更新日
自動車の整備工場で活躍する自動車整備士。自動車整備士として働くには、どんな資格を取ればいいのでしょうか。ここでは、自動車整備士の資格の種類と資格を取る方法、資格の難易度について解説します。
自動車整備士は国家資格を持っているのが基本
定期点検や不具合箇所の修理・部品交換など、自動車のさまざまな整備を担う自動車整備士。エンジンやサスペンションの分解など、複雑な整備をするには自動車整備士の国家資格が必要なため、自動車整備士のほとんどが国家資格を持っています。無資格だと就職できる整備工場も限られるので、自動車整備士を目指すなら国家資格を取るのが基本です。
自動車整備士の資格の種類
自動車整備士の主な資格は、3級・2級・1級の3種類。厳密にはそれぞれの級のなかでさらに細かな資格がありますが、どの資格を持っていても「○級自動車整備士」とまとめて呼ばれるのが一般的です。
3級自動車整備士の資格の種類
- 3級自動車整備士
3級自動車整備士は、中学や高校を卒業後すぐに整備工場で働く方や、独学で自動車整備士を目指す方がはじめに取る資格。3級自動車ガソリン・エンジン整備士、3級自動車ジーゼル・エンジン整備士、3級自動車シャシ整備士、3級二輪自動車整備士の4種類があります。
3級自動車整備士が担当できるのはタイヤ交換やオイル交換など基礎的な業務がメイン。自動車整備士として活躍するには、3級自動車整備士の資格を取った後に2級自動車整備士の取得を目指すのがおすすめです。
2級自動車整備士の資格の種類
- 2級自動車整備士
2級自動車整備士は、自動車整備士の専門学校に通う方や3級自動車整備士の資格を持っている方が目指す資格。1~3級のなかで最も取得者数が多く、全国で働く自動車整備士のうち8割以上が2級自動車整備士の資格を持っています。
資格の種類は、2級ガソリン自動車整備士、2級ジーゼル自動車整備士、2級自動車シャシ整備士、2級二輪自動車整備士の4つです。2級自動車整備士の資格があれば、ほとんどの整備業務を担当できるようになります。
1級自動車整備士の資格の種類
- 1級自動車整備士
1級自動車整備士は、自動車整備士の資格のなかで最もレベルが高い資格です。資格の種類は1級小型自動車整備士、1級大型自動車整備士、1級二輪自動車整備士と3つあるものの、1級大型自動車整備士と1級二輪自動車整備士の試験はこれまでに行われたことがないため、資格を持っている人はいません。このため、1級自動車整備士と言えば1級小型自動車整備士を指すのが一般的です。自動車整備士のなかで、1級自動車整備士の資格を持っている人は3%ほどとなっています。
自動車整備士の受験資格
自動車整備士の資格試験を受けるには、受験資格を満たす必要があります。自動車整備士の専門学校に通った場合と、通わなかった場合に分けて説明します。
自動車整備士の専門学校に通う場合
自動車整備士のなかで最も多いのが、高校卒業後に自動車整備士の専門学校に通うパターン。専門学校には2級自動車整備士を目指すコースや1級自動車整備士を目指すコースなどがあり、専門学校に通わなかった場合と比べて短期間で受験できたり、実技試験を免除できたりといったメリットがあります。
- 自動車整備専門学校に通う場合
自動車整備士の専門学校に通わない場合
自動車整備士の専門学校に通わなかった場合は、3級自動車整備士から順番に取得していくのが基本です。3級自動車整備士の資格を取った後、一定期間以上の実務経験を積めば2級自動車整備士、1級自動車整備士と上位の資格を受験できます。
高校卒業後大学に通った場合は、進学した学科が機械科であれば6カ月以上の実務経験、それ以外の学科であれば1年以上の実務経験を積めば3級自動車整備士を受験できます。
- 自動車整備専門学校に通わない場合
自動車整備士の資格試験の流れ
自動車整備士になるには、日本自動車整備振興会が実施する「自動車整備技能登録試験(登録試験)」を受験するのが一般的。登録試験に合格した後、2年以内に全免申請※をすれば自動車整備士の国家資格を取得できます。
なお、全免申請に必要な書類は受験した資格や卒業した学校などによって変わるため、都道府県の自動車整備振興会に問い合わせてください。
※全免申請…自動車整備士技能検定試験(検定試験)の免除申請のこと。自動車整備士の試験には日本自動車整備振興会が実施する「登録試験」と、国が実施する「検定試験」がある。自動車整備士の資格は国家資格のため国が実施する試験に合格する必要があるが、現在の検定試験は試験を実施する資格や地域が限定的なため、登録試験に合格して検定試験の免除申請をするのが一般的になっている。
- 1.都道府県の自動車整備振興会で申請する
-
- ■申請時に必要なもの
-
- 2.自動車整備技能登録試験を受験する
-
- ■学科試験
- 2級・3級は筆記試験、1級は筆記試験と口述試験
- ■実技試験
- 資格によっては、実技試験が行われていない場合もある。一種養成施設※の専門学校や高校・大学を卒業したり、自動車整備振興会技術講習を受けたりして免除するのが一般的。
- 3.都道府県の自動車整備振興会で手続き(全免申請)
-
- ■申請時に必要なもの
-
(例)神奈川県自動車整備振興会
4.自動車整備士の合格証明書が届く
※一種養成施設…国土交通省の認定を受けた自動車整備士の専門学校、自動車大学校、高校、職業技術専門校のこと
自動車整備士試験の難易度
2018年度の登録試験の学科試験の受験者数と合格率をまとめました。最も取得者数が多い2級ガソリン自動車整備士の受験者数は10,624人で、合格率は87.3%でした。
資格名 | 受験者数 | 合格率 | |
---|---|---|---|
3級 | 3級自動車ガソリン・エンジン整備士 | 4,229人 | 63.8% |
3級自動車ジーゼル・エンジン整備士 | 981人 | 63.2% | |
3級自動車シャシ整備士 | 2,167人 | 53.2% | |
3級二輪自動車整備士 | 256人 | 71.9% | |
2級 | 2級ガソリン自動車整備士 | 10,624人 | 87.3% |
2級ジーゼル自動車整備士 | 8,277人 | 93.4% | |
2級自動車シャシ整備士 | 268人 | 84.7% | |
2級二輪自動車整備士 | 688人 | 71.1% | |
1級 | 1級小型自動車整備士 | 3,403人 | 49.3% |
※日本自動車整備振興会連合会の資料をもとに作成
※2級二輪自動車整備士のみ第1回(10月)、ほかの資格は第2回(3月)のデータを使用
※1級小型自動車整備士は筆記試験のデータを使用
1級・2級・3級以外の資格
自動車検査員
自動車検査員とは、自動車の定期点検や車検を行うのに必要な国家資格のこと。車検も行える指定工場で働いている場合は仕事の幅が広がりますし、資格手当がつくこともあります。
自動車検査員になるには、つぎの受験資格を全て満たして自動車検査員教習の試験に合格する必要があります。
自動車検査員の受験条件
※自動車整備主任者…整備箇所が国の保安基準をクリアしているか検査する人のこと。整備工場のなかで2級自動車整備士以上の資格を持っている人が選ばれる。
特殊整備士
- 特殊整備士
特殊整備士とは、さまざまな分野に特化した国家資格のことです。種類は自動車電気装置整備士、自動車車体整備士、自動車タイヤ整備士の3つ。2級自動車整備士か1級自動車整備士の資格があれば問題なく仕事ができますが、特殊自動車整備士の資格を取れば、より専門的な知識が身に付きます。
ディーラー独自の整備士資格
ディーラー独自の整備士資格とは、ディーラーが会社の中で設定している資格のこと。国家資格ではないものの、レベルが高い資格を取れば資格手当がついたり、昇格につながったりする可能性があります。
ディーラー独自の資格例
日産自動車
車を整備する「テクニカルスタッフ」に1~5級のレベルがある。テクニカルスタッフの1級と整備に関する接客業務をする「テクニカルアドバイザー」の1級を取得した人には「マスターテクニシャン」という称号が与えられる
BMW
入社すぐの「アプレンティス」から最上位の「BMWマイスター」まで、スキルと経験に応じて5段階でレベル分けされている。BMWマイスターになると、つなぎの背中に「BMW MEISTER」という刺繍が入れられる。