストである自動車車体整備士の資格保持者はぜひ迎え入れたいと考えるのではないでしょうか。
まとめ
自動車車体整備士は今後、ますます重要になる資格だということがお分かりいただけたでしょうか。
コンピューター診断機や時には手の感覚も使い、正確で緻密な作業が要求される高度な業務を担当するのが自動車車体整備士です。細かい作業が得意な方や、自動車の安全性能を極めたいという方には非常に向いている資格ではないでしょうか。
働きながら受験するという方が多い資格だと思いますので、勉強や講習は大変だと思います。しかし、合格した暁には、転職が有利になったりなどメリットが多い資格です。
興味のある方はぜひチャレンジしてみてください!