オートリブ
オートリブの企業情報
オートリブ(Autoliv,Inc.)は、スウェーデンに本社を置く、世界最大の自動車安全部品メーカーです。パッシブセーフティ部門とエレクトロニクス部門の2つの事業部門を編成しており、将来的にはパッシブセーフティとの融合による自動運転の実現を目指しています。
オートリブの母体は、1953年に設立されたスウェーデンのシートベルトメーカー、Lindblads Autoservice ABです。1968年にオートリブABに社名を変更し、シートベルトやエアバッグ関連事業の展開を加速的に拡大。1997年、北米・アジア圏における大手エアバッグメーカーだったアメリカのMorton ASPと合併し、現在のオートリブが設立されました。
2010年頃までに海外における生産工場の増設やテクニカルセンターの設置、他社の買収や投資などを進め、パッシブセーフティ関連製品分野を強化しました。買収・投資した企業には、エアバッグインフレーター/イニシエーターの大手だったOEAやフランスのLivbag、デルファイ(Delphi)が展開していたヨーロッパのエアバッグ事業やステアリングホイール事業などが含まれます。
また、2000年代後半頃からタイコエレクトロニクス(Tyco Electronics)やビステオン(Visteon)の車載レーダーシステムに関する事業を買収するなど、アクティブセーフティに関する事業の拡大を推進しています。
2017年12月末の時点では、世界27ヶ国に72の生産工場、23のテクニカルセンター、19の実車衝突設備を含む80以上の施設を保有しています。全世界の従業員の総数は、約63,000人です。
2015年に事業体制は、「パッシブセーフティ部門」と「エレクトロニクス部門」の2部門編成に変更されています。エアバッグやシートベルト関連製品はパッシブセーフティ部門に、アクティブセーフティ関連製品とパッシブセーフティに関するエレクトロニクス製品についてはエレクトロニクス関連製品に再分類されました。
オートリブはアクティブセーフティ部門における具体的数値目標として、2019年までに1,120億円の売上高を掲げています。
2018年第3四半期には、エレクトロニクス事業部門を独立化させると発表しました。独立後、パッシブセーフティ事業は引き続き同社の名称のもと事業展開し、その他の事業については新会社の名称で創業する見込みです。
- 01.現在募集中の求人
- 02.売上等の推移(直近3年間)
- 03.事業戦略
- 04.部門構成・部門ごとの方針
- 05.オートリブの報道ニュース一覧
- 06.会社概要
現在募集中の求人
売上等の推移(直近3年間)
売上高推移
- ※米国SEC基準会社・国際会計基準会社は、経常利益に当たるものがないため、税前利益を経常利益とみなします。
従業員数推移
2017年における売上高は1兆1,628億5,120万円で前年比3.1%増となりました。
また、営業利益は677億9,360万円で前年比28.6%減、となりました。
部門別の売上高は、
- パッシブセーフティ部門が9,110億7,520万円で前年比2.7%増
- エレクトロニクス部門が2,600億8,640万円で前年比4.8%増
事業戦略
事業方針
オートリブは、2019年までにアクティブセーフティ関連製品の売上高を1,120億円に引き上げることを目指しています。また、2016~2019年に市場規模が年率20~30%拡大すると見込まれるため、他社との協業を進めて事業強化を図っています。
なお、主力であるパッシブセーフティ分野に関しては、タカタ製エアバッグインフレーターのリコール問題が影響し、代替需要が増加しています。オートリブはアメリカのエアバッグ工場を拡張し、米国ホンダに向けた交換用エアバッグインフレーターの供給を開始。今後も需要の増加に対応した生産能力の拡大を行う方針を示しています。
オートリブのM&Aや他社との提携に関する動向は以下のとおりです。
- 2015年8月、アナログRFやマイクロ波、ミリ波、光半導体関連製品を手がけるアメリカの企業、MACOM(M/A-COM Technology Solutions)の自動車事業のAutomotive Solution部門を約121億円で買収。自動車向けの統合型・組み込み式GPSモジュールの設計・開発・生産を担う部門。収益目標の達成度によっては、追加で最大36億円を投資する可能性を示唆。
- 2015年9月、オートリブは日本のブレーキシステムサプライヤーである日信工業と、ブレーキコントロールシステムとブレーキアプライシステムに関する事業を行う合弁会社を設立することで合意。日米中に生産拠点を設置し、グローバルに関連部品の設計・開発・生産を行う方針。
- 2017年1月、オートリブはVolvo Cars(ボルボ・カー)と自動運転およびADAS向けソフトウェアを開発する合弁会社「Zenuity」を設立することに合意。出資比率は50%ずつ、スウェーデンのヨーテボリ(Gothenburg)に本社を置き、ドイツのミュンヘンとアメリカのデトロイトにも拠点を設置。同年4月に操業を開始。2019年頃にZenuity最初のADASシステムを開発した後、自動運転向けシステムも開発する計画。
- 2017年6月、オートリブ、Volvo Cars、Zenuity、の3社はアメリカのNVIDIAと提携することを発表。2021年までにレベル4の自動運転車両を開発することが目的。オートリブ、ボルボ・カー、Zenuityが独自の先進的ソフトウェア開発の基礎として、NVIDIAのAI車載コンピューティング・プラットフォームを使用することを合意。
- 2017年7月、オートリブは自動運転用センサーの実用化に向け、LiDARセンサー企業のVelodyneとの提携に合意したと発表。提携による初のアプリケーションはRoboTaxiに搭載される予定。オートリブはVelodyneのコア3Dソフトウェア技術およびオートリブ製品に組み込まれたLiDAR用のASICを用いてLiDARセンサーの開発および検証を実施。
- 2017年9月、オートリブはスウェーデンのFotonic i Nordenを買収することで合意したと発表。Fotonic i NordenはLiDAR製品およびToF(Time of Flight)カメラの設計、開発、生産を行う企業。今回の買収によって、ToFカメラ事業部門の35名のエンジニアを含む、開発およびプロトタイピングに関する知的財産権を取得。
注力分野
オートリブはエアバッグやシートベルトなどのパッシブセーフティ関連製品に強みを持った、同製品のグローバルシェア首位のサプライヤーですが、現在はアクティブセーフティシステムに注力しており、これに関する研究開発活動などを積極的に行っています。
特にレーダーやカメラを活用した先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assistance Systems)の生産に力を入れています。
以下のような製品を生産しており、主にBMWやメルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz)などに供給しています。
- 衝突警告システム
- ナイトビジョンシステム
- 緊急自動ブレーキ(AEB:Automatic Emergency Braking)システム
- ブラインドスポットアシスト
- ヘッドライトアシスト
- 車線逸脱防止支援(LKA:Lane Keeping Assist)システム
2017年には、第6世代のポジショニングモジュールRoadScape GNSS Moduleを発表。2015年に買収した米国M/A Technology Solution HoldingsのGPSモジュールを活用し、デジタル地図上で自車位置を正確にとらえることができます。また、長距離用レーダーと中距離レーダーの機能を結合した77GHz Multi Mode Radarも発表しました。
技術動向
2017年末時点で、オートリブは世界10ヶ国に25ヶ所の研究開発拠点を有しており、約9,000人の従業員が研究開発活動に携わっています。また、自動車安全とその他の支援技術に関して、約6,900件以上の特許を取得しています。
下記は、オートリブの研究開発活動の一例です。
・自動運転プロジェクト「Drive Me」への参加を発表
2017年に開始される世界初の大規模自動運転プロジェクト。ボルボ(VOLVO)の自動運転車100台を一般の方が日常の運転条件下で利用する試験を予定。オートリブとボルボのほか、スウェーデン交通庁、チャルマース工科大学、サイエンスパーク、ヨーテボリ市が参加。
・真空ブレーキシステム「トリチェリ・ブレーキ(Torricelli brake)」を発表
緊急ブレーキが作動したとき、車両の底に搭載された真空プレートを路面に密着させて吸引することにより、制動距離の大幅な短縮を実現した自動緊急ブレーキ(AEB:Automatic Emergency Braking)システム。舗装道路であればウェット路面・凍結路面でも制動力がほぼ変わらないのが特徴。
・フォルクスワーゲン(VW:Volkswagen)の「パサート(Passat)」にインフレーターが採用
2015年7月に発売の新型パサートの助手席用エアバッグに、オートリブ製の水素を使用したインフレーターを搭載。環境に害がなく、火薬式よりも短時間で膨張するため、大型エアバッグ向き。今後、ヨーロッパの完成車メーカーで採用が拡大する見込み。
・交通安全技術のためのテストコース「AstaZero」を開設
オートリブの出資でスウェーデンのボロースに開設。ボルボやスカニア(Scania)といった完成車メーカーをはじめとする、スウェーデンの複数の機関が参加。さまざまな交通状況を再現し、先進運転支援システムを試験することが可能。
・将来の交通システム向上のための「MobilityXlab」を開設
Ericsson(エリクソン)やVolvo Cars(ボルボ・カー)、Volvo Group(ボルボ・グループ)、ZenuityとスウェーデンのLindholmenサイエンスパークに新技術のイノベーションラボを開設。スウェーデンの自動車関連企業が一体となって、新技術の共同開発やスタートアップとの協力を推進することが目的。
・最新研究車両「Learning Intelligent Vehicle(LIV)2.0」を発表
ドライバーや同乗者の声や手の動きをセンサーで追跡し、彼らの指示や気持ちを感知・伝達する働きを持つ。ヒトとクルマの効果的なコミュニケーションを可能にするディープラーニングのアルゴリズムが中心となり、センサーが感知したドライバーの視線や姿勢、眠気などの情報と外部環境に関するデータを統合し、さらなる安全運転に役立てることが目的。
グローバル展開
2017年12月末時点で、オートリブは世界27ヶ国に72の生産工場を有しています。また、10ヶ国(スウェーデン、フランス、ドイツ、ポーランド、アメリカ、ルーマニア、日本、中国、韓国、インド)に25ヶ所の研究開発拠点を設置しています。
地域別の売上高の内訳は、ヨーロッパと米州がそれぞれ全体の3割(計約6割)を占めています。
○新興国をはじめとした海外における取り組み
- 2014年2月、中国の完成車メーカーである長城汽車から委託されているエアバッグの生産に関して、新工場を河北省に建設すると発表。生産するエアバッグは、主に長城汽車のSUV(Sport Utility Vehicle,スポーツ用多目的車)とコンパクトセダン向け。
- 2014年12月、アメリカにおけるホンダのリコール対応を支援するため、交換用エアバッグインフレーターを供給することで合意。アメリカの複数の既存工場を拡張し、生産能力を拡大。
- 2015年3月、2014年における中国での売上高増加を受け、将来的に中国国内だけでなく、ヨーロッパなどの海外市場へ販路を拡大したい考えを表明。
- 2016年4月、日本のブレーキシステムサプライヤーの日信工業と、ブレーキコントロールシステムとブレーキアプライシステム関連事業を行う合弁会社を設立手続きが完了。日本、アメリカ、中国に生産拠点を設置し、関連部品をグローバルに設計・開発・生産する方針。所属はパッシブセーフティエレクトロニクス、ADAS製品、ブレーキ制御システムを扱うエレクトロニクス部門。
- 2017年6月、アメリカのミシガン州Southfieldに工場を新設することを発表。広さ180,000平方フィートを有し、現在4工場を操業するオートリブのミシガン州の子会社によって運営。
部門構成・部門ごとの方針
2015年からは、新たに以下の2部門の事業体制に変更されています。
- パッシブセーフティ部門(主要製品分野:エアバッグシステム、インフレーター、ステアリングホイール、シートベルトシステムなど)
- エレクトロニクス部門(主要製品分野:エレクトロニクス、ブレーキコントロール、レーダーシステム、ビジョンシステム、アクティブシートベルトなど)
2018年第3四半期、エレクトロニクス部門は、新会社「Veoneer」として独立します。主な事業は、アクティブセーフティ、先進運転支援システム(ADAS)、自動運転、先進ブレーキコントロール関連のセンサーやソフトウェアなどの開発、製造です。
オートリブは2019年までに、アクティブセーフティ関連製品(エレクトロニクス部門に分類)の売上高を1,100億円とする目標を掲げています。
オートリブの報道ニュース一覧
- 2020.02.28 オートリブ、道路交通事故の撲滅に向けて「Together for Safer Roads」に参加
-
道路交通事故の撲滅に向けて2月25日、オートリブは、国際的な非政府組織「TogetherforSaferRoads(TSR)」に参加すると発表した。「Toget...[もっと見る]
- 2020.02.21 オートリブ、インドにおける交通安全を向上させるための勧告を発表
- 2020.02.07 オートリブ、Eスクーター用エアバッグの実証実験を開始
- 2019.11.19 オートリブ、乗員同士の衝突を防ぐフロントセンターエアバッグを開発
- 2019.09.23 オートリブ研究諮問委員会、新メンバー選出で学術的洞察を強化
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