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中古車査定士とは、車の買い取りや下取りの際に適正価格を判断できる民間資格です。本記事では、中古車査定士の資格内容、試験、合格率、勉強方法、取得のメリットなどについてわかりやすく解説します。
中古車査定士とは
中古車査定士は、車の買い取り、下取り査定時に価格を判定するための資格です。資格の正式名称は「中古自動車検査士」です。
※本記事では、「中古車査定士」の名称を使用して解説します。
中古車査定士は、車の走行距離、使用年数、事故歴、傷など車の状態を正確に捉えて、基準に沿って適正な買い取り価格を判断します。
中古車の登録台数は新車の登録台数よりも1.5倍ほど多く、多くの方が中古車を必要としていることが分かります。中古車査定士は中古車の品質を見極め、正しい価値を与える専門家として、近年、注目されている資格となっています。
中古車査定士の資格について|資格の種類、登録者数
中古車査定士は国家資格ではありません。
一般財団法人日本自動車査定協会(JAAI)が運営管理する民間資格となります。
中古車査定士の資格は、査定方法や考え方がバラついて中古車市場の秩序が乱れることがないよう、同協会が中古自動車査定制度を設け、適正査定を浸透させることを目指しています。
中古車査定士は、消費者にとっては資産を評価し、販売店にとっては仕入れ価格を評価する重要な役割を担っています。
中古車査定士資格の種類
中古車査定士の種類は「小型車査定士」と「大型車査定士」の2つがあります。
- ■小型車査定士
- 「乗用車、商用車及び最大積載量4t未満の貨物車」の査定が可能
- ■大型車査定士
- 「上記以外の大型貨物車、バスなど」の査定が可能
注意点としては、運転免許証とは違い「大型車査定士資格があっても、小型車の査定はできない」ということです。小型車の査定には、小型車査定士の資格が必要です。
中古車査定士の登録者数
現在、日本自動車査定協会に登録されている中古車査定士は約13万5,000人います。
ちなみに自動車検査員の数が約9.8万人(令和4年度)ですので、それよりも多い数の中古車査定士が活躍しているということになります。
- 登録された査定士数の推移
出典:一般財団法人日本自動車査定協会『登録査定士の推移』
中古車査定士の試験|試験内容、費用、合格率、勉強方法
中古車査定士の資格を取得するには、自動車査定協会が実施する技能検定試験を受験し、合格する必要があります。
この章では、中古車査定士の技能検定試験について詳しく解説します。
中古車査定士を目指す方はぜひご確認ください。
中古車査定士の受験資格
中古車査定士の技能検定試験の受験資格はこちらです。
それぞれ詳しく解説しますね。
運転免許証について
受験資格のうち、運転免許については小型車査定士と大型車査定士では必要な運転免許が異なりますので注意してください。
小型車査定士 |
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大型車査定士 |
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実務経験について
中古車査定士の受験資格である実務経験については、販売は古物商許可を得ている会社、整備は認証工場での経験が必要です。どちらも、事業主による経歴証明書が必要となりますので、受験前に用意するようにしましょう。
なお、自動車整備士資格をお持ちの場合、合格証明書か整備士技能手帳の写しが必要です。
研修について
研修は3日間にわたって開催されます。来場型のものと、インターネットで講習が受けられるeラーニングもあります。この研修を修了することで、技能試験を受験することができます。
中古車査定士の試験内容
続いて、中古車査定士の技能検定試験の内容について解説します。
一般財団法人日本自動車査定協会が公開している試験内容はこちらになります。
試験日 |
年2回(6月・12月) [6月]小型車査定士/大型車査定士 [12月]小型車査定士のみ |
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試験内容 |
【学科試験】
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【実技試験(ペーパーテスト)】
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試験会場 | 各都道府県の日本自動車査定協会支所ごとに設定 |
中古車査定士の受験費用
受験費用 (受験料、3日間の研修料、教材等費用を含む金額) |
小型車査定士 | 18,150円(税込)+諸費用別 |
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大型車査定士 | 18,975円(税込)+諸費用別 |
中古車査定士の受験費用は、小型車査定士が1万8,150円、大型車査定士が1万8,975円(いずれも税別、諸費用別)となっています。
こちらは受験料と3日間の研修料、教材費を含む金額です。
次の場合、受講費用が変更になることがあります。
該当する方は、最寄りの協会支所にお問い合わせください。
中古車査定士試験の合格率、難易度
続いて、中古車査定士の技能検定試験の合格率を見ていきましょう。
[2022年度]中古車査定士の技能検定結果
小型車査定士 | 大型車査定士 | |
---|---|---|
受験者数 | 11,690 | 145 |
合格者数 | 8,794 | 141 |
合格率 | 75.2% | 97.2% |
出典:一般財団法人 日本自動車査定協会『2022(令和4)年度 事業報告書』
中古車査定士の技能検定試験の合格率は、小型車査定士が75.2%、大型車査定士が97.2%(いずれも2022年度最新)となっています。
難易度としては比較的易しいのではないでしょうか。しっかり勉強して試験に臨んで合格を目指してください。
中古車査定士の勉強方法
中古車査定士の勉強方法は、「研修で勉強する」のが一番のようです。
なお、中古車査定士の技能試験の過去問題は公開されていません。試験後に問題用紙の持ち帰りも禁止となっているので、過去問題に関する情報はないものと思ってください。
試験問題は3日間の研修の内容から出題されるようなので、しっかり受講することが合格への近道となるようです。
また、日々の業務から得た知識も大いに役立つことでしょう。
中古車査定士の登録について
技能検定試験に合格しても、すぐに中古車査定士として業務に就けるというわけではありません。
中古車査定士として業務を行うには、一般財団法人日本自動車査定協会が実施する技能検定試験に合格した後に、同協会に登録されることが必要です。
登録には次の条件があります。
『中古自動車査定制度運営規定第14条』より
年齢について、以前は「20歳以上」でしたが、2022年に「18歳以上」に制度改定されています。
登録申請についての詳細は下記のページをご覧ください。
『査定士証の交付手続きについて』(一般財団法人日本自動車査定協会 東京支所のページ)
中古車査定士資格の有効期限について
中古車査定士は、小型車査定士、大型車査定士とも3年間の有効期限が設けられています。
中古車査定士の資格を更新するためには、技能向上研修会を受講しなければなりません。
技能向上研修会についてはこちらをご覧ください。
開催時期 | 毎年7月~8月 |
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受講費用 | 3,456円(税込) |
受講条件 | 査定業務を行う店舗に所属していること |
なお、査定士技能試験に合格したという事実については、期限はなく終身有効です。しかし、合格した際に授与される合格証書の再発行はできないので、大切に保管しておきましょう。
中古車査定士になるメリット|将来性、資格手当、転職
資格の将来性
自動車の長期使用化や長寿命化、経済面の有利性などで数多くの中古車が市場に出回っています。年間の登録台数も新車を上回っています。
協会が査定する中古車の台数も年間3万台以上あり、新型コロナでの落ち込みから回復した近年からはまた伸びるとも言われています。
- 査定台数の推移
出典:一般財団法人日本自動車査定協会『査定台数の推移』
今後、中古車査定士の活躍できる場面はさらに増えていくのではないでしょうか。
給与アップに繋がることも
中古車査定士の資格は、数千円~1万円程度の資格手当がつくこともあります。
また、資格取得の援助をしている会社もあるようです。
手当は会社によって有無、金額が異なりますので、確認してみることをお勧めします。
転職で有利になる
中古車査定士の資格を取得していることで、転職で有利になることが考えられます。
中古車販売店はもちろんとして、ディーラー、整備工場など中古車の取り扱いをしている事業所で活かせる資格です。
以前資格をとって、中古車販売店から離れているうちに資格が失行してしまった…という方もどうか安心してください。
中古車査定士の資格は、査定業務から離れて失行しても手続きをすれば「復活登録」が可能です。
まとめ
中古車査定士は、中古車の品質と価格を適正化するための重要な資格です。
ますます中古車の需要が高まるであろう今後、中古車査定士の必要性も高まっていくと考えられます。
ディーラーや整備工場でも、中古車販売は売上確保の軸になっていくという見方もあります。整備士ならではの知見・知識を活かした中古車査定士として活躍することも可能でしょう。
取得するメリットも多い資格なので、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。