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整備管理者は業務用車両の安全な運行のために、運転者に点検を実施させたり、駐車場の管理をする重要な職種です。ここでは、整備管理者の業務内容や役割、必要な資格、研修についてわかりやすく解説していきます。
整備管理者の業務内容、役割
整備管理者とは
整備管理者とは、事業に使う自動車の点検、整備、車庫の管理などをする職種です。バス、大型トラック、タクシーなどを一定台数以上使用する場合、自動車の使用者は整備管理者を選任しなければなりません。
整備管理者本人が車両の整備をする必要はありません。車両の運転者による日常点検の実施を管理して運行の可否を判断することが求められます。
整備管理者の業務内容
整備管理者の仕事(法定業務)は次の通りです。
- 車両法で規定された日常点検整備の実施方法を定める
- 日常点検の実施結果に基づいて、車両の運行の可否を決定する
- 車両法に定められた定期点検整備を実施する
- 日常点検、定期点検以外にも必要な点検を随時実施する
- 点検の結果、必要な整備を実施する
- 定期点検および⑤の整備の実施計画を定める
- 点検整備記録簿、その他の点検、整備に関する記録簿を管理する
- 自動車の車庫を管理する
- 上記の①から⑧の事項を処理するために、運転者や整備員などを指導、監督する
整備管理者に求められる能力としては次のようなものがあります。
事業に使う車両は台数も多いため、安全な運行をするためにはしっかり点検・整備を管理しなければなりません。そのために、整備管理者は重要な役割を担っていることがわかっていただけたのではないでしょうか。
整備管理規程の策定
整備管理者は整備管理規定を策定する必要があります。その目的は、整備管理者の業務内容と地位などを明らかにして、運転者に車両の点検を実施させる車両管理体制を確立させるためです。
整備管理規定については、自社で作成することもできますが、国土交通省などで配布しているひな形を活用しても問題ありません。
例:『整備管理規程(例)』(国土交通省ホームページ)
整備管理者の必要人数
整備管理者の必要人数は、1営業所につき1人いれば法的には問題ありません。
整備管理者が必要になる自動車の台数は次の通りです。
事業の種類 | 自動車の種類 | 選任が必要となる台数 (使用の本拠ごと) |
---|---|---|
事業用 (貨物軽自動車 運送事業用自動 車を除く) |
バス (乗車定員11人以上の自動車) |
1台以上 |
トラック、タクシー (乗車定員10人以下の自動車) |
5台以上 | |
自家用 | バス (乗車定員11人以上の自動車) |
乗車定員30人以上の自動車の場合は1台以上 |
乗車定員11人以上29人以下の自動車の場合は2台以上 | ||
大型トラック等 (車両総重量8トン以上) |
5台以上 | |
レンタカー | バス (乗車定員11人以上の自動車) |
1台以上 |
大型トラック等 (車両総重量8トン以上) |
5台以上 | |
その他の自動車 | 10台以上 | |
貨物軽自動車 運送事業用 自動車 |
軽自動車又は小型二輪自動車 | 10台以上 |
出典:『整備管理者制度の概要』(国土交通省)
なお、整備管理者の業務を外部へ委託することは禁止となっています(一定の条件を満たすグループ企業内においては外部委託が認められています)。
整備管理者になるための資格要件
整備管理者になるには営業所の選任が必要ですが、整備管理者に選任されるには一定の基準を満たしている必要があります。
選任される資格要件は以下の通りです。
- 整備管理者の資格要件
- 1整備の管理を行おうとする自動車と同種類の自動車の点検もしくは整備又は整備の管理に関して2年以上の実務の経験を有し、地方運輸局長が行う整備管理者選任前研修を修了した者
- 2一級、二級または三級の自動車整備士技能検定に合格した者であること
資格要件①は、自動車整備士の資格を持っていない方、資格要件②は自動車整備士の資格をお持ちの方となります。
それぞれ詳しく解説していきます。
自動車整備士の資格がない方の場合
資格要件①の内容を詳しく見ていきましょう。まず「整備の管理を行おうとする自動車と同種類の自動車」とは次の2種類のことを指します。
- 二輪自動車以外
- 二輪自動車
つまり、二輪自動車の整備経験だけでは、トラックやタクシー等の車両について整備管理者になることはできません。
次に、「点検又は整備に関する実務経験」とは、以下のものをいいます。
- 整備工場、特定給油所等における整備要員として点検・整備業務を行った経験(工員として実際に手を下して作業を行った経験の他に技術上の指導監督的な業務の経験を含む)
- 自動車運送事業者の整備実施担当者として点検・整備業務を行った経験
続いて、「整備の管理に関する実務経験」とは、以下のものをいいます。
- 整備管理者の経験
- 整備管理者の補助者(代務者)として車両管理業務を行った経験
- 整備責任者として車両管理業務を行った経験
なお、実務経験を証明するためには、在籍していた会社に依頼して実務経験証明書をつくってもらう必要があるので注意しましょう。
整備管理者選任前研修について
資格要件①の「地方運輸局長が行う研修」とは、整備管理者選任前研修のことを指します。
整備管理者選任前研修は、整備管理者として必要な点検、整備を管理する能力、運転者に対して点検実施を促す指導力、道路運送車両法などの法令の基礎知識などを習得する研修です。運輸支局毎に、年間4回実施されます。受講は無料です(別途、教材費がかかることもあります)。
研修が修了すると、整備管理者選任前研修修了証明書が発行されます。
選任の届出をする際に、この研修を修了している必要があります。
なお、自動車整備士の資格を持っている方はこの研修を受講する必要はありません。
研修の内容については、国土交通省のサイトに資料がありますので参考までにお知らせします。
例:『整備管理者選任前研修 研修資料』(国土交通省ホームページ)
自動車整備士の資格をお持ちの方の場合
整備士の資格がない方の場合は、要件①のとおり、実務経験や整備管理者選任前研修の受講が必要になりますが、自動車整備士の国家資格があれば整備管理者としての実務経験は不要です。
自動車整備士は1~3級までいずれかの資格があれば整備管理者として選任が可能ですが、一部含まれていない資格があるので注意が必要です。
具体的には次の整備士資格を所有する方は選任可能です。
一級整備士 | 一級小型自動車整備士 一級大型自動車整備士 一級二輪自動車整備士 |
---|---|
二級整備士 | 二級ガソリン自動車整備士 二級ジーゼル自動車整備士 二級自動車シャシ整備士 二級二輪自動車整備士 |
三級整備士 | 三級自動車シャシ整備士 三級自動車ガソリン・エンジン整備士 三級自動車ジーゼル・エンジン整備士 三級二輪自動車整備士 |
自動車タイヤ整備士、自動車電気装置整備士および、旧検定規則に定める自動車ジーゼル機器整備士三級、自動車伝送整備士三級などは資格要件に適用されません。
整備管理者の届出について
事業用車両の使用者は、選任から15日以内(選任、変更届の場合)に運輸支局を経由して所轄の地方運輸局長に届出を行う必要があります。届出を怠った場合や虚偽の報告をした場合、届出義務者である車両の使用者が厳しく処罰されます。
届出には届出書にくわえて次の書面が必要になります。
- 資格要件のいずれに該当するかを証明する書面
- 道路運送車両法第53条に基づく解任命令により解任され、2年を経過しない者でないことを信じさせるに足る書面
- 整備管理規程の提示
詳しくは、各運輸支局の整備部門にお問い合わせください。
整備管理者補助者について
整備管理者は原則として自ら業務を執行します。ただし、自ら業務を行うことができない場合に、あらかじめ選任した補助者によって業務を執り行うことが可能です。
整備管理補助者ができる業務は次の3つです。
整備管理補助者の基準、条件
整備管理補助者が業務を執り行うためには、下記①の基準を満たし、なおかつ②から⑥の条件を満たすことを整備管理規定によって規定されていなければなりません。
- 整備管理者の資格要件を満たしている者、または整備管理者が研修等によって十分な教育を行った者から選任する
- 補助者の氏名等が明確であること
- 補助する業務の範囲が明確である
- 整備管理者が、補助者に対して下表の研修等の教育を行う
- 整備管理者が、業務の執行に必要な情報を補助者にあらかじめ伝達しておく
- 整備管理者が、業務の執行結果について、補助者から報告を受け、また必要に応じて結果を記録・保存する
整備管理者が行う研修等は以下の時期と内容で行います。
教育をしなければならないとき | 教育の内容 |
---|---|
(1)補助者を選任するとき |
|
(2)整備管理者選任後研修を受講したとき | 整備管理者選任後研修の内容(他の営業所において整備管理者として選任されている者に対しては実施しなくてもよい) |
(3)整備管理規程を改正したとき | 改正後の整備管理規程の内容 |
(4)行政から情報提供を受けたとき、その他必要なとき |
|
出典:『整備管理者選任前研修研修資料』(国土交通省)
整備管理者選任後研修について
整備管理者選任後研修とは、選任された整備管理者が2年度に1回受講する研修です。
整備管理者が自動車技術の進歩や保安基準、法定点検項目の改正などを周知し、整備管理者としての管理能力向上と点検・整備に関する知識習得のためを目的として行われます。受講は無料です(別途、教材費がかかることもあります)。
- 整備管理者として新たに選任した者
- 最後に当該研修を受けた日の属する年度の翌年度の末日を経過した者
整備管理者で、上記に該当する場合はこの研修を受講することが義務づけられています。
名称が似ている「整備管理者選任前研修」とは異なる研修なので注意してくださいね。
まとめ
整備管理者は、事業用の自動車の運行の可否を決定する重要な役割です。
整備管理者本人が自動車の整備をする必要はなく、整備や点検の実施を管理することが職務です。仕事で使う自動車の安全性に対して責任をもって判断できる能力が必要です。
整備士の資格をお持ちでない方でも、必要な条件を満たせば整備管理者としての実務を行うことができますし、もしお勤めの会社から選任されても「自動車に詳しくない自分にできるだろうか」と不安になる必要はありません。